軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい魔法の名前

アリア達に新しい魔法の可能性を見せてもらい、合わせてその魔法を教えてもらった僕はふと気になったことを彼女に尋ねる。

「ねぇ、アリア。この魔法名はなんていうのかな?」

「魔法名? 知らないよ。私達は感覚で使えるもん」

ふむ、魔法名が無いのか。

今後、色々な魔法を扱っていくことを考えると『魔法名』はあった方が良い。

僕は思案顔で俯いて少し考えると呟いた。

「そうだな……この魔法名は『電界』にしよっか」

「でんかい? なんか変な名前~」

「聞いたことない、変な響きです」

「……お兄って、ちょっと変わっている?」

アリア達は僕が付けた魔法名にきょとんしながら、中々に鋭利な感想を言って来る。

勿論、魔法名に意味はあるが、この場で説明するとややこしいので僕は彼女達に「あはは……」と苦笑するのであった。

ちなみに、ディアナは表情が変化することはなかったが小声で「電界……か」と呟いていた気がする。

魔法名が決まると同時に、アリア達が何かに気付いたようで宿舎のある方角に振り向く。

それと、合わせてアリアが、妹二人に楽しそうに問い掛けた。

「誰か来るね。皆で当てっこしよっか‼ これは……マーシオだね」

「む……いえ、レオナです」

「……ニーナだ」

三人は楽し気にしているが、やっていることは凄い。

僕も、早速覚えた『電界』を使ってみるが、周辺にいる皆のことがわかる程度だ。

とてもこちらに向かっている人物の感覚まではわからない。

ふと、ディアナを見ると彼女も試しているようで、うーんと難しい表情を浮かべている。

それから間もなく、僕達の居る場所に一人のメイドが走ってやってきた。

「はぁはぁ……んん‼ リッド様、カペラ様がご相談があり宿舎の執務室まで来て頂きたいとのことでございます」

「わかった、すぐに戻るよ。マーシオ、教えに来てくれてありがとう」

僕達の目の前にやってきたのは、アリアの予想通りマーシオだった。

アリアは勝ち誇り、残りの二人は悔しそうな面持ちをしている。

ふと、ディアナを見ると彼女も何気に悔しそうな表情をしているようだ。

どうやら、彼女も誰が来るか予想して外れてしまったらしい。

その時、マーシオがアリア達に気付いて声を掛けた。

「あれ、アリアとエリア、シリアじゃないですか。宿舎に居ないと思ったら、皆ここに居たんですね」

彼女の何気ない言葉に、三人は驚いた表情を浮かべて代表するようにアリアが答える。

「マーシオさん……私達の違いがわかるの?」

「え? それはわかりますよ。いくらあなた達が似ている姉妹と言っても、よく見ればそんなのわかりますからね。あ、悪い事をして替え玉とかしてもすぐにバレますから、駄目ですよ」

