軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

次なる目的

「ディアナさん、とってもお似合いです‼」

「うん、すごく良く似合っているよ」

「……そうでしょうか? 着なれない服なので自分ではよく解りませんね。ありがとうございます」

町の中を歩きながら僕とエレンに言われた、誉め言葉にディアナは少し照れた様子で返事をしていた。

僕達はマレイン・コンドロイの屋敷から移動した後、反省会もとい話し合いをした。

反省会でディアナに言われたことを僕は今後忘れないと思う。

その後、ディアナの服装を整える為に再度、町に戻った。

魔物の二匹も付いて来ているが、サイズと姿は「猫」そのものなので問題ない。

彼女の服装をどうにかしないとと思っていた時、近くにあったお店が目に入った。

その店は和洋折衷の衣装が沢山あったので、ディアナにも折角だからと袴とブーツのレナルーテの服装を購入したのだ。

彼女は今、袴にブーツ、髪留めで髪もまとめている。

その時、後ろから僕達を呼ぶ声がした。

「ハァ…ハァ……ティア様‼ 良かった、追いつけました」

「……‼ クリス、大丈夫⁉ マレインの屋敷でまだ何かあったの……⁉」

肩で息をしているクリスは、マレインの屋敷から急いで町まで戻ってきたのだろう。

クリスは息を整えると言った。

「いえ、マレインの屋敷は王国軍とファラ王女とアスナさんが話をしていますから大丈夫です。ゴロツキ達は皆、お縄になったみたいですね。ただ……」

「ただ? どうしたの?」

クリスは少し険しい顔をしながら言った。

「マレイン・コンドロイだけが捕まっていないそうなのです。屋敷の執事はすでに何者かに殺害されていたらしくて……」

「そうなのか……」

マレインは捕まっていないのか。

ノリスとも繋がっていた彼だ。

ひょっとしたら隠し通路とか色々と事前に準備していたのかも知れない。

僕が少し考え込むそぶりを見せた時、クリスは険しさが怪訝な表情に変わって呟いた。

「でも、妙なのですよね……」

「……妙って、何か気になることがあったの?」

「いえ、執事が亡くなっていた所に、何でもこの国の玩具の『赤い風車』が置いてあったそうなのです。それを見た、一番偉そうな強面兵士の方が『……ご愁傷様だな』と呟いていたのが聞こえたのですよね。それに、兵士達もマレインの行方をそこまで気にしていない様子でしたし……」

なるほど。

クリスの言ったことを整理すると、王国軍とマレインの執事を殺害した者は何かしら繋がりがあるのだろう。

「赤い風車」というのは何かの隠語が含まれている可能性が高い。

クリスが聞いた強面兵士の言葉から察するに、マレインはもうこの世にいないかもしれない。

生きていたとしても日の光を浴びることは二度と出来ないのかもしれない。

クリスの言葉を聞いてそう考えていた時に一つ疑問が浮かんだ。

それだけの組織が存在していたのに何故、ノリスは野放しにされていたのか?

