軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話 初心者向け異界:辛口 その2 罠と宝箱

「……ストップ! 罠がある!」

「はい!」

最初のフロアで採取を終え、二つ目のフロアに入りかけたところで、正樹が鋭く制止する。

正樹に制止されて佑梨が足を止めたタイミングで、そのまま進んでいれば直撃したであろう位置に大きなヤシの実っぽく見える何かが落ちてくる。

「……危なあ……」

「あれ、当たってたら痛いですみませんでしたよね……」

「場合によっては、死に戻ってたかも……」

地面にめり込んでいる不確定名ヤシの実を見て、青ざめながらそう言いあう正樹と佑梨。

地面にめり込むほどの威力なので、どれだけ楽観的に予想しても、軽傷で済むとは思えない。

それでも、佑梨に関しては致命傷でなければ時間経過で完治しそうなので、精神的な問題さえクリアできればさほど問題ないかもしれない。

だが、正樹のほうは、ダメージを軽減する能力も回復する能力も一切強化されていない、一般的な地球人類である。

否、日本という環境に甘やかされている点を考えれば、むしろ地球人類の中で見ても貧弱なほうかもしれない。

なので、ちょっとしたケガならともかく、重傷に関しては現状、正樹は可能な限り避ける必要があるのだ。

「いきなりかなり殺意の高い罠が仕掛けてあったし、ここから先は本気で注意しないとだめっぽい」

「そうですね」

いくら辛口とはいえ、初心者向けとは思えないほどの威力の罠を見て、気を引き締めなおす二人。

まだ二つ目のフロアですでにこれだ。

この先、どんなえげつない罠が出るか分かったものではない。

「足元とか、大丈夫そうですか?」

「多分、大丈夫」

佑梨に問われて罠探知に全神経を集中し、しっかり地面を確認してそう結論を出す正樹。

習得したてのジョブで行う罠探知なので極めて信用できないが、少なくとも先ほどのヤシの実ほどはっきりとした罠の気配は感じない。

それどころか、もしかしてと思うようなおぼろげな気配すら感じ取れないので、恐らくそんな大それた罠はないだろう。

「気配のほうはどうですか?」

「動くものの気配は感じられないよ」

「そうですか。では、慎重に採取を進めましょう」

正樹の報告を受け、目星をつけていた一番近い採取ポイントへと進んでいく佑梨。

互いに人柄ではなく技量が信用できないこともあって、安全確認を済ませてもなお、動きは慎重すぎるほど慎重である。

もっとも、探知の難易度自体はちゃんと初心者向けだったようで、少なくとも最初の採取ポイントまでは特に問題なく到着する。

「……さっきと同じタイプの薬草ですね。同じものしかないんでしょうか?」

「一応初心者向けだし、まだ二つ目のフロアだからね。もともと採取できるものが三種類ぐらいしかないんじゃないかと思うから、ほぼほぼ同じものばかりになると思う」

「そうなんですか?」

「ゲームを参考にしてるから絶対ではないけど、採取システムがあるゲームだと、一つのエリアで採取できるのは三種類から五種類っていうのが多いかな」

「へえ。そんなに何個もゲームをしてないので、そんなものだとは思いませんでした」

「絶対ではないけどね。例えば錬金術師が主人公のゲームだと、錬金術で物を作るのがメインになるからか、最初のフィールドでも十種以上普通に採取できたりするし」

「なるほど」

正樹の解説に、感心して何度もうなずく佑梨。

実際のところゲームの採取システムは作品によって千差万別で、そもそも採取ポイントの見た目が同じだからと言って、同じアイテムが採取できるかどうかすら作品次第だったりする。

作品によっては初期マップの一番最初にある採取ポイントで、ゲーム中の全ての採取アイテムをランダムで入手できるなんて設定になっていることすらある。

また、正樹の言う三から五種類というのは、アイテムの入手が売買とモンスターからのドロップが主要となっているタイプの、採取や生産のシステムがおまけ程度に組み込まれているタイプのゲームの相場だ。

