軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3話 ステータス画面

「じゃあ、ステータス画面が見られるようになったことだし、次にいこっか~」

アビリティソケットからチップが消えたのを見て、命がそう宣言する。

「ステータス画面を見ながら、何かするんですよね?」

「うん。でもまあ、実のところ、ステータスが見れなくても今からやることは同じなんだけどね~。という訳で、ついてきてね~」

正樹の確認にそう言うと、社務所を出ていく命。その後をついていく正樹と佑梨。

命が向かったのは、おみくじなどを売っている受札所であった。

「じゃあ、くじを引いてね~」

そう言って、おみくじが入った筒を差し出してくる命。

命に言われて、素直に筒を振ってひっくり返し、出てきたくじを渡す正樹。

「えっと、四十九番っと~。はい、このメモリーをソケットに挿してね~」

番号が書かれた引き出しを開け、中に入っていた五つのアメイジングメモリーを取り出して正樹に渡す命。

「えっ? あの、これ?」

「いわゆるチュートリアルの配布品よ~。これを迷い込んだ人たちに渡すのも、私の仕事なのよ~」

戸惑う正樹に、メタい上に身も蓋もないことを言う命。

命がソシャゲで言うところのガイドキャラの役目をしていることは薄々察していたが、本人の口からそのあたりを連想させることを言われると妙な気分になってくる。

「あの、わたしたちとしては非常にありがたいのですが、命さんやこの神社にとってメリットはあるのでしょうか?」

「まあ、いろいろと~? そのうち一つは、すぐに分かるから安心してね~」

「は、はあ……」

佑梨の至極もっともな質問に対し、そんなはぐらかすような答えを返す命。

そのまま、佑梨のくじを受け取って番号を確認し、引き出しを開けてメモリーを取り出す。

「じゃあ、それ挿したらステータス画面見ながら~、今後のアドバイスをするね~。まずは、ステータス画面を私が見られるように表示してね~」

命の要求にこたえ、見せたくない部分を消しながら全員に見えるようにステータス画面を表示する正樹と佑梨。

何気に二人とも、アビリティに突っ込みどころ満載のものが表示されていた。

「まずは相沢さん、何気に私の同類だったみたいね~」

「うっすらとそんな気はしてましたけど、ステータス画面にはっきり出てくるほどだとは思ってませんでした……」

「霊視に霊感、霊能と全部そろってるのは、今どき珍しいわね~。しかもちゃっかり霊能系と神力に対する才能まで持ってるし~」

「あんまり役に立ったことってないんですけどね……」

「まあ、今どきはそうね~。これで予言とか神託とかのアビリティを持ってたらまた別なんだけどね~」

命の言葉に苦笑する佑梨。

なんと佑梨は、おおよそ霊能者と呼ばれる人間が持っているであろうアビリティを、三つとも持っていたのだ。

ちなみにこっそり「成長の才能・体格体形(やや弱め)」などという、どういう意味かによっていろいろ変わりそうなタレントも持っているが、さすがに男子の前で突っ込まない程度には命もデリカシーがあるようだ。

なお、アビリティと違ってスキルのほうは、「礼儀作法」と「学力:中学一年生相当」に「護身術:初級」の三つだけ。

イメージ通りで内容が少々優秀という程度で、特筆すべきものは持っていなかった。

「それで引いたメモリーが、クラスとジョブは回復のアイテムユーザー、アビリティが超再生と回復強化、スキルが植物知識ね~。巫女とかシスターとかの聖職者系じゃないのが意外だったわ~。現状、使うアイテムがないのがネックだけど、そこさえクリアすれば優秀な編成よね~」

「そのアイテムをどうすればいいのかが、とてつもなく大問題だと思うのですが……」

「まあ、そこはどうにかなるわよ~。今回の異界は、ルール違反さえしなければチュートリアル的な内容しかないし~」

「……本当に、大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫~。心が折れない限りは、絶対に生きて帰れるわよ~」

