軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特別強化訓練

クロスと訓練を再開して数日が経過した。

襲撃事件後の現場検証や事後処理も一通り落ち着いて、ドワーフのエレンとアレックスが率いる技術開発部も平常運転している。

勿論、警備体制は見直されており、工房の敷地内に入る為には僕でも事前申請が必要とした。

『化術対策』としては弱いけど、何もしないよりは良いだろう。

他にも、僕の指示により第二騎士団の辺境特務機関が襲撃犯の足取りやどんな諜報活動を行っていたのか、ズベーラとの国境地点を中心に調査を行っている。

襲撃犯であるクレア達の手腕を見る限り、得られる情報は限られるかもしれない。

だけど、少しでも手がかりになればと思っている。

第二騎士団の子達に襲撃事件の詳細を説明したところ、「自分達を捨てておきながら拉致するとか、どこまで馬鹿にしているんだ!」と怒り心頭の子達も多く、宥めるのが大変だった。

それとつい先日、父上は帝都に出立した。

今回の襲撃事件における詳細の報告と、帝都で囁かれる不審な主張『バルディアが獣人族の子供を奴隷として扱っている』という出処の確認。

また、必要であればその主張を一蹴する為である。

勿論、バルディアが獣人族の子達を奴隷として扱っている事実はない。

だけど、帝国法に触れないギリギリの所を攻めて、あの子達をバルディアで保護。受け入れたというのは事実だ。

一部の帝国貴族が妬み、やっかみで揚げ足取りのようなことをしてきただけ。

そう捉えることもできるけど、バルディアが襲撃された時期と帝都で主張が広まった時期が都合よく重なっているのだ。

父上もその事は気になっているらしく、それ故に主張の出処を探って来ると言っていた。

皆それぞれに、次に備えて必要なこと進めている。

僕はというと、襲撃犯のクレアに手も足も出なかったことを反省して、父上に教わった身体強化・弐式。

そして、その先にある身体属性強化・烈火を使いこなせるようになるべく、訓練を日々行っている。

だけど、ここ数日はただ訓練をしていただけじゃない。

実は、いち早く強くなる為の秘策を思いついたのだ。

いつも通りクロスと訓練を行うべく訓練場に辿り着くと、「よっこいしょ……っと」と言って木で造られた瓶箱を地面に丁寧に下ろした。

瓶箱には『とある液体』が詰まった瓶が大量に入っている。

その様子を見たクロスが、眉を顰めて首を傾げた。

「リッド様、それは何ですか? それに、今日はディアナだけじゃなく、ファラ様とアスナ殿。それに、サンドラ様までご一緒なんですね」

「うん。今日は、特別強化訓練を試してみたいんだ」

「特別強化……訓練?」

クロスがきょとんとする中、僕の後ろに控えるディアナとファラは「はぁ……」とため息吐き、サンドラは楽しそうに笑っている。

アスナは、どこか期待に満ちた眼差しだ。

特別強化訓練の閃きは、数日前に遡る。

先日、弐式と烈火を発動した僕は、魔力による負荷で疲弊してしまい、丸二日動けない状態になってしまった。

だけど、その状態から回復すると、以前よりも確実に弐式の扱いが上手くなり、魔力負荷に耐えられる体になっていたのだ。

ちなみに、弐式や烈火などの魔力負荷に耐えられる体造りの方法は、クロス曰く三つある。

一つ目は、年齢による身体的な成長。

二つ目は、体を鍛える。

三つ目は、魔力による負荷を体に馴染ませる。

つまり、前回寝込んでしまった時は、意図せずに二つ目と三つ目を行ったわけだ。

通常、魔力負荷で寝込んでしまうと、自然回復だけでは回復に時間が掛かる。

でも、バルディアには『魔力回復薬』があるんだ。

これを使わない手はない。

後で知ったことだけど、僕が丸一日寝ていた時もずっと『魔力回復薬』を摂取させていたらしい。

その時の僕は魘されていたらしいけどね。

この実体験とクロスから聞いた魔力に耐え得る体造りの方法に基づき、サンドラと考案したのが『特別強化訓練』というわけだ。

各々が様々な表情を浮かべる中、クロスに『特別強化訓練』の内容を語ると、彼の顔色が青ざめて引きつった。

「つまり……弐式を使って、魔力負荷を体に限界まで与える。その後、すぐに『魔力回復薬』の原液をがぶ飲みして休憩。落ち着いたら訓練再開。以上を繰り返すというわけですか?」

「うん。だから、魔力の回復効果の高い『原液』を持ってきたんだ。あと、何かあった時の備えとして、念のためサンドラにも来てもらったというわけなんだ」

「な、なるほど。ちなみに、ファラ様とアスナ殿はどうしてこちらに?」

「はぁ……私はリッド様が無茶をし過ぎないよう、ディアナさんと一緒にお目付け役として参りました」

「あぁ……そういうことですか」とクロスは合点がいったらしく頷いた。

この特別強化訓練については、父上にも事前に報告して了承を得ている。

勿論、当初は反対されたけど、強くなりたいと言う僕の熱意に父上が折れてくれたのだ。

ただその際、サンドラもその訓練に立ち会う事を条件に出された。

万が一に備えて、対応できるようにということである。

その後、ファラにも説明したんだけど「それなら、その訓練を行う時は絶対に私も立ち会います!」と言って譲らなかった。

そして、今に至るという訳だ。

「ただね。この訓練には一つだけ、懸念があるんだ」

「……なんでしょうか?」

眉をピクリとさせ、クロスは表情を曇らせる。

でも、そんな彼にあえて微笑んだ。

「僕の訓練に付き合ってもらう以上、クロスもあの『原液』を飲まないといけなくなると思う」

そう言って、魔力回復薬の原液が入った瓶箱を指差すと、改めてクロスを見据える。

「その覚悟をしてほしいんだ」

「……何故、薬を飲むのに覚悟が必要なのでしょう?」

怪訝そうに首を傾げる彼に対して、不敵に笑う。

「ふふ。それは飲めばわかるよ。でも、言っておくけど、クロスは断ることはできないからね」

「は、はぁ? まぁ、何にしてもライナー様の許可が取れているのであれば問題ないでしょう。では、リッド様とサンドラ様が考案した『特別強化訓練』をやってみましょう」

「うん。じゃあ、一緒に頑張ろう!」

弐式を発動させた僕とクロスは、限界近くまで魔力負荷を体を与えて『魔力回復薬』を飲んで休憩。

そして、再び訓練を行うと言う行為を繰り返した。

その結果、魔力負荷を短期間で体に馴染ませること成功する。

やはり、この訓練方法は間違いなかった。

大成功と言って良いだろう。

でもその代り、魔力回復薬の原液を飲むたびに、僕とクロスは悶絶することになった。

あまりの不味さに悶絶して原液が上手く飲めない時は、ファラが笑顔で僕達に容赦なく飲ませてくれたのは言うまでもない。

そんなファラの姿を目の当たりにしたクロスは、戦きながら僕に囁いた。

「リッド様。ファラ様は絶対に本気で怒らせたら駄目な方ですよ」

「あはは……そうだね。気を付けるよ」

こうして日々、クロスと『特別強化訓練』を行うようになったのである。