とはいえ、大体のゲームにおいて、チュートリアルの延長線上にある最初のフィールドマップで、そんな多様な採取アイテムは設定されていないというのは事実でもあるが。

「まあ、採取の有無に関係なく、チュートリアル近辺で手に入るアイテムの種類なんて、装備品込みでも大した数にはならないのが普通かな」

「そういえば、ソシャゲの類でも、最初のほうってそんなにたくさんの種類のアイテムはもらえませんよね」

「だね。多分だけど、最初からあれもこれもってなっても把握できなくなるから、基本的に進行に合わせていろいろ増やしてるんだと思うよ」

「そうですね。ただ、異界もその法則に従っているんでしょうか?」

「分からないけど、一応初心者向けってことだから、そのあたりはお約束を踏襲してくれてるんじゃないかな?」

などと言いながら、先ほどのフロアと同じ草の採取を進める佑梨とそれを見守る正樹。

一応罠については警戒している正樹だが、ジョブの習得が完了した今、さすがにこの距離で見落とすほどスキルの効果は低くない。

もっと言うと、佑梨のほうも超再生の習得が終わっているため、採取の際に手を切る程度は痛みを感じて何秒も経たずに跡形もなく治ってしまう。

なので、気を抜いてはいないが、危機感は一切なかったりする。

「……さっき採れたのと同じものですね」

「ちゃんと見た目通りだったか」

採取できた薬草のメモリーを見て、二人してうなずきあう。

フロアが変わったとたんに同じ見た目の草から違うものが採れる、というゲームあるあるの現象は、少なくとも今回は起こらなかったようだ。

「えっと、で、それで四つ目だっけ?」

「はい。あと一つで、一泊二食付きの宿泊権限はもらえますね」

「そっか。さすがに、あと一つなら大丈夫そうだよね」

「ですね。さっきは失敗もありましたけど、そろそろ薬草は大丈夫そうです」

命から言われたお使いの内容を思い出し、周囲を見渡してさすがに大丈夫だろうと判断する正樹と佑梨。

最初のフロアでは採取ポイントが五カ所あり、うち二カ所で佑梨が失敗していた。

今回のフロアは十カ所以上あるので、先ほどと同じく四割失敗だとしても十分な数は手に入る。

「拠点周りの他の事にも使えそうですし、できるだけたくさん確保したいですね」

「だね」

そう言いながら、慎重な足取りで次のポイントに向かう。

フラグ満載の会話とは裏腹に、その後三カ所は薬草の採取は順調に進む。

トラブルが起こったのは、入ってすぐの採取ポイントから数えて五カ所目の事だった。

「……相沢さん、気を付けて。なんかちょっとおかしい」

「……罠ですか?」

「……微妙なところ。ヤシの実が落ちてきたときみたいに、明確に罠って感じはしない。どっちかっていうと、最初に相沢さんが手を切った時の感覚に近い」

「ということは、採取の最中に何か起こるかも、っていうことですね」

「うん。というか、もしかしたらこれ、見た目がよく似てるだけで薬草の採取ポイントじゃないのかもしれない」

正樹の警告を受け、じっくり慎重に、かつ真剣に草を観察する佑梨。

そろそろ慣れてきたとはいえ相変わらず直視するのがきついぐらいにグロテスクな見た目と、風もないのに怪しくうねうね動く挙動は変わっていない。

グロテスクすぎて些細な違いなど分からないこともあり、正直先ほどまでと同じものにしか見えない。

観察しても分からないので、覚悟を決めて採取のために手を伸ばす。

根元をつかんで引っこ抜くために力を入れた瞬間、佑梨の右足に何かが絡みつく。

「えっ? きゃあ!?」

油断していたわけではないものの、足元までは気を配っていなかった佑梨は、思いっきり足を引っ張られて盛大にひっくり返る。

そのまま、半ば吊り上げられかけたところで、

「相沢さん!」

とっさに正樹が、佑梨の足首に巻き付いた何かをつかみ、全体重をかけて引きちぎる。

ギリギリ背中が地面から離れる前に引きちぎれたため、どうにか佑梨が危険な落ち方をするのは避けられる。

「だ、大丈夫?」

「大丈夫ですけど……」

心配そうな正樹にそう応えつつ、自身の状態を確認する佑梨。

超再生の影響か、ダメージのほうはあってないようなものだ。

が、さすがに足を吊られて下半身は完全に地面から浮き、もう少しで宙吊りになるというところまで行ったのだ。

服装、それもスカートはなかなかにあられもない状態になっていた。

「……あの、やっぱり見えました?」

「……ごめん、とっさだったからそんなに意識しては見てないけど、さすがに全然見えてないとは言えない……」

「ですよね……」

正直な正樹の答えに、真っ赤になりながらそう応じる佑梨。

どう言う反射神経か、とっさにスカートの前を押さえたのでもろ出し状態にはなっていないものの、後ろ側が完全にめくれあがっていたこともあって全く見えていないとは口が裂けても言えない状態だ。

