軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

隠し階層

ポイズンラプトルがいなくなったところで俺たちはポイズンラプトルたちから素材を剥ぎ取る。

身体の汚れが気になるが素材は鮮度が重要なので後回しだ。

魔石はもちろんのこと爪と牙は武器に加工できる。

皮は革細工に内臓は薬の材料にもなるため、ポイズンラプトルの素材は非常にいい小遣い稼ぎになるのだ。

「お疲れ様。随分汚れちゃったわね。私が魔法で洗ってあげましょうか?」

ボスも含め、あらかたポイズンラプトルの素材を採取したところでエリシアがやってくる。

「いや、その前に毒沼で気になるところがあったから調べてみてもいいか?」

「毒沼の中で?」

エリシアが怪訝な顔を浮かべる中、俺はズンズンと毒沼に入っていく。

ボスとの戦闘で吹き飛ばされた場所にいくと、さっきと同じように硬質な何かがあった。

「そこに何かあるの?」

そう尋ねるエリシアは風を纏って宙に浮いていた。

前に見せてくれた精霊魔法だろう。

「なんか妙に硬いものがあるんだよ」

試しに拳で叩いてみると、ゴンゴンッと明らかに金属質な音がした。

「過去に探索した冒険者の鎧とか?」

「怖いこと言うなよ。鎧とかっていうよりかは金属の板とかそんな感じな気がする」

「ちょっと風で毒沼を散らしみてもいいかしら?」

「ああ」

実際のこの目で見てみないことにはわからないので、その場から少し離れてみる。

エリシアが精霊の力を借りて突風を起こすと、その中心地では水分が退いていき、分厚い金属板のようなものが露わになった。

「なにこれ?」

「地下扉じゃねえか? 取っ手みてえな窪みがあるしよ」

「いや、それはわかるけど、どうして毒沼の中にこんな扉が……?」

「隠し扉ってやつじゃねか?」

迷宮には隠し部屋や隠し領域という奴がある。

これもそれと同じでここの下には何か領域が広がっているのじゃないだろうか。

「まずは魔法的な仕掛けがないか確認ね。間違えても迂闊に触れるなんてことは――」

「あ、すまん。触っちまった」

エリシアが忠告する前に俺は既に地下扉を触ってしまっていた。

「すまん。だけど、取っ手を触っただけで他には何も――おわっ!?」

弁明しようとすると地下扉が急にひとりでに開き、謎の吸引力によって俺の身体が引き込まれた。

真っ暗な狭い通路を落ちていく。

「おわあああああっ!」

「もう! 言わんこっちゃないわよ!」

吸い込まれたのは俺だけじゃなく、近くにいたエリシアも巻き込まれてしまったようで絶叫が響いていた。

ひょっとしてまた奈落のような場所に落とされるのではないか。

だとすれば高所からの落下に備えなければならない。

そう思っていたのだがすぐに地面らしきものが見えてきた。

想像以上の早い地面に俺は体勢を整えることができず無様な着地を決めた。

俺の上にはエリシアがいるわけで、着地することに失敗した彼女は俺の背中へと落ちてきた。。

「ぐえええっ!」

衝撃で呻き声が漏れてしまう。

下敷きになったミノタウロスの気持ちがわかるようだった。

本当にあのミノタウロスには感謝だ。

「ごめんなさい! 大丈夫!?」

「重いから早くどいてくれ」

「乙女に向かって重いとは失礼ね!」

正直な気持ちを述べると、エリシアは憤慨しながらも背中から速やかに退いてくれた。

「なにも見えないから灯りをつけるわ」

エリシアはそう言うと、光精霊を呼び出して周囲を照らした。

起き上がって周囲を見渡すと、石造りの広大な広間が広がっている。

「……ここはどこかしら?」

「二十六階層には潜ったことがあるが、こんな場所は見たことがねえな」

二十六階層を隅々まで探索したわけではないが、そもそも二十五階層より先は沼地となっている。

それと比べてここは階層の雰囲気があまりにも違っていた。

「隠し階層?」

「毒沼の中にあった地下扉だ。そういう場所であってもおかしくはねえな」

普通の冒険者なら毒沼に入ろうなどとは思わないし、入っても毒液の中を探ることはない。

誰も入ったことのない場所なのは確かだろう。

「なあ、俺たちの落ちてきた扉が綺麗に消えてねえか?」

天井を見てみると、俺たちの落ちてきた穴がすっかりと無くなっていた。

そこに扉なんて元からありませんでしたよと言わんばかりに。

「こういった隠し階層ではよくある仕掛けよ。前に進んで出口を探すしかないわ」

取っ手を掴んだだけで中へ引き込む不思議なギミックだ。入り口が消えるような仕掛けがあってもおかしくないか。

元の場所に戻ることは諦め、俺たちは広間の中を警戒して進んでみると、不意に唸り声のようなものが聞こえた。

エリシアが慌てて光精霊を前方に飛ばしてみると、そこには巨大な竜が鎮座していた。

毒々しい紫の鱗に覆われており、頭にはねじくれた角が生えている。

見上げるほどの威容は二十メートルを越えるだろう。横幅も通常の魔物の何十倍とある。

瘴気竜バジリスタ

LV75

体力:524

筋力:445

頑強:422

魔力:377

精神:365

俊敏:201

スキル:【猛毒牙】【猛毒爪】【暗視】【威圧】【瘴気無効】【毒無効】【麻痺耐性(中)】【火耐性(中)】【雷耐性】【土耐性】【龍鱗】【猛毒針】【瘴気の波動】【土魔法の理】【闇魔法の理】【闇耐性】【石化耐性】【腐食耐性】

お伽話や絵本で登場するような伝説の存在。そいつが今目の前にいた。

今まで出会った魔物の中で最強と言っていいだろう。

「……エリシア、やべえぞ。こいつのレベル75だ」

「75!? そんなのこんな迷宮にいていいレベルじゃないわよ!?」

鑑定してみると、今までの魔物の中でもぶっちぎりのレベルとステータス。

俺たちのステータスの一・五倍、あるいは二倍以上のステータスがある。

ユニークスキルこそないものの他のスキルの数や質も圧倒的だ。

今まで出会ってきた魔物の中で間違いなく最強だろう。

バジリスタは蛇のような縦筋の入った金眼をこちらに向けると、殺意と敵意を解き放った。

「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

特大の咆哮が大広間を、瘴気の迷宮全体を震わせた。

鼓膜が破れそうなほどの空気の振動。しかし、それはすぐに和らぐ。

ふと視線を向けると俺たちを覆うように翡翠色のヴェールがかかっていた。

エリシアの傍らにはシルフィードが待機していることから、精霊魔法で音の振動を散らしてくれたようだ。

衝撃的な魔物との遭遇にもかかわらず、自分がこなすべき役割を冷静にこなしている。

さすがは元Sランク。かなりの場数を踏んでいるだけあって冷静だ。

「他に出口がない以上はあいつを倒すしかない! やるわよ!」

「あ、ああ!」

既に退路がない以上は冒険者として腹をくくるしかない。

Sランク冒険者にもなれば、相対する魔物もそれなりに強大であることが相応しい。

お伽話のように俺も竜と戦うことに憧れたものだが、まさかDランクにして竜に挑むことになるとは思いもしなかった。

俺は幼い頃から憧れていた伝説に挑むことになった。