軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 殿下の婚約者。

「また今年も来るのかな?」

ご自分のお誕生日会のスケジュールを確認していた殿下が、ぼそっと言った。

「来るでしょう。」

「あんなことがあった後なのに?」

「いや。表向きはうちの国内の問題で、フルール国は何も関係がありませんからね。それこそ、堂々と来るでしょう。」

11月になったばかりの頃、殿下とラルフさんがこそこそと話しているのをモニカは書類を綴じこみながら聞くとは無しに聞いていた。フルール国からの東部地区の幹線道路は開通させたが、検品は今まで以上に厳しくなった。

(…何が?来るのかな?)

モニカがそう思っていたら、フリッツさんが入ってきた。

「殿下~もうすぐお誕生日おめでとうございます!今年も殿下の婚約者の方から、豪華な贈り物が届きましたよ!!いやあ、懲りない人ですね?」

楽し気なフリッツさんが、目録を殿下に渡している。

「イルマ!」

と、奥の部屋にいたイルマさんを呼んだ殿下が、そのままイルマさんに目録を渡している。

「ああ…今年も来たんですね?モニカちゃん、手伝ってもらっていい?」

「え?はい」

階下の控室に行って見ると、部屋がいっぱいになるんじゃないかと思うくらいのプレゼントの箱が積まれていた。

目録をチェックしながら開けて行くらしい。お礼をしなければいけないので。

…なるほど。

「殿下の婚約者って、フルール国の方でしたのね?まだ発表になっていないだけなんですね?」

イルマさんが丁寧に箱を開ける脇で、やはり箱を開けていたモニカが聞いた。

「いや。どうかしら?押しかけ婚約者、みたいなものね。フルール国の王女殿下のイザベル様よ。殿下が12歳の時から押しかけてきてるの。今回で4回目になるわね。殿下の2つ上の方よ?」

「…はあ…押しかけて?」

「なかなか積極的な方でね。殿下も、国賓だから無下にもできないし」

「…なるほど」

開けた箱から出てくるのは…芸術の国フルールらしい、よくわからないデザインのランプ。

綺麗なカットが施された真っ赤なペアグラス。

奇抜な、幾何学模様の柄の反物…。

何に使うのかよくわからない、なにか。

意外と、楽しい。

ブリア国内ではお目に掛かれないようなものばかりだ。

木箱に入った、刺しゅう入りのハンカチも出てきた。ご自分で刺繍なさったんだろうか?

…あれ?…

なにか…引っかかるものがあった気がしたモニカは、もう一度ハンカチを見る。

”Eli”…ああ、エリーアス様の頭文字ね…。

「これが届いたということは、あと1週間もするとご本人が来るわね」

イルマさんがはがした包装紙を畳みながら深々とため息をついた。

***

「エリーアス様!」

モニカは迎賓館に着いたフルール国の王女イザベル様に挨拶に行く殿下に同行する。ラルフさんも一緒だ。

両手を差し出し、ハグを求める王女を、そっと避ける殿下。

「まだ恥ずかしいんですの?殿下と私の仲じゃないですか!」

「…いや。何の関係もない。贈り物頂戴した。ありがとうございます。ゆっくりしていってください。じゃ」

さっさと踵を返す殿下。

「もおお。ラルフぅ!」

「はいはい、イザベル様。今日はゆっくりお休みいただいて、明日、歓迎晩さん会の予定でございますので。また、その時に」

ラルフさんが王女殿下をなだめている。

ふと、王女殿下のお付きの人たちを見ると、まったくの無表情。ある意味、微笑ましい光景だったり…しないのかしら?まるで、実技試験のジャッジをする試験官のような…。モニカはそんなことを思いながら、急いで殿下の後を追った。

「フルール国と縁付くことによって、ブリア国への訳の分からない攻撃が減るんじゃないんですか?」

部屋に戻る途中、ラルフさんに聞いてみた。

「姫が嫁いで来たら平和になる?フルール国はそんな国内状況でもないんですよ。」

「……跡継ぎ問題で揉めているというのは聞いたことがありますが…王女は関係があるんですか?」

「うーん」

ラルフさんが今のフルールの状況を教えてくれた。

今の国王に子供は8人。うち、3人の姫はもう嫁いでいる。4人の息子と今日来たイザベル。一番上の王子が一番穏健派なので、この人が次期国王になれば問題なかったが…3番目の側妃の息子がやり手だった。今、フルールの王室内は血で血を洗う状況らしい。

「その3番目の王子が、うちの国を狙っていましてね?いろいろ仕掛けてくるわけなんです。手っ取り早く成果を上げて国王に認めさせたいってのもあるかもしれませんね。実際、あのワイン騒ぎでは安価なワインで荒稼ぎしたわけですし。東部で作ったアヘンもフルール国内で使っているかもしれませんね。」

「……」

「イザベル様も必死だと思いますよ。あんなふうに笑っていましたが」

「……」

フワフワした長い金髪の、青い目がぱっちりとした、可愛らしい王女。赤のきらびやかなドレスがとても似合っていた。

…王族って言うのも、大変なのねえ…。

そう思いながらモニカは半歩ほど遅れて、ラルフさんの後を歩いて行った。