軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドとガリエル

馬人族領地へ続く街道を、十数台の馬車が何かを警戒するように固まって進んでいる。

先頭の馬車には覆面をしたガリエル・サンタスの姿が見え、ガラの悪い傭兵達も護送に従事しているようだ。

僕は彼等の行く手を塞ぐように街道へ躍り出ると、魔法で爆発を起こして道のど真ん中に大穴を開ける。

同時に馬車一団の最後方でも同様の爆発が起きた。

辺りに地響きと衝撃波が発生し、街道には土煙がもうもうと立ち上がる。

これで、ガリエル達は前に進むことも、反転して逃げることもできない。

「な、何事だ」

ガリエルと傭兵達が武器を手に、蜂の巣を突いたような大騒ぎで馬車から次々と降りてくる。

いや、この光景は蜂の巣というより、蟻の巣に近いかな。

「だ、旦那。馬車前後の街道が何者かに破壊されたようです。馬車が身動きできません」

「なんだと⁉ おのれ、時間がないというのに。何者か知らんがふざけた真似をしてくれる。すぐに道を通れる程度に復旧しろ。もし短時間で復旧ができない場合、街道を外れても馬車を無理矢理進めて構わん」

「へ、へい」

傭兵達が慌てて街道の状態を確認しようと近づいてくる。

土煙に覆われているから、まだこちらの存在に気付いていないらしい。

僕は土の属性魔法を発動し、足場の土を操って高くそり立つ壁を作りだした。

その地響きが轟くと、傭兵達がたじろぎながら引き下がる。

「今度はなんだ⁉」

「旦那、こりゃ、土の属性魔法ですぜ」

ガリエル達が戦き呆気に取られ中、街道に「ふふふ、あはははは」と僕の高笑いが轟いた。

「誰だ、何処にいる。姿を現せ」

ガリエルが怒号を発したその時、傭兵の一人がそり立つ壁の上に立つ僕達の姿に気付いて指差した。

「あそこだ。あそこに誰かいるぞ」

「なんだと……ぐ⁉」

彼等はそり立つ壁を見上げるが、暁の逆光で目が眩んだらしく、日差しを遮るように腕を前に出して怯んだ。

僕は両腕を組んだまま、そり立つ壁の上から彼等を凄んだ。

「世の人々は二種類に分けられる。他人を思いやり、慈しみ、共に歩もうとする者と、他者を踏みつけ、奪い、己が欲望を満たさんとする者だ。しかし、欲望のままに生きる者には、必ずいつか裁きの時が訪れるだろう。人それを、『因果応報』という」

「ぬぅ、言わせておけば偉そうに。貴様、一体何者だ」

「金色の夜明け首領マーベラス、もといガリエル・サンタス。貴様等の悪事を全て無に帰す者だ」

「な……⁉」

ガリエルは目を丸くしてたじろいだ。

正体がばれていないと思っていたからだろう。

僕は改めて彼等を見渡すと、レイピアを抜剣する。

「深淵に灯った焔は、悪を照らす光となる。天童の騎士、ゼロ・レッド参上」

口上を述べると、背後から僕と同じ格好をしたラムルとアリアが姿を見せる。

「同じく、ゼロ・ブルー」

「じゃじゃーん。ゼロ・ピンクだよ」

目元を隠すマスクの色は僕が赤色、ラムルが青色、アリアが桃色、この場にいないアリスが黄色、ダンは緑色だ。

この面々の中で一番のお調子者はアリア、冷静なのがラムル、頭が切れるのはダン、力が強くて大食らいなのはアリスという具合である。

ちなみに、この場にアリアがいることは予定外。

彼女は独断で他の航空隊員を空で監視待機させ、無理矢理合流してきたのだ。

当然、僕は怒って、彼女には後で顛末書を提出するように指示している。

「お、おのれ、ふざけた奴等め。街道を破壊したのも貴様等だな。お前達、容赦は無用だ。討ち取れば謝礼を倍増するぞ。資金はいくらでもある」

ガリエルが額に青筋を走らせて怒号を発すると、傭兵達がハッとして目の色を変えた。

謝礼を倍増って。

その資金は狐人族領民達から違法に巻き上げた税金で、今後の狐人族再建に使う資金だろう。

「本当に腐ってるな。いくよ、皆」

「畏まりました」

「はーい」

ラムルとアリアの返事が聞こえると、僕はそり立つ壁から地上に降り立った。

その直後、傭兵達が次々と武器を構えて襲ってきたけど、所詮は烏合の衆で大した実力は無い。

レイピアで次々と返り討ちにしていき、余裕がある時は『Z』の太刀筋で傭兵を倒していく。

ふと横目でアリアを見やれば「ダンダラダンダンダーン」とノリよく元気な声を発し、傭兵達を次々倒していた。

ラムルはアリアの背後を守るような位置取りをしつつ、「ピンク、その調子だ。傭兵達をやっつけろ」と声かけをしている。

あの様子なら問題なさそうだな。

というか、この程度の相手なら第二騎士団分隊長の子達にとっては弱すぎるぐらいだろう。

僕達の周りにいた傭兵達の半数以上が地面に倒れ伏せたその時、馬車の最後尾からも剣戟の音が聞こえ、傭兵が宙に舞っているのが見えた。

アリスとダンも上手くやってくれているみたいだな。

馬車一団の最後尾で起きた爆発は、二人によるものだ。

馬車の逃げ道を塞いだ後、彼等はそのまま後方にいる傭兵達を襲撃、各個撃破しながら僕達との合流を目指している。

「旦那、仲間の報告だと最後尾から上がってくる奴等も奇天烈な格好をしているが、相当な手練れだ。このままじゃ、挟み撃ちにされちまう」

「……⁉」

傭兵の指摘にガリエルは舌打ちすると、こちらを凄んだ。

「その赤いマスクは俺が相手をする。お前達は、残りの二人に集中しろ」

「は、はい。承知しやした」

彼の一喝に戦き、僕の周りにいた傭兵達は後ずさってアリアとラムルの方に走り出す。

数が増えたとしてもこの程度の傭兵達に、二人が負けることはないだろう。

でも、万が一ということはある。

「行かせないよ」

瞬時に多数の『火球』を掌の上に生成し、僕の前から走り去る傭兵達の背中に向けて射ち放つ。

しかし、ガリエルがその間に割り込んだ。

「させんわ」

彼は背中に背負っていた大剣を軽々と振り回し、火球を全て切り払うと鼻を鳴らした。

「この程度の魔法。俺には通じん。今までの奴等と同じと思うなよ」

「……そのようだね、マーベラス。いや、ガリエル・サンタス」

僕は右手に持つレイピアの切先をゆっくりと彼に向けた。

ガリエルの大剣は『バスタードソード』と呼ばれる両手持ち類いのものだけど、剣身の幅がとても広い。

子供や小柄な大人であれば、余裕で剣の影に隠れることができるだろう。

あれをレイピアでまとも受ければ、絶対折れるな。

「どうした、ゼロとやら。俺の大剣に臆したか。だとしても、もう遅い。ふざけた真似をした貴様等を、俺は絶対に許さん」

ガリエルは大剣を片手で持ち上げ、切先をこちらに向けてきた。

凄い腕力だとは思うけど、臆することはない。

僕は睨み返した。

「それはこちらの台詞だ。お前達、利己的な豪族が領民を苦しめたその所業、許すつもりはない。資金は全て返してもらう。そして、因果応報を知れ」

吐き捨てると、僕は勢いよく踏み込んでレイピアによる鋭い突きを繰り出した。