軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最高の屋敷建造を目指して

ファラの部屋の襖の外から「リッド・バルディア様が来られました」と兵士の声が聞こえてきた。

するとアスナが少し呆れた様子でファラに声をかけた。

「姫様、リッド様が来られましたよ」

「……わかっています」

ファラは深呼吸をしてから「どうぞ」と返事をした。

少しすると「失礼します」とリッドの声が聞こえてから、襖が開かれた。

「失礼します」と言って僕は襖を開いた。

すると、ファラが立って出迎えてくれた。

「……リッド様、いらっしゃいませ」

「……はい。よろしくお願いします」

なんか照れくさくて僕は言葉がうまく出てこなかった。

僕達が部屋に入ると、ファラに机とソファーがセットになっている場所に促されるままに座った。

一緒に来たディアナはソファーの後ろで立っている。

すると、アスナが緑茶を僕とファラの前に用意してくれた。

「……どうぞ」

「アスナ、ありがとう」

僕の言葉にニコリとアスナが微笑んでから、ディアナ同様にファラのソファーの後ろに佇んだ。

僕とファラの間に何とも言えない気恥ずかしさのようなものがあった。

そういえば、こうやって直接話すのは初めてかも知れない。

そう思いながら僕はおもむろに口を開いた。

「父上から伺いました。昨日は遅くまで付き添って頂きありがとうございました」

僕は言い終えると、座ったままファラに向かって一礼をした。

すると、呆気にとられたファラが少し慌てながら言った。

「リッド様、頭を上げてください。家臣のノリスが原因ですから、お詫びしなければならないのはこちらです……」

ファラの言葉を聞き終え、僕が顔をあげるとファラは申し訳なさそうな顔をしていた。

うん、このままじゃ駄目だな。

そう思った僕は話の話題を変えることにした。

というか本題だけど、そう思って僕はファラに言った。

「わかりました。では、彼の件はこれでおしまいにしましょう。それよりも今日はファラ王女と話したいことがあって参りました」

「……話したいことですか?」

ファラは少し怪訝な顔をしている。僕は咳払いをしてからおもむろに聞いた。

「ゴホン、えーと、ですね。『もしも』の話なのですが、バルディア領に来たらどんな屋敷にお住みになりたいですか?」

「へ……⁉ そ、それは大胆なご質問……ですね」

僕の一言でファラは顔が真っ赤になり、耳が上下に動き始めた。

彼女の後ろに立つアスナは吹き出して笑いを抑えている。

どうしたのだろう?

