軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

カーティスと第二騎士団

「それに、ザックの部下であったカペラが『特務機関』を管理しているとは。このような人事をするとは、リッド殿も大分肝が据わっておりますな」

彼はザックと腐れ縁があると言っていた。

つまり、彼がレナルーテの暗部の頭目であることに加え、どのような人物か良く知っているのだろう。

僕はあえて、目を細めて頷いた。

「褒めの言葉として受け取っておきます。それと、カペラは今では無くてはならない存在ですよ」

「やれやれ。リッド殿は先駆者でありつつも、人の心に入り込むのもお上手のようですな」

肩を竦めるカーティスに苦笑しつつ、カペラに視線を移して話頭を転じる。

「ところで、カペラ。カーティス達に第二騎士団の皆を紹介したいんだけど、皆の予定はどうかな?」

「今日は、どの隊も既に任務で外出しております。それに、明日以降もどの隊も予定が詰まっております故、まずは隊長格の面々だけ集めてはどうでしょうか? 隊に任された任務自体は、副隊長が居れば問題ないかと存じます」

「なるほどね」と相槌を打つ。

第二騎士団の陸上隊は、バルディア領内の土木関係から道路整備のような公共事業全般を主に請け負っている。

カペラやディアナが僕の代わりに行ってくれている事務作業は、領民から届く公共事業の依頼。

そして、任務達成の報告書の確認が主だ。

その中で特に優先順位が高いもの、大きな問題が発生したと認められるものが手元にやってくる。

一応、簡単な書類であればファラでも決済できるようにしたんだよね。

その為、日々の事務作業は僕とファラで書類を次々に処理する作業に追われている。

当然、僕達が忙しいということは、現場を回っている第二騎士団の皆はそれ以上に忙しいというわけだ。

色んな問題が落ち着いたら近い将来、第二騎士団の増員も考えないといけないな。

「わかった。じゃあ、それで手配をお願い」

「畏まりました。では、明日の朝に各隊の隊長を宿舎の訓練場に集合させます」

「うん。よろしくね」

会釈するカペラにお礼を言うと、視線をカーティス達に戻した。

「申し訳ない。皆を紹介できるのは明日になりそうです」

「お気になさず。我らが着いたのも今日でしたからな。第二騎士団の皆に会えるのは、明日の楽しみにとっておきましょうぞ」

カーティスはそう言うと、豪快に笑い出す。

それからしばしの談笑を楽しんだ僕達は、宿舎の執務室を後にして屋敷に戻る。

そして、彼等を来賓室に案内するのであった。

翌日、カーティス達と共に宿舎の訓練場を朝から訪れた。

勿論、昨日に続いて第二騎士団の皆を紹介する為だ。

なお、この場にはディアナ、カペラ、ファラ、アスナという面々も揃っている。

メルもこの場に同席したいと言っていたけれど、他の習い事と時間が重なっており、それは叶わなかった。

そのせいもあり、メルは頬を膨らませて僕達を見送っていたけどね。

約束の集合時間には、まだ少し時間がある。

その中、カーティスが満足気に自身の顎を擦った。

「いやぁ。それにしても、バルディアでも米やみそ汁と、レナルーテと変わらぬ朝食が取れるとは思いませんでしたぞ」

「喜んでもらえたなら良かったです」

笑顔で頷くと、次いでシュタインとレイモンドが感慨深げに呟いた。

「祖父上、私は本国と変わらない朝食も驚きましたが、やはり昨日の夕食が衝撃的でした。新鮮な魚を生で食べる刺身に始まり、見たことのない食事の数々。その美味と言ったら……あれらの味は是非レナルーテでも再現したいものです」

「兄上の言う通りです。あちこちからバルディアに華族や貴族が次々に訪れる理由もわかる気がしますね。あの味を知ってしまったら、また食べたいと思うのが人の性でしょう。ある意味、人を虜にする魔性の味やもしれませぬ」

「あはは……」

当たらずとも遠からずの言葉を苦笑して受け流していると、ファラとアスナが嬉しそうに微笑んだ。

「私達もそのおかげで、バルディアに早く馴染むことができましたもの。ね、アスナ?」

「はい、姫様の仰せの通りです。土地が変わると、食生活の文化に悩むことが多いと聞いておりました。しかし、リッド様のご配慮により私達はレナルーテと変わらない……いえ、食事の楽しみは本国以上かもしれません」

「ほう。食べられればなんでも良いと、言っていたアスナですらそのように言うとは思わなんだ。オルトロスやガーベラが聞いたらさぞ驚くだろうな」

彼女達が熱く語る表情を目の当たりにすると、カーティスは嬉しそうに目尻を下げて笑い始めた。

実のところ、シュタインとレイモンドが言っていたように、バルディアで提供している食事を再現したいから、作り方を教えて欲しいという問い合わせは結構もらっている。

だけど、邪な考えを持ってる人達が多いから基本的にはお断りしているのが現状だ。

ちなみに、シュタインが言っていた『刺身』というのは前世でも馴染みある海魚のことである。

マグノリア帝国にも海に面した領地があって、そこの領主と帝都の親睦会で縁ができて販路が増えたのだ。

まぁ、僕が父上にお願いして半ば無理くりした部分あったけどね。

でも、バルディアまでに続く道路整備を申し出た上で取引をしたいと申し出たら、先方は凄く喜んでくれた。

勿論、道路整備と木炭車だけじゃ新鮮な海魚を持って来るのは難しい。

そこで、氷の属性魔法の出番というわけだ。

兎人族のオヴェリア達に手伝わせたら、当初は文句を言っていたけれど新鮮な海魚の刺身を食べてからは反応が真逆になった。

今では、氷の属性魔法を使える子達は率先して海魚の仕入れを手伝いたいと言う子も多い程だ。

なお、仕入は勿論クリスティ商会が代行している。

海産物はバルディアの北にあるバルストの方が距離的には近いんだけど、価格で足元見られる上、クリスのようにエルフや獣人族など、人族以外が出入りするにはリスクが高い。

何せ、バルストは人族以外の奴隷を認めている国だ。

それに、価格交渉や相談も同じ帝国出身の貴族の方がやりやすいからね。

「リッド様。皆がやってきたようです」

「うん? あ、本当だ」

カペラの声に反応して宿舎の方に目をやると、狼人族のシェリルを先頭に和気あいあいとこちらにやって来る獣人族の子達が見えた。