自分の失敗が原因なので、さすがにこれについて正樹を責める気は一切ない佑梨だが、それと恥ずかしいこととは別問題である。

「……あ、あの、喜多村さん。今回はわたしのミスなので、そんなに気にしないでください」

「……そんな顔で言われても……」

「ごめんなさい。喜多村さんが悪いとは一切思ってませんが、それはそれとしてやっぱり見られたのは恥ずかしいので……」

「……だよね……」

何とも気まずい感じで、お互い何となく目をそらす佑梨と正樹。

根本的には佑梨のミスとはいえ、罠察知に観察に直感と気が付くための能力をだいぶ盛られていながら阻止できなかった正樹も全く責任がないとはいいがたい。

その結果が怪我こそしなかったものの、あまりよろしくない種類のエロトラブルである。

佑梨が小学生であることも考えると、そりゃあもう気まずい。

「……とりあえず、採取を続けますね」

「……うん、頑張って」

気まずさに耐えられなくなって、中断していた採取作業に戻る佑梨。

正樹のほうも、これ以上話を蒸し返さないために、今度こそ事前に阻止すべく観察に集中する。

いかに技量がまだ追いついていないとはいえ、ここまでしっかり注意を払って作業していれば毎回失敗するわけもなく、次は無事に採取に成功する。

「……毒消し草、だそうです」

「……種類が違ったかあ……」

「正直、むしる前の草は、どこに違いがあるのか分かりません……」

入手したアイテムを見て、渋い顔をする佑梨と正樹。

正直、むしる前の草は観察スキルと直感アビリティの力を借りても違いらしい違いなど分からず、しいて言えば揺れ方やうごめき方が微妙に違う程度だった。

それとて毎回全然違う動きをしているのだから、普通の感性では違いのうちに含めないだろう。

「……というかこの場合、別の種類と考えるより、ランダムで採れるものが変わると思ったほうがいいかもしれない……」

「……そうですね。ただ、それはそれで厄介というか面倒というか……」

正樹の予測に、佑梨の顔がさらに渋くなる。

同じ採取スポットでも毎回違うものが採れるとなると、あと一つ足りない状態がずっと続くかもしれない。

それだけなら回数勝負でいいとしても、採取をミスった際の挙動もランダムとなると対処が難しい。

それに、回数勝負に関しても、正樹の主人公補正セットがどれぐらい悪さをするかが読めないのがつらい。

この仕様で妖怪イチタリナイにひたすら粘着されるのは、正直ごめんこうむりたい。

「まあ、ここでうだうだ言っててもしょうがない。次行ってみよう」

「はい」

あまり気が進まない顔でそう提案してくる正樹に、同じような顔で同意する佑梨。

先ほどの気まずい空気は、完全にどこかへ行ってしまっている。

その後、三つほどの採取スポットで採取を済ませ、薬草一つと毒消し草二つという成果を得たところで、新たに悩ましいものを発見する。

「どう見ても宝箱だね……」

「宝箱ですね……」

先ほどまで何もなかったはずのフロアの中央に、今までずっとここにありましたよと言う感じで立派な宝箱が出現していたのだ。

「イチタリナイは今回大丈夫だったけど、次は怪しげな宝箱ときたか……」

「無視しますか?」

「正直、感情的には非常に無視したい。でも、今後宝箱を開けないとだめってこともあるだろうから、今のうちに練習しておいたほうがいいんじゃないかってのが……」

「練習ですか?」

「罠チェックと、解除できない場合の開け方の練習」

「やっぱり、罠があるんですか」

「うん。罠がある気配がビンビンに……」

難しい顔で宝箱をにらみながら、そんな話をする正樹と佑梨。

辛口とはいえ所詮は初心者向け異界なので、宝箱の罠を感知するのは簡単だ。

問題は、キャンパーは罠の発見能力は高いのだが、足元に生えた草を縛ったトラップのようないわゆる自然罠以外だと種類を特定するのが苦手で、解除するための能力はほぼ持っていないという点である。

