軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04 お揃い

「ヘレン、今日も可愛いね」

「ありがとうございます、アレクシス殿下」

ヘレンは転生者だ。またこの世界がゲームを基にしたものであり、その知識が活用出来ると知っている。

現に攻略対象たちは今やヘレンの周りに集まっていた。

「ロッツォくんも仲良くしましょうね!」

「あ、ああ」

ロッツォは王都でも有名な大商会の息子であり、やはり攻略対象の一人だ。

順番は前後してしまったが、彼も俗にいう『逆ハーレム』メンバーの仲間入りをした。

第一王子、侯爵令息、伯爵令息と身分は異なるがそれぞれ美しい男性たちばかり。

あとは伯爵令息の婚約者であり、ライバルかつ友人枠でもある侯爵令嬢シルフィーネの兄、シルヴァンが揃えばひとまずコンプリート。

(といってもエンディングを迎えるのはまだまだ先だけどね)

それにコンプリートというのは表向きの話だ。

五人の攻略対象を攻略した後で解放される隠しキャラも居て、それは隣国の皇族となる。

逆ハーレムルートを目指している以上、彼も攻略したいとヘレンは思っていた。

(気になるのは悪役令嬢だけど……動きがない。あいつも転生者?)

断罪返しは警戒したいところだが、本当に何も動いていない様子だ。

何の干渉もしてこない。

ヘレンは何度か挑発するように笑ってやったのだが、ニコニコと笑い返してくるばかりだ。

そもそもアレクシスと連れ立って歩いていても特に気にした風もない。

婚約者であるのは変わりないというのに。

(興味ない? 元々アレクシスが好きじゃなかったとか……じゃあ、まだ攻略出来ていないヒーロー狙い?)

悪役令嬢が人知れず隣国に居る隠しキャラと交流している可能性。

それはありえるとヘレンは思った。

だから、けっして渡せないとも。

(心配したほど周りからの反応も悪くない、むしろ祝福されているのよ。この世界にはヒロイン補正がある!)

逆ハーレムルートを目指して心配だったのが周囲からの反応だが、やはりここはゲームの世界だった。

なにせ周囲の反応は祝福ばかりだったのだ。

◇◆◇

「まぁ、素敵ね。お似合いですよ」

「良かったですね、ヘレンさん。アレクシス殿下とフィリップ様とお揃いの飾り……? が、似合って……」

攻略対象たちからプレゼントを贈られて自慢してみた時のクラスメイトの反応だ。

彼女たちは何故か途中でハッとして顔を見合わせていた。

「何、どうしたの?」

「……あ、ああ。いいえ、ただ『アレクシス殿下とフィリップ様がお揃いの飾りをしている』んだなぁ、って」

「ふふ、そうなの。二人とお揃いなのよ」

どう、羨ましいでしょう。

ヘレンはそう言いたそうに自慢した。

だが、その話を聞いた彼女たちは微妙な反応をして会話は尻すぼみに終わってしまう。

きっとヒロインである自分に嫉妬しているのだろう、ヘレンはそう思うだけだった。

だがヘレンから離れた後、自慢話を聞いていた彼女たちは会話を続ける。

「ねぇ、あれって」

「やっぱりそういうことよね? アレクシス殿下とフィリップ様がお揃いの飾りを着けるために?」

「そうとしか考えられないわよね……」

フィリップは侯爵令息だ。

将来はアレクシスの側近となり、果ては宰相になるとも目されている。

幼い頃から誰よりもアレクシスの近くに居た男性である。

「……幼い頃からの想い、なのね」

「あんな風にお揃いの飾りを身に着けたくなるほどに、ね」

「ヘレンさんもお可哀想に……」

「そうね、でも同情して彼女に真実を教えたらダメよ」

「分かっているわよ、私はヘレンさんの立場になりたくないわ」

何よりヘレンは公爵令嬢であるマリアンヌに見捨てるとまで言われている。

彼女がどうなるかについて口を出すことは許されないだろう。

「ヘレンさんの周りに居る殿方、婚約者も居るわよね。シルフィーネ様は……」

「シルフィーネ様も彼らに何も言わずに見守っているそうよ。つまり、あのグループとは関わらない方がいいってことよね」

「そういうことね」

「それに見た? あの商家の……ロッツォさんでしたっけ」

「ええ、あの方がきっとマリアンヌ様がおっしゃっていた方よね。やっぱり身分なんて関係なく見た目で集まっている?」

「マリアンヌ様の話を聞いていなければ、ヘレンさんが見た目で選んでいるって思ったのでしょうけど。それだったらアレクシス殿下が許していないはずだもの」

「そうよね、あのグループで一番身分が高いのはアレクシス殿下だし、だったらあのグループに近付ける人間も殿下が選んでいるはずよ」

「じゃあ、あのロッツォさんもそういう……?」

「そうなのでしょう、きっと。『選ばれし男性の会』のメンバーね」

どんどん彼らが『そういうこと』だという真実味が増してきている。

だから彼女たちはこう思うのだ。

「「ヘレンさんもお可哀想に……」」