軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34 抗議

アレクシスが国王に抗議をしようとすると、準備をするから少し待てと言われて待たされることになった。

しばらくしてから、ある部屋へ呼ばれる。

「父上、私です。アレクシスが参りました」

「……入れ」

アレクシスが許しを得て部屋に入ると、そこには予想外の人物たちが居た。

「……セド・セイン卿? それに母上、宰相も。何故?」

部屋に居たのは国王と近衛騎士だけではなく、王妃、宰相、それから隣国からの留学生も何故か居た。

アレクシスは、セド・セインの正体がバロウ皇国のセドリック・バロウ第三皇子だと事前に聞いている。

学園では、その正体に触れないように厳命されていた。

そのような人物が何故、今ここに居るのか。

「座れ、アレクシス」

「は、はい」

国王に促され、対面の席に座るアレクシス。

セドリックは報告書のようなものに目を通していて、アレクシスの来訪には関心を向けない。

「それで? どうした、アレクシス。何の用があって私に会いたいと?」

「それは……ここでは、その」

「何だ?」

「……失礼ながら、部外者である者を前に申し上げるワケには。父上、宰相やセド・セイン卿にはご退室願いたい」

「構わん、そのまま話せ」

「いや、構わないなど……」

「気にしなくていい、アレクシス王子。俺がここに居るのは国王陛下から、たっての願いだから。それに俺に無関係の話でもないんだろう?」

「貴方に関係は……」

アレクシスはそう言い返そうとしてから口を閉じる。

確かに彼は無関係ではないだろう。

「……分かりました。父上、今日、影から私だけでなく私の……友人たちの監視をすると言われました」

「ああ、それは私の命令だな。それがどうした?」

「何故ですか」

「何が何故、だ?」

「監視など。私の護衛に付くだけならば分かりますが、監視と銘打たれた行為が必要のない人間も居ます。無闇に王家の権威を示して、罪なき民を威圧するのは良くはないかと」

「……影から、何のために監視を付けるかは聞いているな?」

「はい」

アレクシスは、そこでセドリックに視線を移す。

視線に気付いたセドリックは、報告書から顔を上げてニコリと微笑んでみせた。

ヘレンの不安の原因となっているというのに暢気な態度に少し苛立ちを覚える。

「留学生に無礼な態度を取らないか、見極めるためだと」

「分かっているじゃないか。それで? それが何だ」

「必要ありません」

「何?」

「私たちにそのようなものは必要ありません。むしろ脅すように監視に付くと言われて、私の友人が怯えております。問題を起こすというなら……マリアンヌの方ではないでしょうか」

「…………」

アレクシスが堂々とそう告げると、国王たちはアレクシスの様子をまじまじと見つめた。

じっくりと観察するような視線だ。

「な、何ですか。母上に宰相まで」

「何故、問題を起こすのがマリアンヌの方だと考えた?」

「え?」

「質問に答えよ、アレクシス」

「それは……彼女ならば、そのようなこともあり得るから」

「何故、そう思う?」

「何故って、そんなのは……彼女の態度が」

「マリアンヌの態度とは?」

「普段から……人を見下し、」

「いつ見下したの? どこで? 誰を?」

「な、何故そんなに母上まで身を乗り出して聞いてくるのですか」

「アレクシス、答えよ」

「……マリアンヌは、身分の低い者への態度が良くありません」

「そうか。では、マリアンヌとの婚約を白紙にするか?」

「え?」

「オードファラン公爵とはきちんと話し合っているの。貴方とマリアンヌは、いつでも婚約を解消出来るし、白紙に出来るわ」

「いや、それは。え? しかし……」

「どうした? マリアンヌに不満があるようだったが」

「いえ、ですが。私はただ監視など止めてほしいと言いにきただけで。婚約の話なんか」

「だが、マリアンヌをわざわざ貶めるような発言を先にし始めたのはアレクシスだろう。お前の抗議が、お前の友人のためだけならば、引き合いにマリアンヌを出して貶める必要がどこにあった?」

「いえ、それは! ただの言葉の流れと申しますか」

「もしかして、つい、なんとなく、という理由で貴方の婚約者であり、公爵令嬢であるマリアンヌを貶める発言をしたのですか、アレクシス。何も考えもせずに?」

「いえ……」

(何だ? 何故、私が問い詰められるようなことになっている? 私は、ただ……そうだ)

「私が言いたいのは、私の友人たちは留学生に害など為さないということです。彼らを疑われるのは気分が悪い。不安にも思っている。ですので、止めさせるように抗議したかっただけで……」