「……⁉ えへへ、そうだよね。私達、みんな違うもんね……マーシオさん大好き‼」

「私も大好きです‼」

「……うん、大好き」

アリア達は、メイドのマーシオが名前と顔をしっかり覚えてくれていたことがよほど嬉しかったようだ。

三人同時にマーシオに抱きつくと、顔を彼女のメイド服にうずめて、猫のようにスリスリしている。

「えぇ、と、突然、どうしたんですか……?」

「ふふ、マーシオが名前と顔を覚えてくれていたのが嬉しかったんだよ」

困惑した様子のマーシオに、僕が笑みを浮かべて答えた。

アリア達は今まで過ごした環境からすれば、名前と顔を覚えていてくれるだけでも嬉しいのだろう。

すると、彼女はきょとんとした顔を浮かべる。

「なんですか、それ? そんなの当たり前です。こんなに皆違うのに……見分けがつかないわけ、ないじゃないですか」

アリア達は彼女の言葉で、さらに嬉しそうな笑みを浮かべて力強く彼女に抱きついている。

マーシオはその意図がわからずにひたすら困惑しているようだ。

そんな、彼女達の微笑ましい光景を、僕は笑みを浮かべながら見ているのであった。

宿舎に帰ってくると、僕はアリア達とマーシオと別れてディアナと二人で執務室に向かった。

僕は執務室の前に辿り着くとドアを開け、室内にいるカペラに向かって声を発した。

「カペラ、お待たせ……ってあれ、シェリルも居たんだね」

部屋に入ると、ソファーで白い耳をピクっとさせたシェリルがスッと立ち上がり、僕に一礼する。

カペラは会釈をすると、シェリルを一瞥してから僕に視線を移した。

「はい、実は彼女からのある申し出がありまして、その判断を伺いたく御足労をお願いした次第です」

「そうなんだね。それで、シェリルの申し出はどういったものなの?」

答えながら、シェリルがいる場所の正面にあるソファーに歩いて近寄り僕は腰を下ろす。

同時に、シェリルにソファーに座るように促した。

彼女はおずおずと腰を下ろすと、視線を僕に向ける。

「実は、獣人族だけで一度、『鉢巻戦』について話し合いの場を設けたいのです。つきまして、会議室をお借り出来ないかと……」

「あれ……なんだ、そんなこと? なら、使ってもらっても問題ないよ」

僕は彼女の申し出に拍子抜けしたような感じで答える。

その様子を見たカペラが補足するように声を発した。

「リッド様。僭越ながら、獣人族の子供達だけで打ち合わせさせることは、リスクもございます。もう少々慎重に考えるべきと存じます」

「リスクね……」

彼の言わんとしていることもわからなくはない。

『鉢巻戦』において何か仕掛けてきたり、他にも何か色々と策を練ったりするということだろう。

でも、折角の機会だし、どうせやるなら彼らに最高の条件を与えて、返り討ちにするのも一興だ。

それこそ、完膚なきまでに。

僕は、父上のように眉間に皺を寄せながら視線をシェリルに移す。

「シェリル、ちなみに宿舎において獣人族の子供達の様子はどうかな?」

「は、はい。私も含めてそうですが、こんなに良い環境で過ごしたことがないので概ね、皆喜んでいるみたいです。勿論、中には家族のことを思い泣いている子もいますが、直に落ち着くと思います」

「なるほどね」

僕は口元に手を添えながら少し俯いた。

やはり、環境を整えておいた影響はかなり強いようだ。

あえてシェリルに聞いたけど、メイド達からも問題が起きたという報告はほとんどない。

それは、獣人族の子供達がこの環境の良さに魅了されていると言ってもいいだろう。

なら、会議をしたとしても大きな問題にはなりにくいはずだ。

それに、シェリル、ノワール、アリア達と、僕にある程度の信頼を寄せてくれた子達もいるから、恐らく大丈夫だろう。

僕は、顔を上げてシェリルに視線を向けた。

「うん……会議室は使ってもらって大丈夫。だけど、最低でも会議室の前に騎士達を立たせてもらうよ。それから、あまりにおかしい方向に話が行きそうなときは教えて、その時はこちらも対処があるからね」

「はい。では、会議の内容が纏まりましたらご報告させて頂きます」

シェリルは頷いて返事をするが、僕は首を横に振ってから答える。

「報告は問題がある時だけでいいよ。獣人族の皆が立てる作戦を楽しみにしているからさ。シェリルもそのつもりでね。君達の本気を見てみたいからさ」

「……畏まりました。獣人族として、リッド様に全力をお見せ致します」

僕の言葉に、彼女は目を丸くするが、すぐに畏まった表情に切り替えて答えた。

そんな彼女の様子に僕はニコリと微笑んだ。

「ふふ、その調子でよろしくね。じゃあ、会議室については許可を出すから、後はカペラと騎士達の指示に従ってね」

「はい。ありがとうございます」

その後、シェリルに狐人族のノワールと鳥人族のアリアの事を伝え、もし何かあれば彼女達も協力してくれるだろうと簡単に説明する。

シェリルは、彼女以外で僕に協力者がいることに少し驚きの表情を浮かべるが「確認しておきます」と頷いていた。

「リッド様、では私はこれにて失礼致します」

「うん、会議頑張ってね」

シェリルは僕にペコリと一礼すると、執務室を後にした。

すると、やりとりをずっと見ていたカペラがおもむろに話しかけて来た。

「本当に、話し合いをさせてもよろしいのですか?」

「うん、でも覚悟の上さ。彼らが何も言い訳が出来ない状態にして勝たないと意味がないからね」

彼の心配もわかるが、ここで怖気づくわけにはいかない。

僕はカペラに力強い視線を向ける。

その時、ディアナが小声で呟いた。

「……リッド様。僭越ながら、アリア達のような『魔法』を他の獣人族が扱えないとも限りません。油断はなさらぬようご注意ください」

「そうだね……でもさ、それはそれで楽しみにしているんだよね」

僕が目を輝かせながら答えると、ディアナは額に手を添えて呆れ顔となり、小さなため息を吐くのであった。