「それが不穏で不安なのですが……」

平気で物騒なことを言う命に、思わずジト目を向ける佑梨。

そんな佑梨を無視して、正樹のほうを向く命。

「で、喜多村君は喜多村君で、面白いアビリティ構成になってるわね~」

「なんなんですか、この悪運と貧乏くじってアビリティ……」

「私たちの間では主人公補正セットって呼ばれてるタイプの一つね~」

自身が持つあからさまに運がなさそうなアビリティのセットに、顔をしかめる正樹。

そんな正樹に対し、にこにこ笑いながらありがたいのかどうか分からないことを言ってくる命。

「貧乏くじは損な役割とか厄介ごとを招き寄せるアビリティ、悪運はひどい目にあいやすい代わりにひどい目にあった時に大きなリターンをもらえるアビリティね~。貧乏くじだけだとマイナスしかないけど~、悪運と一緒なら相乗効果でより素晴らしいリターンをもらえるようになるのよ~」

「ああ、それで喜多川さんのアビリティが主人公補正セット……」

「そうそう~。物語の主人公って、大体そういう感じでしょ~?」

命の説明を聞き、納得してうなずく佑梨。

物語の主人公、それもヒロイックサーガの類において、大いなる試練と偉大な宝や大きな成長というのは必須項目と言える。

それにより、特に突出した才能を持たないどこにでもいるような少年が、最終的に偉大な英雄となる物語は古今東西いくらでもある人気コンテンツの一つだ。

正樹の場合は貧乏くじと悪運以外にアビリティはなく、スキルも「学力:中学卒業程度」という、普通の高校生なら持っていて当然のものしかない。

なので、もろに平凡な少年が試練を乗り越えて英雄となる系の主人公そのものになってしまっている。

「いくら報酬がもらえるって言っても、僕みたいな普通の子供に試練を与えようとするのやめてほしい……」

「でも、なんとなく身に覚えはあるんでしょ~?」

「そりゃまあ、こんなところにいますし……」

「それに悪運はひどい目にあいやすくなる代わりに非常に死ににくくなるから~、安心して試練に突っ込んでいってね~」

「何の慰めにもなってませんよ、それ……」

気楽な様子でひどいことを言う命に、ジト目で突っ込みを入れる正樹。

そう簡単には死ねないからこそ情け容赦ない試練が襲い掛かるという、悪運が持つ本質を正確に嗅ぎ取ったようだ。

「で、引いたメモリーは、クラスが斥候でジョブがキャンパー、直感アビリティと観察スキル、タレントが成長の才能・全般(極)ね~。アビリティとタレントがまた、主人公補正っぽいわね~」

「キャンパーってなんですか、キャンパーって……」

「キャンパーは野営の達人よ~。斥候系ジョブが共通でもつ罠探知と気配探知スキルのほか、どこでもテントが出せたり料理経験がなくてもキャンプ料理が出来たりと、便利系の能力がたくさんあるわね~」

「……で、今回の異界攻略には、役立ちますか?」

「罠と気配の探知は役立つというか、多分必須ね~。まあ、そもそもクラスもジョブも未習得状態だと斥候系の場合、罠探知と気配探知しか使えないけど~」

「それって、ジョブを習得できても、キャンパーだと大した差はないっていうことじゃ……?」

「まあ、薄々感じてるとは思うけど~、キャンパーって高レベルのものをサブで持つ分には神ジョブだけど~、間違ってもメインにするには向いてないのよね~」

だろうなとしか言いようがない説明で、正樹に止めを刺す命。

異界の攻略にどんな能力が必要かは分からないが、聞いている限りキャンパーと自身のスキルやアビリティの組み合わせでは、探知関係以外ありとあらゆる要素が足りていないはずである。

「わたしのジョブも、あまりメインで強いとか便利だって感じはしませんし、本当に先行き不安ですよね……」

「ちなみに、回復クラスとアイテムユーザーも、未収得状態だと共通スキルの応急手当てしかできないから注意してね~」

「それ以前に、アイテムがないんですけど……」

命の補足説明に、むう、という表情でぼやく佑梨。

応急手当てが無意味だとは言わない、どころか現状ではかなり有用で重要なスキルなのは間違いないが、それを使い込んでジョブを習得したとして、使えるアイテムがなければ何も変わらない。

