軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドの暗躍2

「リッド様。例の者達の処遇は如何いたしましょう」

カペラの問い掛けに僕は「あ、それもあったね」と答えて考え巡らせる。

例の者達というのは特務機関に指示して身柄を拘束したモールス、デーブ、ゲーハという自称冒険者の三人組だ。

自称というのは、冒険者ギルドでまだ身元確認が取れていないためである。

旧政権派の豪族達が捕らえられたことで、レモスとガリエルの下に集まっていた傭兵達は次々と彼等を見限って逃げ出し始めていた。

元々、金で雇われた傭兵達にはサンタス家に対する忠誠心などない。

信念や義理人情があるわけでもなく、金と長い物に巻かれるだけの輩ばかりだったのだろう。

逃げ出した傭兵達は『自分だけは助かった』と思ったはず。

だけど、世の中そんなに甘くない。

秘密裏にサンタス家を徹底的に監視していた僕達が、彼等の動きに気付かないわけがないのだ。

カペラが指揮する第二騎士団特務機関属ラムル、アリス、ダン達を差し向け、尽く逃げ出した傭兵達の身柄は拘束。

首都フォルネウのバルディア家の駐屯地となっている屋敷で厳しい尋問の上、情報を洗いざらい聞き出して帝国と他国での犯罪歴、余罪、指名手配の有無まで調べ上げた。

なお、わざわざバルディア家の駐屯地で尋問を行った理由は、豪族に邪魔されないようにするためだ。

狐人族領の首都フォルネウであっても、バルディア家の駐屯地となった場所に許可無く入れば、僕は外交問題として扱うと周知、これをアモンも了承している。

従って、豪族も簡単に入ることは許されないわけだ。

駐屯地で行われた尋問の結果は、やっぱりというべきものだった。

人族なのにわざわざ獣人国ズベーラを訪れ、金に目が眩んで傭兵となった者達にまともな経歴などなく、叩けば埃が出る輩ばかり。

中には、帝国や他国での殺人や強盗の罪で冒険者ギルドが懸賞金を掛けている者すらいた。

金色の夜明けの素性を少しでも誤魔化すため、人族で腕の立つ者達を集めたということだろう。

でも、こんな輩が放たれて跳梁跋扈すれば、領内の治安悪化は目に見ている。

更に付け加えると治安の件で前世の記憶を辿れば、面白い心理研究もあった。

前世でいう高校などの学校内に落ちているゴミ、割れた窓ガラス、壁の落書きなどをそのまま放置してしまうと、先生や生徒達の心が荒んで学校全体が荒れていくというものだ。

研究から分かるとおり、人の心は過ごす環境に大きく影響されやすい。

これは学校だけではなく、様々な組織や国などでも同じことがいえる。

サンタス家が悪人達を領内に引き入れた事実は領地運営において最悪の手段であり、糾弾されるべき内容だ。

実際、傭兵達の中には金ほしさに街や村で横暴を働く者や逃走資金確保の目的で多数の民家を襲おうと企てていた者もいたのだから。

僕の指示で身柄を拘束したモールス、デーブ、ゲーハは他の輩と少し違ってガリエルを『旦那』と呼んで慕っていたようで、様々な仕事を彼に任されていたことが事前調査でわかった。

調べる限り三人組は狐人族領内で大きな罪になるようなことはしておらず、他の輩のように領民に強くは当たる真似もしていなかったようだ。

僕とディアナが駐屯地で対面した時、彼等は真っ青になっていた。

でも、「取引をしよう」と僕が笑顔で持ちかけるとモールス達はきょとんとし、顔を見合わせる。

「と、取引だと?」

「そう、取引だ。君達が知っているサンタス家の情報を全て教えてくれれば狐人族、バルディア領内出禁でことを済ませよう。あ、ちなみにレナルーテは三年前に出禁となったことは知っているからね。あしからず」

僕がそう告げると彼等は意気消沈し、観念した様子で色々と教えてくれたというわけだ。

サンタス家から逃げ出す傭兵達は後を絶たないから、モールス達のこともレモスとガリエルはそこまで気にしていないことも監視班の報告でわかっている。

「取引きをしたとはいえ、こちらの素性とやり方を知った者達です。必要であれば解放後に『処置』もありかと」

凄むカペラが発した低い声に、僕は「いやいや」と首を横に振った。

「さすがにそれはやり過ぎだよ。むしろ、彼等には特務機関の噂を広めてもらおう」

「噂、ですか」

「うん。バルディアの第二騎士団は敵に回すと、多少腕に覚えがある冒険者や傭兵では太刀打ちできない上、容赦が無い。特に隠密行動する秘密の部隊がいるらしいってな具合でね。そうすれば、僕達がいるだけで変な真似をする輩が少しは減ると思うんだ」

あの国で悪いことをすると秘密裏に身柄を確保されて闇から闇に葬られる、なんて噂が悪人の間で流行れば治安維持にも少しは繋がるだろう。

「なるほど。あえて逃がすというわけですね」

「まぁ、そんなところかな。さて、そろそろ次の動きに取り掛かろうか」

「畏まりました」

僕は屋敷の監視をカペラに任せ、特務機関の子達数名を引き連れて新たな目的地に馬で移動を開始する。

なお、ディアナはとある理由でアモンが率いる監査団に同行しているからここにはおらず、後で合流する予定だ。

金色の夜明けの首領マーベラス。

もとい、ガリエル・サントス。

いずれエルバを超えると豪語していた彼の実力は、果たしてどれほどのものだろうか。

何にしても、僕の新たな魔法を試す実戦には丁度良い相手となるだろう。

そして、この作戦が成功すれば狐人族内における旧政権派の豪族は完全に力を失うことになるはず、一石二鳥かな。

翌日。

日がまだ上がりきっていない薄暗い早朝、レモスの豪族屋敷に動きがあったと監視班のアリーナから通信魔法で連絡が入る。

裏資金を積載していると思しき荷台を引いた馬車が明かりも灯さず、十台以上も屋敷を出発したらしい。

薄暗い内に出発したのは、アリア達航空隊を警戒してのことだろうけど無駄なことだ。

こちらはすでにレモス達が運び出す裏資金の輸送経路を把握している。

馬人族領を経由し、鳥人族領に向かう予定のようだ。

もしかすると、旧政権派と鳥人族部族長ホルスト・パドグリーに何か繋がりがあるのかもしれない。

これが終わったら、サンタス家にその点も追求した方が良いな。

「リッド様。確認できました。こちらへ真っ直ぐ進んで来ています」

考えを巡らせていると、馬人族領に続く街道を双眼鏡で監視していたラムルが小声を発した。

「わかった」

僕は頷くと、身のうちにある魔力を引き出すため『メモリー』の名を心の中で呼びかけた。

すると魔力が全身から溢れて、僕の体を覆っていく。

「……よし。じゃあ、行こうか」

皆に呼びかけた時、僕の体はエルバと対峙した『大人の姿』に変わっていた。