軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲撃事件の報告

宿舎の執務室での話し合いが終わると、皆と宿舎で拉致より救出されたトナージ達から聞き取りを行ったが、新たな情報は得られなかった。

その後、宿舎を出て襲撃事件の現場となった工房に立ち寄り、エレンとアレックスにも当時の状況を再確認する。

この際、エレンは拉致された子達が全員無事に救出されたことにとても感激していた。

「リッド様。皆を救って下さり、本当にありがとうございます」

「いやいや。僕にとっても、彼等はかけがえのない存在だからね。当然の事をしたまでさ。それに、木炭車・改は凄く助かったよ。ありがとう、エレン」

「はい。少しでもお役に立てて良かったです」

嬉しそうにするエレンとアレックスだけど、一つだけ言っておかなければならない。

「うん……でもね。木炭車を改造をする時は、次からはちゃんと報告してほしいかな。必要な予算も計上するからさ」

「あ、あはは……そうですね。申し訳ありません」

アレックスがそう言うと、二人はペコリと頭を下げた。

そして、襲撃時のことを改めて確認するが、やはり新しい情報は見当たらない。

しかし、二人は少し気になることがあると言う。

「……工房が無傷で破壊活動がなかった?」

聞き返すと、アレックスはコクリと頷いた。

「はい。尤も、襲撃犯が破壊目的ではありませんでした。技術者を拉致するという目的で忍び込んだ以上、当然と言えば当然なんですが……」

「ボクもそれが気になってるんですよね。今回のような襲撃を起こせば、警備は厳しくなります。それなのに、破壊工作は一切しなかったというのは何か別の目的に繋がっているような気がしないでもないんですよねぇ。まぁ、何か確証があるわけではないんですけど……」

「わかった。それも何かの手掛かりになるかも知れないから、また何か気付いたらどんなことでも教えてね」

「はい。畏まりました」

元気よく答えて会釈する二人と別れると、父上が待つ本屋敷に馬車で移動するのであった。

本屋敷に到着すると、ファラ達と共に皆で執務室を訪れた。

部屋では父上が難しい顔で書類を見つめていたけれど、僕達が入室すると視線をこちらに向ける。

「来たか。まぁ、座れ」

「はい。失礼します」

その言葉に従い、ファラと共にソファーに腰かけた。

ディアナ、カペラ、アスナも居るけれど、彼等はソファーには座らず壁を背にして控えている。

父上は確認していた書類をまとめ執務机の上に置くと席を立ち、僕達と机を挟んだ正面にあるソファーに移動するとゆっくり腰を下ろす。

それと合わせて、僕は口火を切った。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

「気にするな。それより、色々と大変だったようだが、拉致された者達は全員無事だったと聞いているぞ。良くやったな」

「ありがとうございます。しかし、私一人の力ではありません。ここにいる皆。そして、関係者各位のおかげです」

「うむ。その謙虚な気持ち、忘れてはならんぞ。皆もご苦労であった」

そう言うと、父上はこの場にいる皆を見渡した。

その中から、代表するようにファラがスッと頭を下げて会釈する。

すると、ディアナ達も頭を下げて敬礼した。

「とんでもないことです。御父様。私達もそれぞれにできることをした迄でございます」

「うむ」と感心した様子で相槌を打った父上は、こちらに視線を戻すと表情が険しくなった。

「さてと、それはそれとしてだ。お前達の口から直接色々と話を聞かせてもらうぞ」

「畏まりました」と頷くと、今回の襲撃事件について丁寧に説明していく。

襲撃犯達は事前にバルディア領内で緻密な情報収集を行っており、その情報を元に今回の襲撃を計画。

さらに情報収集と犯行時においては、狸人族や狐人族が扱える種族魔法の『化術』を使用した可能性が非常に高く、襲撃は奇襲的なものだった。

客観的に見て、バルディアの対応は遅れを取ってしまったと言わざるを得ない。

しかし、襲撃を受けた工房の対応は冷静だった。

怪我人や行方不明者の確認を迅速に行い、すぐに第二騎士団の情報局に連絡。

その情報はすぐに第一、第二騎士団に共有され追跡隊を編成。

街に視察中であった僕にもすぐに連絡が入ったことで、迅速な対応と連携ができた。

また同時期において、僕が視察中の街で偶然にも出会った狐人族のアーモンド、リーファ、リドリー、リックの四名から得た情報と助力により襲撃犯の動向を予測するに至る。

その後は、情報局のサルビアを通じて手配していた木炭車により追跡を開始。

程なくして襲撃犯と思われる狐人族の一団に追いつき、これと戦闘。

襲撃犯の頭目と思われる相手に苦戦するも、こちらの応援が駆け付け襲撃犯達は逃走。

敵戦力を考慮して深追いはせず、アリア率いる第一飛行小隊にて空より動向を監視したところ、襲撃犯は狐人族の領地内に入ったと思われる。

助力してくれた狐人族のアーモンド達にはもっと詳細を聞きたかったが、襲撃犯の逃走に伴う混乱に乗じて去ってしまう。

彼等と出会い、宿泊してたと思われる宿にも騎士団を派遣したがすでにもぬけの殻であったこと。

その上で、宿舎の執務室でファラ達と話していたことも伝えた。

「……以上が、今回の襲撃における主な内容と私達の考察になります」

「なるほど。襲撃犯の所属は狐人族の諜報員かそれにあたる何かしらの組織。その目的はバルディアの情報収集であり、今回の襲撃はあくまで『ついで』だったということだな?」

「はい。もしくは何か別の目的があったのではないかと。推測の域は出ませんが……」

歯切れ悪く答えると、室内には重々しい沈黙がおとずれる。

やがて、父上は難しい顔のままゆっくりと口を開いた。

「……実はな。襲撃の情報が挙がって間もなく、屋敷で不審人物が発見され、第一騎士団のネルス達が捕縛したのだ」

「な……⁉」と僕を含め皆が驚きの表情を浮かべる中、父上は淡々と話を続けた。

工房襲撃を耳にした父上は、第二騎士団の情報局を通じて即座に領内で警戒態勢を取るように通達。

それは本屋敷、新屋敷、宿舎などバルディアにとって重要となる場所も当然含まれた。

狐人族が『化術』を用いて潜伏している可能性も共有された中、屋敷近くにて『クッキー』の咆哮が響き渡ったそうだ。

そこに巡回中のネルス達が駆け付けたところ、バルディア家のメイドが武器を取り出し対峙していたらしい。

その状況から、何者かがメイドに化けていると判断したネルス達はクッキーと協力してメイドを捕縛したという。

「そんなことがあったんですね。それで、その捕縛したメイドというのは今どこにいるんですか?」

そう尋ねると、父上の眉間に皺が寄る。

「……死んだ」

「え……」その言葉に、この場にいる皆は息を吞んだ。