軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第190話 オックスフォードのサークル

申し訳ありません。

腰痛のため今回は短めです。m(_ _)m

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語学学校の初日を終え、アランの車に乗り込んだ陽斗は彼と一緒に軽い昼食を摂った後に、今度は徒歩で移動する。もちろん護衛として大山も一緒に居るし、少し離れてISEセキュリティーのボディーガードたちも周囲に居るのだが、陽斗が気にしないようにさりげなく、なので問題無い。

『オックスフォード大学のカレッジには沢山の ソサエティ(society) があるんだ。日本の”サークル”みたいなものかな? もちろん所属学生しか参加できないソサエティもあるんだけど、留学生や学生以外、観光客が参加できるところも多いんだよ』

アランはそう言って、これから行く場所を陽斗に説明する。

イギリスを代表する大学であるオックスフォードとケンブリッジは独特な"カレッジ制度”というものがあり、類似の制度のない日本人にはなかなか理解しづらい。

ごく簡単に言うと、カレッジは直訳の“単科大学”という意味ではなく、学生が所属する共同体のことだ。

それぞれのカレッジは所属する学生に生活や学習の場を提供し、独立した財務基盤を持っていて、ハリー・ポッターの映画のロケ地として有名なクライストチャーチもオックスフォード大学のカレッジのひとつだ。

形として、学生はオックスフォード大学にではなく、各カレッジに入学し、オックスフォード大学の講義を受けて学位を取る。なので、入学のための選考も各カレッジに委ねられている。

その他にもいろいろな仕組みがあるのだが、今は関係がないので省く。

そんなカレッジのサークル活動であるソサエティもそれぞれ独自のものが大半なのだが、中には他のカレッジと共同で活動しているものもある。

陽斗が語学を学ぶには、座学だけでなく実践の場が必要なのだが、陽斗が希望していた不特定多数の人と接することになるアルバイトはさすがにさせるわけにはいかない。

かといって、留学生たちやウィルソン家の人たちとばかり話していても目的を達することは難しいだろうということで、留学生でも参加できるソサエティを体験してみようということになったのだ。

一日おきに様々なソサエティに加わって、気に入ったところがあれば何度か参加すれば良いし、それ以外の日は観光したり買い物をしたり、ウィルソン家の人たちと過ごしたりするということに決まった。

『オックスフォードのソサエティは学術的な活動や環境、人権なんかのものが多いかな。日本風に言うと"意識高い系”だっけ? 真面目な学生が多いからそういう活動が盛んだね。もちろんラグビーやゴルフなんかのスポーツ系も沢山あるし、音楽やアニメとかのポップカルチャーもあるし、留学生が中心のコミュニティ系もあるよ』

『ふぁ~! 楽しそうですね』

説明を聞きながら目を輝かせる陽斗にアランは頬を緩ませる。

陽斗を迎え入れたときに話したように、ウィルソン家ではこれまでにも何人かホームステイを受け入れてきた。

だが、今回は父親のライルの昔からの知人であり大恩人の孫、それも考えられないほどの厳戒態勢の護衛付きとあって、内心は不安でいっぱいだった。

大富豪の子女、ましてや孫となれば我が強く身勝手というイメージがあり、アランの知る幾人かの上流家庭の者も傲慢で選民意識が強かった。

ところが実際に顔を合わせてみると、穏やかで素直、謙虚で真面目というステレオタイプの日本人の良いところを集めたような子だった。

しかも、平均的に幼く見える日本人であっても考えられないほどの小さな体格と童顔は小動物や仔犬を連想させて警戒心を抱かせない。

そのおかげと言うべきか、両親もアランも陽斗を見てほっと胸をなで下ろしたわけだが、だからといって安心しきるわけにはいかない。

歴史的背景もあり、イギリスはEU諸国の中でも日本との関係は深い。それだけに日本人の優秀さと共に、付き合うことの難しさと恐さをよく知っている。

世界的な日本人の評価として、勤勉さや生真面目さ、仕事への真摯な取り組み、約束を守るといったプラス面での評価と同時に、意思決定の遅さや融通の利かなさ、感情表現の希薄さといったマイナス面での評価も少なくない。

だが、日本人と付き合いの深い欧米人が最も難しいと感じるのは日本人の我慢強さと、一線を越えたときの態度の急変だ。

日本人は相手がどれほど無茶を言ったり悪い態度を取っても滅多なことでは怒ったりしない。環境が悪くても他の国の人なら簡単に逃げ出すような状況になっても日本人は打開するための努力を惜しむことなく取り組む強さがある。

