軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲撃犯の正体

襲撃犯に拉致された子供達を保護した後、彼等が乗せられていた荷台を乗って来た木炭車に連結。

護衛をクロスが率いる第一騎士団とラガードが率いる第二騎士団の第六分隊に任せ、僕達はカペラが運転する木炭車に乗り込み帰途に就いた。

宿舎に到着すると拉致された子供達は、ファラが手配していたメイド達に温かく迎えられる。

その際、安堵して緊張の糸が切れたのか、中には泣き出す子もいた。

だけど、幸いなことに今回の事件に巻き込まれた子供達に怪我はなく、行方不明者もいない。

ひとまず安心はしたけれど、事はそう単純な話ではなかった。

荷台から拉致された子達を下ろし終えた時、「リッド様」と声を掛けられる。

振り向くと、そこにはファラが微笑んでいた。アスナも彼女の傍に控えている。

「ご無事で何よりでした」

「ありがとう、ファラ。でも、襲撃犯は只者じゃなかったよ。それに、少し嫌な感じもするんだ」

「それは……どういうことでしょうか?」彼女は心配そうに首を傾げる。

「ここじゃ何だから、続きは執務室で話そうか」

そう言って宿舎の執務室に移動すると、自分自身で確認するようにファラとアスナに事の経緯を説明する。

また、彼女達からも宿舎での動きについての報告を受けた。

工房襲撃による当初の混乱はかなり激しかったようだが、カペラの的確な初期対応により関係各所にすぐに情報が伝達されたことで混乱はすぐに落ち着いたらしい。

同時進行で追尾隊など迅速な対応も行われており、僕のところにも通信魔法で連絡が届いたというわけだ。

それを引き継いだのがファラだった。

彼女は宿舎に戻るとすぐに、カペラから状況を確認。

そして、彼の力が僕に必要になると判断して業務を引き継ぐことを申し出たそうだ。

僕が要請していた木炭車とエレンの件でごたついていたこともあり、カペラは彼女の提案を受諾。

その後、ファラはしっかりと彼の代わりを果たし、情報伝達と的確な状況判断を下してくれていたようだ。

「そっか。色々頑張ってくれたんだね。本当にありがとう、ファラ」

「とんでもないことです、私にできることをしたまでのことです。それにしても、襲撃犯の一団がそれ程の強者だったとは驚きました」

「うん。バルディアに手を出すぐらいだから、ある程度は予想していたんだけどね。想像以上の相手だったよ……」

襲撃犯を統率していたのは狐人族のクレアという女性だった。

それが本名なのか仮名かはわからない。

ただ一つ言えるのは、彼女の前に僕は結果として手も足もでなかった。

もし、あの場にアーモンドがいなければどうなっていたかわからない。

それに、クレアは『遊び』と言っていたから、彼女は本気を出していないのだろう。

その上で、いずれもっと強い相手がいることを示唆していた。

今のままじゃ、自分自身もバルディアも守ることはできない。

すると、ファラが僕の手をぎゅっと力強く掴んだ。

「大丈夫ですよ。リッド様はどんな困難でも必ず乗り越えられます。今までもそうだったではありませんか。だから、今回もきっと打ち勝てるはずです。それに、私もお力になれるよう何でもお手伝い致します」

「ファラ……」

彼女の手は小さく柔らかいけど、とても温かい。

漠然とあった焦燥が不思議と収まり、心が安らいでいくのを感じる。

気付けば、ぽうと彼女を見つめていた。

「それとも……私ではお力になれませんか?」

ファラはそう言うと、耳が下がりシュンと俯いてしまう。

慌てて首を横に振った。

「い、いや、そんなことはないよ。すごく心強くて……その、見惚れていたというかなんというか」

「え……」今度はファラの頬と赤く染まり耳が少しパタパタと上下し始める。だが、彼女はすぐにハッと

すると、その耳を抑えて俯いてしまう。

「もう……リッド様はいつも不意打ちです」

「あはは……」

彼女との微笑ましいやり取りに、重苦しい雰囲気が急に明るくなった気がする。

でも、ファラの言う通り、することは今までと変わらない。

どんな悪が襲いこようが大切なものを守る為、困難に立ち向かう為に力が必要なら己を磨くしかないんだ。

「ありがとう、ファラ。君のおかげで気持ちが落ち着いたよ」

「は、はい?」

きょとんとする彼女に微笑み掛けた後、ディアナとカペラに声を掛けた。

「ねぇ、二人が相手をしたリーリエとローゼンはどんな印象を受けた? もし何か気になることがあれば、何でも言って欲しい」

「そうですね。私が相手をした『ローゼン』というのは……」

ディアナは思い返すように呟いた後、眉間に皺を寄せて嫌悪感を露わにした。

ちょっと怖い。

「一言で言い表すなら……『ませたクソガキ』ですね」

「……どういうこと?」

彼女らしからぬ突然の暴言に、皆はきょとんとしてしまう。

しかし、カペラだけはうんうんと頷いている。

程なくすると、ディアナはハッとして咳払いした。

「失礼しました。目上と異性に対する礼儀が微塵もなく、口も悪くて無礼極まりない。その他すべての言動が人の神経を逆なでしてきて、実に癇に障る狐人族でございました。あの者に比べれば、ここに来た当初のオヴェリアやミアがまだ礼儀正しいと思えるほどでございます」

「……そうなんだね」

それは『ませたクソガキ』をより具体的な言葉にしただけでは? と思ったがあえて突っ込みはしなかった。

「リッド様。私からもよろしいでしょうか?」

「うん。カペラも何か気になることがあったの?」

彼は淡々とした表情のまま頷いた。

「はい。私が相手をしたリーリエという少女ですが、言動に対する評価はディアナさんと概ね変わりません。ですが、彼女が私を見て『私達と同じ雰囲気がする』と言ったことが気になります」

「ふむ……」と相槌を打つと、目を瞑り思案する。

クレア、リーリエ、ローゼンが僕達と最初に向かい合った時、確かに『リーリエ』という少女がそんなことを言っていた気がするな。

それにしても、カペラとリーリエ達が同じ雰囲気だって? カペラとあの二人じゃ、性格も言動も全然違うのに……とその時、脳裏に電流が走った。

「そうか……雰囲気が似ているというのはそういう意味か」

カペラに確認するように問いかけると、彼はコクリと頷いた。

「はい。リッド様がお察しの通り、おそらく今回の襲撃犯の正体は単なる盗賊団や傭兵でもありません」

「……狐人族に所属する諜報機関かそれと同等の組織の可能性が高い、ということだね」

導き出した考察を口にすると、皆の表情は途端に険しくなった。