軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

宿舎にて

「それで、これはどういう状況かな?」

宿舎に戻って来ると、なんと入口の前に手足をロープで縛られて身動きがとれないようにされた獣人族の少女達が集められていた。

そこには、オッドアイでディアナを『メイドのおばちゃん』呼ばわりした猫人族の少女。

他にも、兎人族のオヴェリアと名乗った少女もいる。

彼女達を一瞥すると、オッドアイの少女はそっぽを向いて、オヴェリアは俯いた。

「ふん……」

「……嫌いなんだ……濡れるのは」

二人の言動を見たディアナは眉を顰めるが、少女達の側にいたネルスが苦笑しながら、僕の問いかけに答えた。

「いやぁ、彼女達は中々に元気過ぎましてね。メイド達の手に余るみたいです」

「どういうこと?」

ネルスは少し呆れた面持ちで、状況の説明を始める。

宿舎の最初の受け入れ作業は、獣人族の子達に湯浴みさせることだった。

これに関しては、段取り確認の時に全員から指摘された事でもある。

まず、彼らが止む無く、そして確実に不衛生であることはクリスやエマ、ダイナスなど様々な人達の共通認識だった。

スラム街に住んでいた可能性の高い子供達なので、当然と言えば当然だ。

その為、彼等の髪にはシラミもいるだろうし、体の垢も凄いわけだ。

そんな状態で放置して彼らが宿舎の中を移動、各部屋のベッドで寝ては、その後の清掃が大変なことになる。

そこで、クッキーが掘り当ててくれた『温泉』と『天然石鹸ムクロジの実』の出番というわけだ。

彼らが到着した後は、まず温泉で体と髪を隅々まで綺麗にする。

でも、獣人族の子供達は『温泉』というものを知らなかったらしい。

さらに、彼らにとっては『濡れる』という事は体が冷え、風邪などの病に直結するもの。

生活の中で医者や栄養のある食事をとれない彼らにとっては、忌むべきことで、受け入れ難かったらしい。

その結果、メイド達がお風呂に入れようとしたら激しく抵抗したそうだ。

一応、彼らの自尊心も鑑みて、湯浴みについては同性で対応するよう事前に決めている。

その為、男の子は暴れても騎士達が見張る形で問題はなかったが、一部の少女達はそうはいかなかったようだ。

だが、湯浴みさせられないと、宿舎内には置いておけない。

その為、暴れないように手足を縛って入口に集められたようだ。

ちなみに、宿舎の周りは騎士達で囲まれているので、仮に温泉から逃げてもすぐに捕まえられるようにしている。

ネルスの説明を一通り聞いた僕は、少女達には失礼ながら笑ってしまった。

「あっははははは‼ はぁ……可笑しい。なるほどねぇ、それは気付かなかったよ。ディアナ、悪いけど、この子達の湯浴みを手伝ってあげて」

「承知しました。では……まず小生意気な『野良猫』から綺麗に致しましょう」

彼女は、ニヤリと笑みを浮かべて、オッドアイの少女を見下ろしていた。

やっぱり、『おばちゃん』呼ばわりされた事を根に持っているみたい。

しかし、彼女の視線に戦きはしたが、オッドアイの少女も負けん気で声を荒げる。

「だ、誰が、『野良猫』だ‼ この、クソババア‼ 俺にはミアって名前があんだよ‼」

「……ほう。威勢の良い、減らず口ですね。ですが……」

少女の暴言にディアナは冷静に答えた……途中まで。

彼女はどこからともなく、暗器の短剣を取り出し、右手で逆手に持つ。

そして、残った左手でミアの喉元を押さえて、その場に押し倒した。

手足を縛られているミアは為すすべもない。

その動きは一瞬であり、その場に居る者は皆呆気に取られる。

だが、一番驚愕したのは押し倒されたミアだろう。

少女は、押し倒された勢いで地面に軽く頭をぶつけた。

「ぐぁ……⁉ な、なに…すん……だ……」

ミアは一瞬の事で何が起きたか分からなかったようだ。しかし、ディアナの雰囲気がガラッと変わったことで、少女の表情は凍てついた。