軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対ヨハン戦の訓練

「逃がしませんよ、リッド様」

僕が着地して間もなく、エンドラが素早く間合いを詰めて再び爪撃による連続攻撃を繰り出してくる。

こちらに体勢を整える隙を与えず、流れを掴んで主導権を握るつもりなんだろう。

「やるね、エンドラ。でも、これぐらいで僕が押し込めると……」

「もちろん、思っていません」

「な……⁉」

被せるように吐き捨てた彼がその場を飛び上がると、再び死角からアレッドが現れ、今度は拳による連打を繰り出してくる。

「一対一であれば、私はリッド様に追いつけません。しかし、エンドラがいるなら話は違います」

「いいね、ちゃんとしてるよ」

何とか捌くが、それでも一撃が重くて僕が顔を顰めた瞬間、「こっちも忘れちゃだめですよ」と背後からエンドラの声が響く。

想像以上の連携だ。

この二人を相手に、このままじゃ無理か。

僕は心の中で『メモリー』の名を呼び、身体強化・烈火を発動。赤く揺らめく魔力を纏い、強力な魔波を発生させてアレッドとエンドラを吹き飛ばした。

「まさか、こんなに早く烈火を発動することになるとは思わなかったよ」

息を吐いて一瞥すれば、吹き飛ばされた二人はすでに体勢を整えていた。

「二対一です。リッド様がいかに強くても、簡単に倒せると思わないでください」

「私達だって、やるときはやるんです。いきますよ」

アレッドとエンドラはそう言うと、再び息を合わせて僕に襲いかかってくる。

だが、何度も同じ手は喰わない。

烈火を発動したことに加え、彼等の連携が見えてきた。

前に出てくるのはエンドラだが、彼はあくまで囮。

本命はアレッドの一撃だ。

よし、そろそろこちらが反撃する番だ。

そう思った瞬間、アレッドとエンドラが不敵に笑って飛び退いた。

あれ、と首を傾げるが、すぐに別方向から攻撃的な気配、闘気ともいえるものを感じてハッとする。

見やれば、獣化した兎人族のアルマと牛人族のベルカランが間近に迫っていた。

「リッド様、もう五分経ちました。次は私、アルマとベルカランが相手です」

「私も力には自信あるんですよぉ」

距離を詰められすぎて回避は間に合わず、アルマの素早く強烈な蹴り技。

ベルカランのアレッドに勝るとも劣らない拳の一撃を同時に受けてしまう。

咄嗟に防御はしたが、僕は思いっきり吹き飛ばされてしまった。

受け身を取って何とか着地するが、両腕には強い痺れが残っている。

「……随分と意地悪な入れ替わりだね」

ジト目でカーティスを見やると、彼は豪快に笑い出した。

「五分経てば入れ替わるとはお伝えしましたが、訓練をその度に中断するとは言っておりません。対ヨハン戦を想定し、より難易度の高い訓練の方がよいだろうという判断です。さぁ、休んでいる暇はありませんぞ」

彼はそう言うと、僕と対峙している二人に視線を向けた。

「アルマ、ベルカラン。お前達の一撃でリッド様の腕は痺れているはずだ。畳みかけなさい」

「言われなくてもそのつもりです」

「はぁーい」

アルマは気風良く頷き、ベルカランはおっとりした声で返事をする。

そして、二人は一気に間合いを詰めてきた。

「本当に意地悪な人だよ、カーティス。でも、これぐらいで僕を倒せるなんて思わないことさ」

僕はにやりと笑うと、烈火の出力を上げた。

身体強化と弐式は、どちらも身体能力を底上げするもの。

烈火は術者が扱う火属性魔法の威力を強化し、弐式以上の爆発的な身体能力向上を得られる。

魔力消費が激しいけど、こればっかりは身体を慣らしていくしかない。

「ベル、私が先手を仕掛けて牽制する。あんたは隙を見つけて攻めなさい」

「わかりましたぁ。アルマちゃんの指示に従いますよぉ」

獣化したアルマの素早さと身の軽さは僕以上であり、烈火でも中々に苦戦する相手だ。

おまけに彼女は第二騎士団の中でも一、二を争う切れ者だ。

おそらく、ベルカランの連携にも何か策があるに違いない。

ベルこと、ベルカランは口調こそおっとりしているが、実際のところ観察眼と分析力に優れている。

それらを生かす破壊力のある一撃を繰り出してくるので、下手を打てば一気に戦闘不能までもっていかれてしまう。

素早いアルマの牽制で発生する僕の細かい隙を見て、ベルカランが堅実な一撃を繰り出してくる。

手詰まりで防戦一方になっていると、アルマがにやりと笑った。

「リッド様、防ぎ方が単調になっていますよ」

「しまった……⁉」

動きを読まれて繰り出された彼女の蹴りにハッとするが、僕はすぐに笑い返した。

「なんてね。単調になっていたんじゃない、単調に見せていたのさ」

「な……⁉」

勝ちを確信していた様子のアルマだったが、虚を突かれて目を丸くする。

僕は身を翻して大振りの蹴りを躱し、死に体となった彼女の懐に入り込んだ。

「勝負を決めようと焦りすぎたね」

「まだです。まだ終わりませんよ」

アルマはそう言うと、大振りの蹴りをそのまま地面に叩きつけた。

その衝撃で大地が割れ、激しい土煙と衝撃波が発生する。

至近距離にいた僕は、吹き荒れる衝撃波で吹き飛ばされてしまう。

「咄嗟に地面を蹴って衝撃波と目くらましで体勢を整えるなんて、やるじゃないか」

受け身を取って土煙の中心にいるアルマを見やった瞬間、彼女の口元が緩んだ。

「リッド様ぁ。相手の隙を捉え、勝利を確信した時が一番危ういんですよぉ」

上から聞こえてきた声にハッとして見上げた瞬間、ベルカランが目を細めて手を拳にしていた。

しかし、対応しようにも太陽の光で目が眩んでしまい、彼女の挙動を把握しきれない。

「逆光、か」

「この一撃は重いですからねぇ」

目が眩んだことで反応が一瞬遅れてしまい、回避しようにも間に合わない。

僕は咄嗟に両腕を交差し、ベルカランの拳を受けた。

「ぐ……⁉」

「あらあらぁ。さすがリッド様。この一撃を耐えますかぁ」

なんて重い一撃だ。

彼女の拳による衝撃が全身に伝わり、僕は歯を食いしばった。

凄まじい衝撃によって大地がえぐれ、ひび割れていく。

「その状況であれば、私の一撃は防げませんよ」

横目で見やれば、アルマが勢いよくこちらに向かってきていた。

上からベルカランに押さえ込まれており、回避行動も防御もできない。

やむを得ず、僕は烈火の出力を急激に上げて魔波を発生させ、アルマとベルカランを吹き飛ばした。

「もうちょっとだったのに……⁉」

「あららぁ」

二人は吹き飛ばされた先で受け身を取り、即座に構えを取る。

一方、僕はその場で片膝を突き、肩で息をしていた。

あそこまで急激に魔力消費量を上げると、身体の負担が大きい。胸から激しい鼓動が聞こえてくる。