しかし、それが限界をほんのわずかでも超えたとき、態度が急変するのだ。

それまで微笑みを絶やすことなく相手の話を聞いていたのに、突然一切の対話ができなくなる。

激高するわけではなく、ただすっぱりと切り捨ててしまうのだ。そして一度そうなると関係の修復は極めて難しい。

一番の問題は、その一線がどこにあるのか外国人にはほとんどわからないという部分だ。

陽斗が滞在する1ヶ月間という短い期間では、よほどのことをしでかさない限りそう言ったことにはならないだろうが、父が語った陽斗の祖父の影響力を考えれば万が一にも留学が失敗だったとみなされないようにしなければならない。

それに、とアランは興味深げに周囲をキョロキョロと見回しながら楽しそうに微笑んでいる陽斗を横目で見る。

(こんな良い子がせっかくこんな遠くまで来たんだ。存分に楽しんで、沢山のものを持ち帰ってもらいたい)

結局、大富豪だの権力者だのは関係なく、全身全霊で学ぼうとしている陽斗の姿に、アランもできる限りのことをしようと心から思うのだった。

15分ほど歩いて辿り着いたのは石造りの建物の前だ。

歴史的な風情を感じさせる壁や屋根とは裏腹に、入り口は店のようなガラス戸で内装は現代的になっている。

内部はいくつかの部屋に分かれているらしく、アランは陽斗を促して奥へ進む。

『ここだよ。日本人が来ると皆ビックリするんだけどね』

そう言ってアランが悪戯っぽく笑う。

そんな彼に首をかしげる陽斗。

陽斗はアランから一日おきにオックスフォードのソサエティを見学するとしか聞いておらず、その内容は内緒だと言われているのだ。

同時に、「楽しめるし、勉強にもなるはずだから」とも言われているのでワクワクしていたりもする。

日本人が驚くと聞いて、陽斗はいろいろ想像をしてみるが思い浮かばない様子だ。

『じゃあ開けるよ。やぁ、連れてきたよ』

ドアを開けながら陽斗の背中に手を当てて一緒に部屋に入ると、10人ほどの男女が一斉に視線を向けてきた。

『いらっしゃい、待ってたよ!』

歓迎するように立ち上がって近寄ってくる年上の人たち。だが、陽斗が驚いたのは彼らではなくその後ろ。壁に所狭しと貼られたポスターだった。

「え、え? アニメ? ここ、イギリス、だよね?」

思わず日本語で呟いてしまったのも無理はない。

海賊王を目指す少年や忍者の少年、星の入った珠を集める男の子や鬼と戦う兄妹など、日本でも有名なアニメ作品のポスターやフィギュア、DVDなどが並んでいるのを見て陽斗はポカンとしてしまう。

『驚いたかい? ここは日本のアニメを研究するソサエティグループなんだよ』

悪戯が成功して楽しそうに笑っているアランに、陽斗は何度もコクコク頷く。

『日本のアニメやマンガは世界的にも人気があるからね。それに深いテーマや社会的な諸問題に向き合った作品も多い。僕たちの研究課題として最適なんだよ』

『私たちは日本のアニメを見て育ったの。いつかは原文で楽しみたいけれどね』

『人間の感情の機微や行動原理の表現が素晴らしいよ。けれど、生活習慣や宗教観が違うから理解しづらいことも多いんだ。だから日本の人が来たらいろいろと話を聞かせてもらうんだよ』

挨拶もそこそこに、陽斗を取り囲んで口々に言いたいことを口走るグループのメンバー。

当たり前だが全て イギリス英語(クイーンズイングリッシュ) で、ろくすっぽ聞き取ることもできていない。

『おいおい、彼は語学留学生だよ。そんなに一度に話しかけられたって理解できるわけないじゃないか』

『あ、そうだね』

『ごめんなさい』

『えっと、ゆっくりとで良いから話をさせてくれるかい?』

揉みくちゃにされる前にアランが手を叩いて制止すると、ようやく少し距離を取ってくれる面々に、陽斗は小さく息を吐く。

『その、僕はそれほどアニメに詳しくないんですけど、それでも良かったらお話しさせてください』

ゆっくりと、発音に気をつけながら陽斗がそう言うと、ソサエティのメンバーが嬉しそうに頷いた。

そして順番に、アニメに出てきたシーンの意味や、キャラクターの台詞の意味を陽斗に尋ね、陽斗はそれに答えるというのが始まった。

陽斗にとって聞き、話す良い機会になったようだ。

……内容はアニメのことばかりだけれど。

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というわけで、今回はここまでです。

ストーリーがほとんど進んでおらず申し訳ありません。

次回は語学学校での話を進めたいと思います。

さて、前回にも書きましたが、新作ファンタジーを投稿しています。

一人称のコメディ作品で、けっこう楽しんでいただけるのではないかと思っています。

が! 伸びねぇ!

是非是非一度読んでみてください!

こちら↓から読むことができます。

https://kakuyomu.jp/works/16818093091590431372

そして感想やレビューなどをいただけると嬉しいです。

カクヨムコンにも応募していますので。

応援よろしくお願いします!

それでは、また次週までお待ちください。