ふと、後ろを見るとディアナは呆れた顔をしていた。

すると、怪訝な顔をしている僕にディアナはそっと耳打ちをした。

「令嬢、正確には王女ですが『もしも』とはいえ今後、住む屋敷について聞くのは、結婚の申し込みと同義です」

あ、と僕は思った。

確かに、令嬢や王女に基本的に「もしも」はない。

例えそうであれば大変な無礼になってしまう。

それでも「もしも」の話をすればそれは決定事項であることが前提になる。

つまり、結婚の意思表示に他ならない。

僕は自分の言った言葉の意味を理解して「ボン」と顔が赤くなった気がした。

でも、彼女や周りが決定事項を知らないだけだ。

そう思って僕は腹を括って赤い顔のまま、ファラを見据えて言った。

「えーと、はい。もうそう思ってもらって構いません‼ そのうえでどんな、お屋敷に住んでみたいか、ファラ王女のご希望をお聞かせ願います‼」

「は、はい……‼」

僕は勢いで突き進んだ。

その様子をアスナとディアナは口元を押さえて何かをこらえながら見ていた。

一方のファラは僕と同じぐらい真っ赤で耳を上下させていた。

このままだと、話が進まない。

そう思った僕は、咳払いをして屋敷について説明した。

「ゴホン、例えばですがレナルーテと似た部屋が欲しいとか、庭をどうしたいとかないでしょうか?」

「へ⁉ そ、そうですね……あの、畳の部屋とかもお願いして良いのですか?」

「はい。出来る、出来ないは考えずに色々叶えて欲しいことをお伺いしたいと存じます」

そういうとファラは少しずつ、欲しい部屋を教えてくれた。

和室、和洋折衷の部屋、縁側など基本的なレナルーテ文化の部屋が一通り欲しいということだった。

襖に関して聞くと、出入口はドアで良いらしい。

話を聞いて驚いたが、ファラは和洋折衷の場所で過ごすことが多いらしい。

帝国文化も一通り習得していた。

今すぐ、バルディア領に来ても生活はまったく問題ないとのことだった。

僕はレナルーテの英才教育に少し目を丸くした。

ファラはある程度、出し切ると最後に思案してから呟いた

「あと、難しいのは承知していますが、温泉があれば嬉しいです……」

「温泉……か、それは僕も欲しいな」

その時、後ろから何か期待に満ちた視線を感じておもむろに振り返った。

すると、ディアナが目をキラキラさせて嬉しそうな顔していた。

そして、僕に言った。

「リッド様、ファラ王女、直々のお願いです。ここで『やる』と言わなければ男が廃ります。どうぞ、ファラ王女に気持ち良いご返事をしてください」

僕はディアナの言葉に何とも言えない顔をした。

『男が廃る』とは随分と失礼な言い方だ。

まぁ、あまり気にしないけどね。

僕は、ファラ王女を見据えて微笑みながら返事をした。

「できるかどうか、わからないけど温泉も出来るように頑張ってみるね」

「無理を言いまして、すみません。決して無茶なことはなさらないで下さい」

ファラは申し訳なさそうな顔をして僕を心配してくれている。

かたや、ディアナは平静を保っているが、右手の拳にグッと力を入れているようだった。

僕は呆れながらも、視線をアスナに送ると彼女にも質問した。

「アスナも何か希望はない? 『もしも』だけど、ファラ王女が来たら君も住むことになるでしょ?」

僕の言葉にアスナは少し目を丸くした。

だが、ファラ王女が目配せをして頷くと、咳払いをしてからアスナは言った。

「ゴホン、私は部屋が和室、寝具は何でも大丈夫だ。それよりも訓練場……いや、道場を屋敷内に用意して欲しい」

「……ど、道場?」

まさかの提案にさすがの僕も目が丸くなった。

道場を僕は知っているがディアナは知らない。

だから、確認も含めて怪訝な顔をする。

すると、アスナは説明を始めた。

「そんな、難しいものではない。鍛錬を行う為の、室内訓練場の建物だ。道場があれば雨の日でも関係なく訓練ができる。是非、リッド様の甲斐性を姫様に見せて欲しい」

アスナの目がキラキラしている。

ディアナと同類のような気がする。

ふと、後ろを見るとディアナも道場には興味津々の様子だ。

ファラは「ごめんなさい」という表情はしているが止める気はないらしい。

僕はため息を吐いてから言った。

「はぁ……わかったよ。でも、出来るかどうかわからないよ? ともかく全部、入れてみるけどね」

「さすがはリッド様、姫様が見込んだ殿方だ」

僕の言葉を聞くとアスナも嬉しそうな顔をしながら右手の拳にグッと力を入れている。

すると、ディアナが僕を見ながら言った。

「リッド様、折角ですからバルディア家にいるダナエやガルン様の話も聞くべきです。屋敷を支えているのはメイドやガルン様のような家の者達です。必ず、いい案を出してくれると思いますよ」

「それもそうだね。じゃあ、ここで聞いた話と屋敷の皆に聞いた話を全部まとめて考えてみるよ」

とりあえず大丈夫かなと思っていると、ファラがおもむろに言った。

「リッド様、部屋ではないのですがレナルーテにある『桜』を持っていくことは可能でしょうか?」

「へ……? レナルーテって桜があるの?」

僕はこれについては知らなかった。するとファラはそのまま言葉を続けた。

「はい、ご存じないのも無理はありません。桜はレナルーテにしかないと言われております。とても花が綺麗なので花が咲く時期は、花を見ながら食事をする花見なども行います。ですが、私はしたことがないので可能であればリッ……いえ、バルディア家の皆様としたいなと……」

ファラは言いながら顔を赤くして耳を上下させていた。

そして、途中で言いかえた言葉に気付かないほど、僕はにぶくない。

うーん。

これこそ、「やる」と言わないと甲斐性なしで男が廃る気がする。

そう思った僕は、どうなるかわからないけど言った。

「わかりました。僕もファラ王女と花見をしたいと存じます。出来る限りの事をしてみようと思います」

「ありがとうございます‼」

僕の返事にファラはとても嬉しそうな顔をしてくれた。

ここにいる面々の要望は聞いたから、あとは領地に戻って家の皆の意見を聞いてみよう。

そして、全部まとめて父上に出すだけだしてみよう。

ダメなら残念だけど、何か削れば済むしね。

そう思いながら僕は皆にお礼を言った。

「ありがとうございます。では出来るかどうかはわかりませんが、頑張ります」

「はい。ご無理はされないようにしてくださいね?」

ファラは心配そうな顔で僕をみている。

だが、アスナとディアナが嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。

さて、もう一つの相談をすることにしよう。

「はい。無理のない程度で頑張ります。それで、一つご相談なのですが、城下町に行きたいのですが、どうでしょうか?」

僕の一言でディアナの顔つきが変わった。

「リッド様、それはなりません。レナルーテではリッド様の恰好は目立ちすぎます。それに、ノリスのような輩がリッド様を狙わないとも限りません」

「わかっているけど、そこを何とかならないかな?」

折角、レナルーテに来たのにノリスのせいで城下町に出ることを父上が許してくれなかった。

城内であれば監視の目があるが、城下町となると僕は目立ちすぎる上に狙われやすい立場でもある。

当然、その分リスクがあがるのだ。

だから、ファラ達に相談にきたのだけどやっぱり無理か。

そう諦めかけた時、ファラが思案顔をしているのに気付いた。

何か名案があるのだろうか?

そう思っていると彼女はおもむろに呟いた。

「ディアナ様、リッド様が『リッド様』とバレなければ大丈夫でしょうか?」

「まあ、それであればリスクは減るので大丈夫かもしれませんが……」

ディアナはファラの言葉をさすがに無下に出来ず、弱めの言葉で返した。

すると、ファラの顔がパッと明るくなると名案と言わんばかり、張り切って言った。

「リッド様がメイドになれば良いと思います‼」

「へ……?」

僕とディアナは意味がわからず呆気にとられた。

ファラの後ろにいる、アスナは大きなため息を吐いて呆れていた。

僕はこの後、ファラに相談したことを後悔することになる。