軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第34話 殿下の嫁選び。

フリッツの考えはまんまとうまくいった。

次々と立ち入り調査した家で問題を摘発し、税の追徴や、跡取りの廃嫡など…ここ半年で随分すっきりした。一番ひどいところは、お取りつぶしも出た。領民に規定以上の税を課していたところと人身売買と餓死者を出したところ。

立ち入って見ないとわからないものだなあ…。フリッツは殿下の嫁選びの効果に感心する。公爵家から準男爵家まで、結構な数の家が手をあげた。なんなら、養女を取ってまで。

…まあ…エリーアス殿下の機嫌はすこぶる悪いが。

9月半ばになってようやく、婚約者候補者が6名に絞られた。ここにきて辞退者が多かったから。ここにイリア国から王女殿下が1名参戦される。

計7名の予定。

9月半ばの週から、さっそく実技試験が始まっている。

3人目の伯爵令嬢は…伯爵令嬢なのに妙におどおどしていた。

実技試験会場の部屋の壁際でフリッツが入ってきたご令嬢に挨拶した後、視線だけその令嬢に向ける。

緊張しているのかな?と、護衛に入っているモニカちゃんが声をかけに行く。

ご令嬢はもうすでに涙目である。

「大丈夫ですよ。リラックスして臨んでくださいね」

…適齢期のご令嬢がいない伯爵家に養女に貰われてきた男爵家の娘さん。一身に期待を背負って…力が入っているのだろう。

そんなにしてまで?…まあ、欲しい地位なのだろうね、王子妃ってのは。

養親にそそのかされたか、本人が張り切ったか…。いずれにしても、そんな付け焼刃でこなしていけるほど、王子妃の地位も甘くはない。まあ、夢を見るのは勝手だが。

この方も早々に、一日目の語学でリタイアされていった。

元々、前半のご令嬢方はこうなるだろうと予想されていたので、特に問題はない。

王子妃選びに平等に機会を!なんて言いだした貴族院の面子も立てた。

エリーアス殿下に報告に上がる廊下で、並んで歩くモニカちゃんが珍しくおとなしい。

「まあまあ、モニカちゃん、後半は伯爵家以上になって来るから、ほぼクリアしていくと思うよ。お前さんが落ち込んでどうする?」

フリッツはモニカちゃんに声をかけた。このまま執務室に行ったら、この雰囲気が伝染しそうで嫌だったのもある。

「ねえ、フリッツさん、こんなことに何か意味があるんでしょうかね?」

「え?」

「え、いや…」

「…なあ、モニカちゃん?おとぎ話のシンデレラは王子様と結婚して本当に幸せになったと思うかい?」

フリッツが立ち止まって、モニカを見て話しかける。

「……え?」

「美しいだの、好きだの、愛だので結婚して…王子妃教育に押しつぶされて、王子の顔も見たくなくなるかもな。それにさ、あのシンデレラって娘は、王子のどこが良くて、どこに引かれて、何を思って嫁になりたかったんだろう?覚悟はあったのかな?…不思議な話だと思わんか?」

「…フリッツさん…」

モニカがびっくり眼で俺を見て、ようやく笑った。

「まあ、夢を見るのは勝手だが、覚悟がなければ王妃は務まらないさ。ゆくゆくはエリーアス殿下を支えていくわけだからな」

ぽんぽんっ、とモニカの頭を撫でる。

「じゃあ、せめてなじみの侍女は侍らせられないのですか?緊張もよほど緩和されませんか?」

「うーん。王妃になったら、いつ、どこで、何があるかわからない。なじみの侍女じゃないと日常生活が送れないのも困るだろう?」

「…なるほど…。じゃああの耐久レースのようなダンスは?」

「ああ。実際、他国の招待で招かれたときなんかは、次から次にダンスを誘われる仮定、かな。王妃やるのに、体力もいるしね。」

「な、なるほど!」

うんうんと頷きながら、モニカの表情が戻っていくのを眺める。この子は…問題意識も持っているし、ほんの少し説明さえすればきちんと理解する。相変わらず…面白い子だ。

…もう…エリク君のことは吹っ切れた、のかな?

執務室であまりにも普段通りなので…逆に心配だ。

モニカとにこやかに話しながら、待機している護衛係に挨拶して殿下の執務室に入る。

「…楽しそうだな…。」

「……」

機嫌の悪そうなエリーアス殿下と目が合った。

不機嫌を隠しもしないで、殿下がモニカに向かって言った。

「こうリタイア続きじゃ講師も暇だろう。モニカ、お前、一週間講義を受けて来い。」

「え?」

「栄えある王子の護衛係なんだ。最終日まで残れよ」

「あ、はい。頑張ります」

素直だなあ…モニカは。フリッツが半ば呆れて二人のやり取りを見る。

イルマさんがくすくすと笑っている。