「……監視というのは、何もお前たちの害になるとは限らない。何か問題が起きた際に、監視対象が関わっていないと証明することにも繋がるだろう」

「それはそうですが……。何か問題が起きそうなのですか? まさか、マリアンヌが?」

「何故、そこでマリアンヌの名前が出るの?」

「……彼女も監視対象であると聞きましたから」

「そうね。でも、それは陛下がおっしゃったように何かが起きた時、マリアンヌの潔白を証明するための監視よ。むしろ、彼女を事件などに巻き込まないように守るためのものです」

「何故そのような……」

「お前は何なのだ、アレクシス」

「え?」

アレクシスは国王を見る。

国王はアレクシスに向かって、呆れたような、諦めたような、残念なものを見る目で見ていた。

どうしてかその目を意識すると、恥ずかしいと感じる。

自分が至らない、若輩者だと突きつけられている感覚。

「何だとは」

「疑問に思う点も、抗議することも、執拗に己の婚約者を貶めようとする様も。どれも信じ難い振る舞いだ。だから言っている。そんなにマリアンヌが気に入らぬなら、二人の婚約を白紙としてもいいと」

「そうね、解消か白紙にしましょう。すぐにでもオードファラン公爵にそのことを伝えるわ」

王妃がそう告げて立ち上がる。

アレクシスは慌てて王妃を押し留めた。

「待ってください! 私はそんな話はしておりません!!」

「……貴方の態度から、そう伝わってくるのよ」

「しかし、私はそんなことを言ってはおりません、母上!」

「では、アレクシス。お前はマリアンヌとの婚約の継続を望むのか?」

「は、はい、父上」

「何故?」

「何故って……」

「理由を聞かせろ。我々が二人の婚約を解消しても良いと言っている。何故それを拒む?」

「ですから! 私は今日、そのような話をしにきたのではないのです!」

「関係ない。我々がその話をしている。お前は、ただ我々の問うたことに答えよ、アレクシス」

「な、何故そんな……」

国王たちの自分へ向ける目がおかしいとアレクシスは感じる。

失望、諦念、どこか不気味なものを見るような目。

およそ愛する息子に向ける目ではない。

(何故こんな目を、まさか)

「まさか、マリアンヌが父上たちに何か言ったのですか?」

「……どうしてそう考えた?」

「さっきから何なのですか! 私がどう考えたかなどどうでもいいことでしょう! 父上も、母上も様子がおかしい! 宰相、もしやマリアンヌが父上たちに何か吹き込んだのか!?」

「…………」

「何とか言ったらどうなんだ!」

宰相もアレクシスに向かって国王たちと同じ目を向けていた。

じっくりとこちらを観察してくるような態度。

あまりにも居心地が悪い。

「だいたい、フィリップは何故、マリアンヌの従者などになっている? あいつは私の側近候補だ! 将来は宰相に就くのではなかったのか!? だと言うのに!」

「……お言葉ですが、殿下。フィリップの将来が宰相というのなら、将来は王妃になられるマリアンヌ様の下に就くことも良い経験となるでしょう。何も問題はないのでは?」

「だが、あいつが居るべきなのは私の下だ!」

「立場の差も違いもありますが、私は現宰相として王妃様のご意見や、お考えも決して無視出来ないものと考えております。故にフィリップがマリアンヌ様の下で学び、彼女の考えや為人を知ることは有意義であると考えます」

「しかし!」

「アレクシス、話を逸らすな。それでお前はマリアンヌとの婚約を解消するのか、しないのか。どちらだ、答えよ」

「ですが、私はそんな話をしにきたのでは!」

「今はその話を私がしている。国王である私と、王妃がな。故に答えよ。マリアンヌとの婚約を継続するか、取りやめるか。選択肢は二つだけだ。どちらかだと答えるだけ。これ以上の時間を我々に使わせるな」

アレクシスは唇を噛んで理不尽に堪えるような態度を取る。

その様子さえ、国王たちに失望を感じさせた。

「……継続を。マリアンヌとの婚約の継続を望みます」

アレクシスがそう答えると、国王たちから聞こえてきたのは深い溜息だった。

(何故こんな態度を! 父上の望んだ婚約を継続すると答えたのに!)

「あはは! これは確かにひどい。どうにもならないかもしれない、とは言い得て妙だな」

そこで報告書を読み終えたセドリックが顔を上げて、場違いな笑顔を見せて笑った。

「アレクシス王子、俺もエドワードも今日から貴方たちとは距離を置かせてもらうよ」

「……は?」

アレクシスは意味が分からなかった。