軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

危機と出会い

「はわぁ。リッド様、バルディアの町はとても賑やかですね。それに、街の造りもレナルーテと違っていて面白いです」

「ふふ、喜んでもらえて良かったよ。でも、以前はここも小さい町に過ぎなくて、人の行き交いはこんなに多くなかったんだ」

「え、そうなんですか?」

小首を傾げるファラに、バルディアのとある街の中を歩きながらここ数年の出来事を改めて説明する。

今日は、ファラと一緒にバルディアの街に出向いていた。護衛のディアナとアスナも後ろに控えている。

なお、僕を含めて皆の服装は正体がわかりにくいように普段より質素だ。

最近はレナルーテからダークエルフの人達が多く観光に訪れているから、ファラとアスナの耳は隠していないけどね。

街の様子を見に来た目的は、定期的な視察。

そして最近、バルディアのあちこちで起きている問題について調べるためだ。

帝都で両陛下に献上した『化粧水』『甘酒』『懐中時計』以外にも、バルディアでは様々な日用品が制作されている。

獣人族の子達や僕の氷の属性魔法を用いた簡易冷蔵倉庫もあるから食材も豊富だ。

でも、そんな製品や食材を狙った者達が、商人達から略奪してバルストやズベーラに持ち込む事件が最近多発している。

第一騎士団や第二騎士団の活躍もあり、彼等のほとんどはすぐに摘発はされているけど、組織的に動いて摘発を逃れている者達も一部存在していた。

そこで、少しでも何か情報を得られればと、定期的にバルディア領内にある街をあちこち視察するようにしたわけだ。

ファラと来たのは、以前からバルディア領の町並みに彼女が興味を持っていたこと。

そして、いつも第二騎士団に関する事務仕事を手伝ってくれているお礼と気晴らしを兼ねて、一緒に出掛けようと誘ったのである。

彼女は、その際とても喜んでくれた。

どこからか話を聞きつけたメルも、街に一緒に行きたいと言い出した時は大変だったけどね。

さすがに連れて来れず、彼女は宿舎でお留守番をしている。

だけど、かなり膨れていたからティスや第二騎士団の子達と訓練で暴れているかもしれない。

「……というわけで、エリアス陛下。義理父様がバルディアと結んでくれた協定。それと、クリスティ商会の力が大きいという感じなんだ」

説明が終わると、ファラは感嘆した様子で頷いた。

「そうなんですね。でも。その発想や着想を想像だけで終わらせず、ここまで形にしたのはリッド様です。ですから、やっぱりすごいのはリッド様ですよ」

「そ、そうかな?」と照れ隠しするように頬を掻いたその時、携帯していた『通信魔法の受信機』から鼠人族のサルビアの声が聞こえて来た。

「リッド様、リッド様。緊急事態です。聞こえましたら応答願います」

緊急事態……その言葉が周囲に聞こえると、皆の表情が強張った。

僕はすぐに深呼吸をして通信魔法を発動する。

「こちらリッド。サルビア、緊急事態というのはどういうこと?」

すると、すぐに受信機から返事が聞こえて来る。

「第二騎士団が管理する工房の一つが何者かに襲撃されたようです。また、怪我人の他、狐人族の数名が行方不明となっており、拉致された可能性が高いと思われます」

「……⁉ それで、襲撃犯の足取りはどうなっているの。アリア達、航空隊はなんて?」

「それが、襲撃犯は航空隊の動きを理解していたらしく煙幕を張り、一斉に五組に別れて違う方向に逃走したようです。その内、二組だけは航空隊が追尾している状態です」

「な……⁉」

サルビアの返事に思わず驚愕した。

航空隊からの監視を防ぐ対策を行った計画的な犯行である。

これは、ただの野盗が行うような動きじゃない。

何かしら組織的な……それこそ、訓練された軍事的行動だ。

少し思案した後、再び通信魔法を発動する。

「わかった。領内にいる第二騎士団の全員にすぐに緊急事態が発生したことを通知。それぞれの位置確認と、怪しい動きをするものがいたらすぐに報告するように。それから、アリア達航空隊をバルストやズベーラの国境付近に急ぎ向かうように指示をお願い。父上には僕から連絡する」

「畏まりました。では、一旦通信を終了します」

通信が終わり、深呼吸をしているとファラが心配そうにこちらを見つめていた。

「リッド様、大丈夫ですか?」

「うん。でも、残念だけど視察は終わりだね。ファラ、悪いけど君には宿舎に戻ってサルビア達と合流して欲しい。彼女達だけだと判断が難しい場合があるだろうけど、僕の代理として君が居れば問題ないとおもう」

「……! わかりました。リッド様のお役に立てるよう努めます」

「ありがとう」

そう言って、決意に満ちたファラに微笑み掛けると視線をアスナに移す。

「アスナ。相手は正体不明の輩だけど、おそらく組織に所属して訓練を受けた者達の可能性が高い。ファラが狙われる可能性もあるから気を付けてほしい」

「畏まりました。では、姫様。急ぎ参りましょう」

「えぇ」

アスナは会釈すると、ファラと共に宿舎に向かって移動を開始する。

彼女達を見送りながら、通信魔法を使用。

父上に状況を報告した。

父上は雷の属性素質を持っていないから直接的な会話はできない。

でも、通信魔法が使える鼠人族の子が傍にいるから問題なく情報伝達は可能だ。

「……状況は把握した。こちらも緊急事態としてすぐに対応する。それと一時的に、リッド様にはライナー様と同等の権限を与えるとのことです」

「畏まりました。新たな情報が確認でき次第、すぐに対応します。以上で通信を終わります」

通信魔法を終了すると、思わず「ふぅ……」と息を吐いた。

「リッド様、大丈夫ですか?」

「え、うん。ありがとう。でも、どこの輩だろうとバルディアに手を出したこと……絶対に後悔させてやらないといけないね」

怒りを抑えつつ答えると、ディアナが僕の顔を見ながらごくりと息を飲んだ。

その時、遠目に狐人族の耳と尻尾が見えてハッとした僕は思わず駆け出した。

「すみません! ちょっと、良いですか?」

声を掛けると、数人いた狐人族の中で僕と同じくらいの男の子がこちらに振り向いた。

「……? なんでしょうか?」

彼は綺麗な黄色い髪と整った顔立ちをしており、頭には狐耳も生えている。

間違いなく狐人族の少年だ。

しかし、僕の知る第二騎士団の子ではない。

「あ……申し訳ない。ちょっと人違いだったみたいです」

「人違い……ですか。ここで狐人族の僕を誰かを間違えるなんて、ひょっとして第二騎士団かバルディア家と所縁の方ですか?」

鋭い指摘に思わず、目を見張ると彼は笑みを溢した。

「はは、不躾にすみません。僕はズベーラの狐人族の領地で商会をしている……『アーモンド』というものです。もし、お困りなら何かお力になれるかもしれません。良ければ、事情を聞かせてくれませんか?」

アーモンドと名乗った彼はそう言うと、こちらを真っすぐに見据える。