キャンパーなので当然と言えば当然なのだが、罠があると分かっていて解除できないというのは結構なストレスだ。

「……罠があると分かるだけまし、と割り切るしかないか?」

「ですね。多分喜多村さんが罠を見つけてなかったら、深く考えずに勢いで開けてたかもですし」

「それは思った。じゃあ、一応頑張って罠チェックをやってみる」

「はい、お願いします」

「もしかしたら、薬草と毒消し草のお世話になるかもだけど……」

「アイテムは使ってなんぼです。わたしのジョブ熟練度にもなるので、遠慮なくチャレンジしてください」

「了解、ありがとう」

佑梨の言葉を受け、覚悟を決めて宝箱をチェックする正樹。

初心者向け異界ゆえか、不向きなキャンパーでも罠の種類と構造は何とか理解できる。

「罠は毒針らしい。鍵はかかってないから開けるのは問題ない。鍵穴から針が飛び出してくる仕掛けだから、正面に立たなければ大丈夫なはず」

「じゃあ、念のために離れておきますね」

「うん」

佑梨が十分に離れたのを見て、宝箱の後ろに回って蓋の側面をつかみ、後ろに体重をかけるやり方で宝箱を開ける。

やたら重い蓋が浮き上がったところで、ぱしゅっと気の抜けた音とともに毒針が撃ち出される。

こんな簡単な対処で大丈夫なのかと思うほどあっさり罠を回避でき、逆に不信感で身構えてしまう正樹。

が、何度も言うように、今回は辛口とはいえ初心者向け異界だ。

誰も斥候系ジョブや罠関係のスキルを持っていないことも想定される異界なので、罠もその程度でしかない。

むしろ、最初に発見できる宝箱に罠がかかっていること自体が、この異界が辛口である点だと言えよう。

「さて、中身は……」

「メモリーが二つ、ですね」

「こんな立派な箱なのにショボいと見るべきか、それとも序盤の宝箱に二つもアイテムが入ってたと見るべきか……」

「とりあえず、私のクラスメイトで一番小さい子が入れる大きさの宝箱なのに、中身がこのサイズのメモリーチップが二つだけっていうのはかなりシュールです」

「それは思った」

入っていたアメイジングメモリーを取り出しながら、そんな感想を口にする正樹と佑梨。

採取アイテムがメモリーに化けたことを考えれば、宝箱の中身がアメイジングメモリーなのは何の不思議もない。

が、箱が大きくて立派なだけに、中身がしょぼく見えてしょうがない。

「……とりあえず、メモリーの分配を考えましょうか」

「そうだね」

「普通に考えれば、ひとつづつ分けるのがいいんでしょうけど、ここはいったん喜多村さんが両方持って行ってください」

「えっ?」

メモリーの分配に関して、とても意外なことを言い出す佑梨。

その言葉に、思わず驚いて佑梨の顔をまじまじと見つめてしまう正樹。

「さっきのヤシの実の時に思ったんですけど、喜多村さんの防御面があまりにも脆そうでちょっと怖いんです」

「……うん、まあ、そうかも」

「それで、喜多村さんの防御面が少しでも底上げできるまで、全部喜多村さんに集中させたほうがいいと思いまして」

「……本当にいいの?」

「むしろ、わたしのためにそうしてください」

「……じゃあ、お言葉に甘えて。ただ、消費アイテムだったら相沢さんに譲るよ」

「それはお願いします」

佑梨の申し出を受け、メモリーを二つとも自分のフリーソケットに挿しこむ正樹。

幸か不幸か、今回はスキルとアビリティが一つずつであった。

「スキルとアビリティだった」

「喜多村さんの生存能力につながるものだといいんですけど……」

「こればかりは、挿してみないと分からないんだよなあ……」