よほど潤沢にアイテムが手に入る環境でない限り、能力的にはキャンパーのほうがましな気がしてならない。

「便利能力特化っぽいキャンパーと、アイテムがなきゃただの人でしかないアイテムユーザーの組み合わせって、どうなんでしょうね……」

「正直不安でしょうがないけど、現状どうにもならないっぽいよね……」

「本来は、ここで私がそういうのをフォローするんだけどね~。喜多村君の主人公補正セットを見ると、下手に強化とかできない感じなんだよね~」

佑梨と正樹の嘆きに、困った顔でそう告げる命。

なぜと言いそうになり、主人公補正セットの性質を思い出して言葉に詰まる正樹。

「もしかしてですけど、下手にジョブとかアビリティで強化すると、よりきつい試練が発生しそう、とかですか?」

「まあ、そんなところね~。正確には、ドロップアイテムとかで自力で手に入れないとね~、試練がきつくなって報酬が悪くなることがあるのよ~」

「えっ? じゃあ、今貰ったのは……」

「今回のは、スタートラインに立つための正式な前払い報酬みたいなものだからね~。しかも手に入ったのがメイン向けじゃないジョブと、きつい試練を超えろと言わんばかりのアビリティだからね~」

「ああ、むしろこの結果自体、主人公補正の影響かもしれないわけですか……」

言葉に詰まった正樹の代わりに、命が言いたいことを確認する佑梨。

佑梨に問われ、自身の推測も含めて答える命。

「なのでまあ~、私が二人に渡せる援助は、詰み防止の役には立っても直接的には攻略の役に立たないものしかないかなあ、って~」

そう言いながら、またしても懐からアメイジングメモリーを取り出す命。

取り出したメモリーを、二人に手渡す。

「えっと、これは?」

「ヘルプ機能のエクストラメモリーよ~」

「「ヘルプ機能??」」

「鑑定やステータス画面じゃ分からない、ルールとかシステム的なあれこれを教えてくれるようになるメモリーよ~。これはセットするとすぐ習得状態になるわ~」

そういって、さっさとメモリーをセットするように態度で促してくる命。

命に促され、エクストラソケットにメモリーを挿す正樹と佑梨。

命が言ったように、メモリーはエクストラソケットに挿入された瞬間に消える。

「後は鑑定アビリティを覚えれば、知識面は大体何とかなると思うわ~」

「逆に、鑑定だとだめだったんですか?」

「二人の構成的にね~、鑑定でアイテムやメモリーの詳細が分かるより先に、システムとかルールとかの知識が必要かなって思ったのよ~。それに、ヘルプ機能はね~、ステータス画面との組み合わせで真価を発揮するのよね~」

佑梨に聞かれ、ヘルプ機能を渡した理由をそう答える命。

もっとも、理由の八割は言った通りではあるが、二割ほどはソケットに挿すまで正体が分からなくて右往左往したほうがいいのではないかという、なかなかにひどい考えがあっての事だったりする。

「それにしても、ステータス画面はアビリティなのに、ヘルプ機能はエクストラなのか……」

「その境界線が分かりませんよね~……」

「そのあたりはヘルプにも出てこないから~、正直誰にも分からないのよね~。まあ、多分、ステータス画面はアメイジングソケットの設定画面と同じものだから、とかそういう感じなんでしょうね~」

命の推測に、そういうものなのだろうかと疑問に思ってしまう正樹と佑梨。

とはいえ、別にスキルでよさそうな鑑定がアビリティだったり、鑑定アビリティがあるのにわざわざ知識スキルがあったりと、割とアバウトな感じがするのは確かだ。

このアメイジングソケットというシステムを作った何者かは、カテゴリー分類をそんなに厳密に考えてはいないのは間違いなさそうである。

「じゃあ、仕様周りの細かい説明は後でヘルプを見てもらうとして~、最後に二人にとって一番重要な、拠点と固定パーティについて教えておくね~」

「……固定パーティって、わたしと喜多村さんがそうなるってことですか?」

「そうそう。割と珍しいことなんだけど~、全く縁がない人間が同時に同じ異界に迷い込んだ場合、固定パーティとして扱われるのよ~。一度固定パーティになっちゃうとね~、今回の異界をクリアした後、固定パーティの誰かが別の異界に迷い込んだ時に他のメンバーも強制的に異界に引きずり込まれるのよ~」