ノリスの騒ぎがあってから、そんなに時間も経過してないはずなのに、と思案しているとエレンが小さい声で話かけてきた。

「ティア様……クリスさんは、その、ティア様の正体、男の子ってことを知っているのですよね?」

「……そうだね」

「フフ、そうですよね。じゃあ、知らなかったのは僕だけですね」

エレンは僕の返事を聞くと「クスクス」と小さく笑っていた。

僕はその様子にちょっとムッとした。

本当は「リッド」として会うまで隠し通すつもりだったのにディアナが口を滑らして、僕を「リッド」と呼んでしまったのだ。

僕の名前が知られてしまった以上、「ティア」の存在は別人物としておくことがエレンに対しては出来なくなった。

僕はやむを得ず、正体を説明する羽目になった。

その時のエレンはびっくりして呆れていた。

「……可愛い女の子ではなくて、可愛い男の娘だったのですね」

「何か、違う意味の言葉にも聞こえるけどそうだね。でも、可愛い男の子はやめてほしいな……」

僕はその後エレンに、女装する経緯についても説明したら彼女は笑いを必死に耐えながら「最高です、ファラ王女」と何故かファラを褒めていた。

エレンとの会話でムッとしていた僕を見たクリスが声をかけてきた。

「そういえば、ディアナさんは着替えられたのですね。レナルーテの服装もとてもお似合いです」

「ありがとうございます。マレインの屋敷で服がボロボロになってしまいましたので、ティア様に新しく購入して頂きました」

ディアナは照れながら言い終えると、僕に一礼した。

その様子を見ていたクリスがスッと僕に疑問を耳打ちをしてきた。

「……何故、ティア様もお着替えにならなかったのですか? レナルーテの服とはいえ、変装の為にと言えば、迎賓館に戻っても問題はなかったと思いますが……」

「うぅ……それには事情があってね……」

実はクリスの言う通り、自分の服も購入して着替えようとしたのだ。

だが、ディアナから指摘された。

「ティア様がもし着替えてお城に戻った姿をファラ王女が見たら、さぞ悲しむと思われますよ。ファラ王女のお心をお察しください」

「……そうだね」

確かにその通りだった。

ファラなりに一生懸命考えてくれたのだ。

まだこの場に彼女がいて相談したのちに着替えればまだ良いだろう。

でも、何も言わずに着替えてしまうのは、ディアナの言う通り悲しませるかもしれない。

そう考えなおした僕は苦渋の決断で今日の服装はこのままでいることにした。

だが、明日以降は変装出来るようにレナルーテの服を買った。

購入した服はお店の人に迎賓館の「リッド・バルディア」宛に配達するようにお願いした。

折角だから、メルの服と母上には櫛も買っておいた。

きっと喜んでくれると思う。

僕の説明を聞いたクリスはちょっと同情するような目で僕を見ながら言った。

「なんだか色々と大変そうですね……」

「まぁね……それよりも、クリスはどうしたの?」

クリスが僕達を追いかけてきた理由をまだ聞いていないことを思い出して彼女に返事をした。

「ああ‼ そうでした」と言うと、咳払いをしてから彼女は理由を教えてくれた。

「ゴホン……実は、ティア様からご相談を受けていた『薬草』のお店で良い所があったので、ご一緒して頂きたいと思いまして」

「本当⁉ 良かった、ちょうど今から見に行こうと思ってたんだ。ありがとう‼」

彼女の言葉に僕は満面の笑みで返事をした。

その様子を見ていたエレンが僕の言葉が終わると声をかけてきた。

「ティア様、それでしたら僕はここで一旦お店に戻りますね。アレックスも心配していると思うので……」

「そっか、そうだね。じゃあ、アレックスにもよろしく伝えといてね。あと、よければ明日にでも使いを立てるから、迎賓館に二人で来てほしいのだけど、いいかな?」

「わかりました、アレックスとお待ちしております」

僕の返事を聞いた後、彼女は悪戯な笑みを浮かべて言った。

「あ、そうそう。アレックスにはティア様の正体は秘密にしておきますから、安心してくださいね」

「……ありがとう」

僕の返事を聞くとエレンは悪戯な笑みを浮かべたまま、自分のお店の方角に走って去っていった。

僕はエレンの言葉に何とも言えない顔をして、彼女の背中を見送っていた。

その様子を見ていたディアナとクリスは肩を震わせて失笑していた。

僕はそんな二人にムッとして言った。

「……もう、さっさと行くよ。クリス、案内をお願いね」

「はい、わかりました。ティア様」

クリスが僕達を先導し始める。

彼女の後に付いていく僕に、魔物二匹はまだついて来ていた。

彼らはどこまで付いてくる気なのかな? と思いつつ僕はクリスの後を追うのだった。