軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第100話 芸術?

第二家庭菜園にやってきたドワーフは、ワイドさんというらしい。

イオさんと同じく、魔境とされる〝死の樹海〟を突っ切ってきたという。

……もしかして意外と普通に抜けられるのかな?

いや、この二人がおかしいだけかもしれない。

「実は里から追い出されてしまってな。仕方なく旅に出たのだ」

「追い出されたって……何をされたんですか?」

「大したことはしておらん。ちょっと里のアダマンタイトを私的利用しただけだ」

「……え」

アダマンタイトと言えば、ものすごく希少な金属だ。

それを勝手に使ったら怒られて当然ではないだろうか?

「武器や防具を打つのに使ったんですか?」

「そうではない。わしはこう見えて里でも有数の鍛冶の腕を持っていた。もしそれなら追放まではされなかっただろう」

「え? じゃあ、何に使ったんですか……?」

僕が問うと、ワイドさんは胸を張って告げた。

「芸術だ!」

げ、芸術……?

困惑する僕に、ワイドさんは憤慨しながら言う。

「まったく、里の連中ときたら芸術を解さぬ頭の硬い者どもばかりだ! だいたい役立つ機会の乏しい武器や防具ばかりを作って何になる!? 見る者を感動させ、心を豊かにしてくれる芸術作品を作った方がよほど価値があるだろう!」

ドワーフと言えば、とにかく鍛冶を好むというイメージがあったけれど、どうやら人それぞれのようだ。

「えっと……ちなみにどんなものを作ったんですか?」

「おおっ、興味があるのかっ!?」

僕が社交辞令気味に訊くと、ワイドさんは目を輝かせた。

どうやらリルカリリアさんも持っている魔法袋をワイドさんも所有しているようで、そこから自信満々な様子で〝作品〟を取り出した。

「見るがよい! これぞ芸術だ!」

……これが芸術?

僕は困惑した。

というのも、目の前に現れたそれは、何が何だか分からない巨大なオブジェだったからだ。

大きさは幅約二メートル、高さも約二メートルといったところ。

様々な長さの棒がごちゃごちゃと組み合わされて、鳥の巣のようなものを形作っている。

それだけならまだ「大きな鳥の巣なのかな?」となるんだけど、よく見るとすべての棒の先端に鳥の頭らしきものが掘られていた。

しかもその鳥たちは目と嘴を大きく開けて、恐怖に慄いているように見える。

端的に言って、怖いし、気持ち悪い。

とはいえ、面と向かってそんなことを言えるはずもない。

僕が必死に言葉を探しながら沈黙していると、それを感動していると見てとったのか、

「素晴らしい作品だろう! やはり分かる者には分かるのだ!」

「……は、はい、そうですね」

全然まったく分かりません。

「この至高の作品を生み出すにはアダマンタイトが必要だったのだ」

えええっ、こんなもののためにアダマンタイトを使ったの!?

ていうか、これ全部アダマンタイト!?

……そりゃ里を追い出されるよね、うん。

「わしの芸術は必ず後世にまで遺さねばならんのだ。そのためには絶対に壊れてはならず、劣化や損傷も許されない」

一体どこからそんな自信が湧いてくるのか、ワイドさんは断言する。

「なのに里の連中は、こんなもののために貴重なアダマンタイトを浪費するなど言語道断などとぬかしおるのだ!」

……里の人たちには賛同しかないです。

「だが潮時だったと言える。あのような閉鎖的な里にいたままでは、わしのせっかくの才能もこれ以上の成長を望めぬだろう」

「は、はぁ」

「うむうむ、分かってくれるか」

分かりません。

「今は次作の構想を練りつつ、材料調達に励んでいるところだ。だが、やはりなかなかアダマンタイトは見つからぬものだな……」

ワイドさんは大きく息を吐く。

本人が想像していた以上に、十分な量のアダマンタイトを発見できずに苦労しているのだという。

……里の人たちだって、たぶん簡単にはアダマンタイトを調達できないと思うけど。

そんなものを訳の分からない芸術に使われた里の人たちには同情する。

厄介者払いができて今頃は喜んでいるかもしれない。

「かくなる上は、里に忍び込んで、また貯蔵されているアダマンタイトを盗み出すしか……」

「それだけはやめてくださいよ!?」

「芸術のためならば多少のリスクなど恐れるに足らん!」

いやあなたの心配をしてるんじゃなくて、里の人たちの心配をしてるんです!

「どうせ追放された身……今度は根こそぎ持ち去ってやろう……」

ダメだ、この人、目がマジだ!

このままだと本気でやりかねない。

見ず知らずの里の人たちのために、僕は嘆息しつつも告げた。

「アダマンタイトですよね? それだったら持ってますよ」

「何!? ほ、本当か!?」

「い、痛い!?」

巨漢にいきなり肩を掴まれ、大きな顔が目の前に。

ていうか、力が強すぎる……っ!

「ジオ君!」

そのとき、僕の名を呼びながら割り込んでくる人影があった。

イオさんだ。

「なぜここに……?」

「凄い音がしたから気になって見に来たんだ!」

どうやら僕と同様、ワイドさんが結界に突進したあの轟音が聞こえていたらしい。

「そこのドワーフっ! ジオ君から離れるんだっ!」

「む? おおっ、すまぬ。つい」

ワイドさんは僕の肩を握り潰しそうになっていたことに気づいて、すぐに手を放してくれた。

「いてて……」

「お尻は大丈夫かい、ジオ君!」

「あ、はい。ちょっと痛かっただけです」

ん?

お尻?

「このドワーフっ! ぼくのジオ君に何をするっ!?」

「ちょ、ちょっと待ってください、イオさん。別に何もされてませんから」

ていうか、「ぼくの」ってどういうこと?

今にもワイドさんに襲いかかりそうなイオさんをどうにか宥めて、事情を説明した。

すると誤解が解けたようで、

「よかった。どうやらぼくの早とちりだったみたいだね」

「は、はい」

「でも……まさかの話だけれど……ジオ君は野性的な人が好みだったりしないよね?」

「はい?」

何の話をしているんだろう?