軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強者の警告

「……⁉ わかった。じゃあ、それでいこう」

「ありがとう、じゃあ、お願いね」

提案にアーモンドが頷き、改めてクレアを見据えると、今度は彼が先に彼女に向かって駆けだした。

「ふふ……次は何をして楽しませてくれるのかしら?」

「さあね!」

アーモンドとクレアが対峙すると、二人共獣化していることもありその動きは凄まじく激戦となっている。

そんな彼の援護を行いつつ、魔力を溜めていく。

そう、クレアを一撃で倒すためのとっておきだ。

それから程なくして、魔力が溜まったことを視線でアーモンドに伝える。

すると彼はコクリと頷き、力を振り絞るようにさらに攻撃の勢いを増していく。

「はぁああああああ!」

「とっても激しくて素敵ね。でも、そんなに飛ばしたら後が持たなくなるわよ?」

クレアは余裕の笑みを浮かべつつアーモンドの攻勢を受け流していく。

そして、アーモンドが大ぶりで攻撃を繰り出そうとしたその時、その隙を突くように彼女が攻勢に転じた。

「ほらね、飛ばし過ぎて攻撃が雑になってるわ」

だが、アーモンドはほくそ笑んで叫んだ。

「今だ、リッド!」

その瞬間、アーモンドは身を翻して僕と入れ替わる。

突然のことにクレアは「な……⁉」と驚き、警戒して一瞬動きが止まる。

その隙に圧縮しながら溜めていた魔法を発動する。

「これで決める。十全魔槍集約・螺旋槍!」

その瞬間、全属性の魔槍が混ざり合い螺旋を描く巨大な魔槍がクレアの腹部に解き放たれる。

『螺旋槍』は、鉢巻戦で偶然にも『十全魔槍大車輪』が一本の槍となった現象を密かに研究して編み出したものだ。

その威力は僕の扱う魔法では最大と言って良い。

彼女は咄嗟に魔障壁を展開するが、すぐにハッとした。

「こ、これは……魔障壁が耐え切れない……⁉」

その言葉と共に、辺りには魔障壁が砕け散った透明で高い音が鳴り響く。

そして、螺旋槍に巻き込まれ、押し飛ばされるクレアの絶叫が轟いた。

「あぁあああああああああああああ⁉」

「全開だぁあああああ!」

僕はさらに魔力を込めていき、螺旋槍の出力を上げていく。

やがて、螺旋槍はクレアを押し飛ばしたまま岩にぶつかり爆発。

辺りには爆音が轟き土煙が舞った。

一連を傍で目の当たりにしていたアーモンドは「す……すごい……」と唖然としている。

「はぁ……はぁ……どうだ……少しは思い知ったかい。僕の怒りをさ……」

クレアが吹き飛んだ先に向かって吐き捨てるが、魔力を一気に使った反動により全身の力が抜けてしまい、思わず片膝を突いた。

アーモンドがハッとして駆け寄ってくる。

「リッド! 大丈夫かい⁉」

「え……? あぁ、うん。魔力を一気に使った反動だね。大丈夫だよ……」

そう答えつつ、僕はズボンのポケットに手を入れて小さな袋を取り出した。

そして、袋の中にある錠剤を何個か掌の上に乗せると口の中に放り込んだ。

「それは?」とアーモンドが心配そうに首を傾げる。

「ちょっとした栄養剤さ。水で飲み込まないと激マズだけどね」

「エイヨウザイ?」

きょとんとするアーモンドだけど、詳細はさすがに言えない。

錠剤の正体……それは『魔力回復薬』だからだ。

念のために携帯していたものだけどね。

まさか、襲撃犯がここまでの手練れとは予想外だった。

だけど、これで終わり……そう思った時、凄まじい魔力と気配を感じてハッとする。

そしてすぐに、身構えると目の前で舞う土煙の中にいるであろう『彼女』を睨んだ。

「あはは。あんな隠し玉を持っていたとはね。今のは少し痛かったわ。それに、お遊びのつもりだったのに……本気にさせられちゃったわねぇ」

土煙の中から出て来たクレアの姿を見て、僕とアーモンドは目を瞬いた。

彼女の尻尾の数は六本となり、容姿も白狐から銀色に輝く銀狐となっていたからだ。

「……今までは言葉通り、お遊びだったというわけか」

「みたいだね。銀狐相手となると、さすがに僕達だけでは厳しいよ。どうする、リッド?」

アーモンドがそう言ってをこちらを一瞥する。

先程の魔法が通じていないとなれば、今できることは応援が到着することのを待つしかない。

「時間を稼ぐ……今はそれしかない……!」

「わかった。やれるとこまでやってみよう!」

声を掛け合うと、二人で一気にクレアとの距離を詰めて再び連携で攻勢をかけた。

しかし、銀狐となったクレアは難なくその攻勢を躱して、受け流していく。

やがて、アーモンドの攻撃を躱すと同時に反撃を繰り出した。

「貴方は少し邪魔ね。あっちに行ってなさい」

「な……ぐぁあああ⁉」

「アーモンド!」

彼女に至近距離で魔法を発動されてしまい、彼は少し離れたところに飛ばされてしまう。

「よそ見している暇はないわよ。坊や」

「……⁉ くそ!」と吐き捨て、クレアに立ち向かうがまるで歯が立たない。

その内、隙を突かれてしまい彼女は左手で僕の喉元を掴んで持ち上げた。

「ぐ……くそ……離せ⁉」

「ふふ、良いわね。ここまで楽しませてくれた相手は久しぶりよ。まだこんなに小さいのにねぇ。やっぱり、私は貴方のこと気に入ったわ」

「な、何をす……んん⁉」

あまりに突然かつ予想外の出来事に、目を白黒させた。

クレアは自身の唇を重ねてきたのだ。

「んんん⁉」と必死に抵抗するが、どうにもならない。

程なくすると気が済んだのか、クレアは舌なめずりをしながら唇を離した。

「うふふ……そんなに嫌がらなくても良いじゃない」

「ふ……ふざけるな……⁉」

怒りを露わにしたその時、クレアが遠くを見つめてフッと笑った。

「残念だけどお遊びの時間はここまでね。じゃあね、リッド」

彼女はそう言うと僕を投げ飛ばした。

「ぐぁあああ!」

「リッド!」

アーモンドが僕を両腕で受け止めると、怪しく目を細めたクレアは声を張り上げた。

「ローゼン、リーリエ。遊びはここまで、引き上げるわよ」

「畏まりました!」

返事と共に二人が集うと、クレアは僕を見据えて怪しく微笑んだ。

「じゃあ、今日はこれで失礼するわ。あと、リッドには一つ良いことを教えてあげる。いずれ近いうち、貴方は私よりもっと強い相手ときっと出会うわ。その人は私のように優しくはないの。だから……死なないように頑張ってね」

「な……⁉」と驚愕した瞬間、クレア達を中心に辺りが白い霧に包まれていく。

おそらくこれも、クレア達の魔法だろう。

そう思っていると、霧の中から馬の走る音がこちらに近付いてくる。

すると、アーモンドがおもむろに言った。

「じゃあ、リッド。僕も君とはここでお別れだ」

「……! そうはいかないよ。君にはまだ聞きたいことが沢山あるんだ」

そう言って彼の手を掴もうとした時、「アーモンド様。お手を!」という声と共に馬が僕と彼の間に割って入って来た。

「ぐ……その声はリックか⁉ アーモンド!」

「すまない、リッド。君とまた会う機会があれば、その時こそ色々と話そう!」

彼はそう叫ぶと、馬の足音と共に去っていった。