「早く、鑑定が欲しいですよね」

「本当にね……」

佑梨の言葉にそうぼやき交じりに同意しながら、メモリーを自身のアビリティとスキルにセットする正樹。

メモリーの正体は、ある意味で期待通り、ある意味では期待外れであった。

「不屈アビリティと苦痛耐性スキルらしい」

「どういうものですか?」

「不屈は、即死するようなダメージを受けても確定で一度は死なずに済むらしい。未習得状態だと二十四時間に一回だけ、習得してからは確定枠が十二時間に一度になるっぽい」

「確定枠、ですか?」

「うん。習得後は十二時間に一度、確定で死亡を瀕死状態で踏みとどまって、それ以降アビリティのレベルに応じた確率で生き残り続けるらしい。後、十二時間っていうのもレベルに応じて徐々に短くなっていくっぽい」

「それ、とても重要なアビリティではないですか?」

「うん。ただ、腕がもげたりしたら生えてきたりつながったりはしないし、寿命をはじめどうやっても死亡確定する状態だと、そもそも発動しないらしい」

「……考えてみれば、当たり前の話ですね。でも、それを踏まえてもすごく強力で重要なアビリティですよね」

「それは間違いなくそう」

正樹の説明を聞き、そのすごさに感心する佑梨。

不屈はいわゆる即死攻撃やオーバーキルダメージをHP1で踏みとどまる系のアビリティだ。

これ系が強力で重要なのは、多くのゲームで証明されている。

しかも、ゲームでよくある一戦闘一回だけとかHP1では発動しないとかではなく、確定発動に再使用時間こそあるものの一回目は確定発動、二回目以降は確率発動という不安定さはあるが発動条件が非常に緩い仕様だ。

鍛えるのは難しそうだが、今後生命線となりうるアビリティである。

とはいえ、現実では瀕死状態で生き延びてもまともに行動などできないので、大抵はHP1でも行動に制限がかからないゲームほど強力かと言うと、現時点では何とも言えないところである。

「それで、もう一つの苦痛耐性だけど、シンプルに痛みとか体調の悪さとか精神的なあれこれとかの苦痛に強くなる。強くなるだけで原因をなくしたり苦痛そのものを無効化したりできるわけじゃないから、かなり注意が必要な感じ」

「耐えられるからって、無茶しがちになるってことですか?」

「多分?」

「だったら、どうしようもない時以外は、頑張ってわたしが止めますね」

「……うん、頼りにしてるよ」

苦痛耐性の微妙さと危険要素を理解し、即座にそう宣言する佑梨。

悪いものではないというか、今後異界攻略に置いて痛みや極度の不快感を我慢して普通に動けるというのは重要な要素ではある。

が、あくまで苦痛に強くなるだけで、苦痛の原因自体は解消されないというのが問題だ。

何が問題と言って、これが佑梨なら超再生とはいい意味で相性が抜群だが、正樹が覚えた不屈とは悪い意味で相性が抜群すぎるのである。

今の時点ではそこまで気にしなくてもいいが、いずれ正樹は瀕死の状態で体が崩壊するのもかまわずにゾンビアタック的なことができるようになってしまう。

それは、どう考えてもいいことではないだろう。

「さて、宝箱の中身はこれで終わりとして、このフロアはもうこれ以上何もないかな?」

「そうですね。多分大丈夫です」

「じゃあ、次行ってみよう」

「今日のところは、時間的にも次のフロアで終わりでしょうね」

「だね」

いつの間にか日が落ちつつある空を見て、今日この後の予定をそう決める正樹と佑梨。

なんだかんだで、今のところまだ順調に異界の攻略は進むのであった。