「「ええ!?」」

「で、その話とも関連するけどね~、二人とも、今後異界に迷い込んだ時は~、ここ神代神社異界分社が異界攻略の拠点になるのよ~」

「あっ、じゃあ、完全に知らないところに飛ばされて呆然とする、みたいなことは避けられるんですね」

「それは、とても助かります。必ずここに来るというのもそうですけど、よく考えると固定パーティもわたし一人で異界に放り出されずに済むのはありがたいですし」

「まあ、相沢さんの場合、喜多村君に巻き込まれるパターンのほうが多そうだけどね~」

「うっ」

命の厳しい一言に、言葉に詰まってしまう正樹。

そんなことないと言うには、悪運と貧乏くじのセットは強力すぎる。

「で、拠点についてなんだけどね~、対価を払うことでいろんなことができるのよ~」

「さっき、ちらっと言ってたご飯の事とかですか?」

「ええ、そうよ~。ただ、その対価は日本円とか現金の類じゃなくてね~、例えば私の頼みごとを聞いたり、異界で得たアイテムや資源を持ち込んだりで支払うのよ~」

正樹の主人公補正セットについて話しているときりがない、ということで、拠点システムの説明を進める命。

その話を聞き、真っ先に食事の時の話を思い出す佑梨。

「まあ、ご飯ぐらいだったら、私の気分次第で無料にしてもいいんだけどね~。寝床とか加護、消耗品とかの類は、さすがに手順を踏んで対価を払ってもらわないとだめなのよ~」

「それはまあ、分ります。でもその対価って、僕達に支払えるものなんでしょうか?」

「ものによりけりね~。寝床やお風呂の使用権なんかは、一回分ならちょっとしたお手伝いやどこの異界でも手に入るアイテムで済むけどね~。これが無制限になるとちょっと面倒になるし~、デスペナルティの軽減とか死に戻り不可能な異界で死に戻りできるようにする加護とかだと大分厳しいし~」

「えっ? どんな異界でも、死に戻りできるようになったりするんですか?」

「ええ~。できるだけ早めにもらっておいたほうがいい加護ね~。ただ、死に戻りができるのは異界だけで、現実世界では死んだらそれっきりだから~、うかつなことをしちゃだめよ~?」

「いやまあ、僕達だって死にたいわけでは……」

命にくぎを刺され、しどろもどろになりながら言い訳する正樹。

少しだけ、命が指摘したようなことを考えていたのだ。

わざわざ釘を刺してくるあたり、恐らく命が面倒を見た誰かが、異界で死に戻るようなノリで危険なことをして死んだのだろう。

「拠点関係もステータスの一部だから、持ってる加護や解放した権限、今受けてる依頼に解放に必要な条件なんかもわかるわよ~」

「なんか、そこまで行くとステータス画面というよりメニュー画面のような……」

「わたしもそこまでゲームをやるわけじゃないですけど、ステータスというには幅が広すぎるような……」

「あくまで情報を表示するだけだからね~。表示内容の増減以外、何かを決定したり変更したりできるわけじゃないから~、メニュー画面じゃなくてステータス画面なんだと思うよ~」

ステータスの一言でくくっていいのか分からないほど多彩な表示内容に、思わず突っ込まざるを得ない正樹と佑梨。

それに対し、一応違いを主張する命。

もっとも、この機能がステータス画面だろうがメニュー画面だろうが、用途は変わらないのでどうでもいいと言えばいいのだが。

「という訳で、この場で最後のチュートリアルね~。私から三つ、依頼を出すわね~。一つ、異界に入って戻ってくること。報酬は一泊二食入浴付きの宿泊権限ね~。二つ、リストを渡すから~、指定のアイテムを持って帰ってきてね~。報酬として、加護か権限を一つ解放するわ~。で、三つ目が二つ目の報酬とは別に、何か加護か権限を解放すること。報酬はジョブとアビリティのソケットを一個追加ね~」

「……大盤振る舞いですね」

「チュートリアルだもの~。でも、一泊二食入浴付きの宿泊権限は、元から簡単に手に入るアイテムを合計で十個とか、その程度でもらえるわ~」

あまりに都合がいい内容に、警戒をあらわにする佑梨。

そんな佑梨に、あっけらかんと言い切る命。

「他の依頼に関してはチュートリアルが終わってから提示するわ~。という訳で、行ってらっしゃ~い」

「「あっ、はい」」

これで話は終わり、と言わんばかりににこやかに言う命の圧に負け、声をそろえて返事をして境内を出ていく正樹と佑梨。

こうして、少年少女の初めての異界攻略は、謎の巫女さんのチュートリアルに従う形でなんとなく始まってしまうのであった。