軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75:新たな仲間:ニッキ

「ずいぶんらしくないことをしたではないかヒイロ?」

いつの間にかクレーターの中心まで来ていたリリィンが、その赤子のような血色の良い頬を緩めている。

「……ふん」

自分自身、こんなにもお節介なことをしたという事実に驚いているところだ。

あの時、ニッキと彼女を守るバンブーベアの姿が、過去の自分と母親とが重なった。

子供のために命を尽くしたバンブーベアが、同じように日色を庇って命を落とした母親と同じように見えたのだ。

だからかもしれない。育ての母親を失って泣きじゃくっているニッキの姿をとても悲痛に感じたのは……。

そして、そうさせた張本人であるモンスターがまだ生きていた。倒すのは簡単だった。だが、モンスターを倒す役目は自分には無いと無意識に感じ取ったのである。

ほんの気まぐれ。細やかな慰め。日色はニッキに少しでもその想いのこもった拳で、モンスターを倒させてやりたいと思ってしまった。

無論何が変わるわけでもない。失った者たちは甦ることはないし、復讐したとしても気が晴れるかどうかなど分からない。

それでも日色はニッキに最後の一撃を託した。

(オレらしくない……か。まったくだな……)

だが仇を自分の手で討ち、少しだけ涼しげな表情をしているニッキを見て、たまには感情的になるのも良いかと自分自身を納得させた。

その時、ふと視界に入ってきたものが気になり、少しその場を離れた。

「しかしこれであの子は家族を失ったというわけですな」

シウバの言う通り、これからニッキは孤独を過ごすことになる。

「可哀相ですぅ……」

「クイィ……」

シャモエとミカヅキの表情も悲しみに彩られている。

シウバが静かにリリィンの背後に近づきそっと耳打ちをした。

「お嬢様……」

「…………分かっている」

リリィンがニッキのもとへ向かって小さな身体を動かしていく。

ニッキは座り込んで夢を見ているような感じで呆然としていた。

まだ現実が受け入れられないのかもしれない。

「おい貴様」

そんな彼女の背後からリリィンが声をかける。

声は聞こえていたようだが、ロボットのようにゆっくりと顔だけを動かしてリリィンの存在を視界に捉えるニッキ。

その瞳には活力が無く、今にも死に目になりそうな昏さだった。

「……貴様の気持ちは理解しよう。だが貴様はここで選ばなければならない」

聞いているのか聞いていないのか反応を返さないニッキを無視ししてリリィンは続ける。

「このままここに残るか、ワタシについて来るかを」

それでも何も答えないニッキに対し、リリィンは溜め息を吐く。

「ワタシは今、多くの同志を集めている。その同志とは、貴様のようなはみ出し者や、生くる場が無い者などだ。そんな者たちに、いずれワタシが造り上げる【楽園】という居場所を提供することがワタシの野望の一つだ」

『らく……えん?』

リリィンたちには「んが」としか聞こえていない。

「貴様がともに来るなら歓迎しよう。ただし、ここは曲がりなりにも貴様の育った地。ここに残るという選択肢もまたある。もし後者を選ぶのであれば、いずれ【楽園】を造り上げた時に、再び声をかけてやることもできる。どうする? それともどちらも選ばずに死ぬか?」

死ぬという言葉に反応したニッキの目から、再び涙が流れ出てくる。

『死ぬ……死んじゃ……たぁ……うわぁぁぁぁん!』

顔を上げて盛大に泣き始めるニッキ。こういう子供の対処の仕方が分からないのか、リリィンも肩を竦めるだけだ。

そこへ少しその場から離れていた日色が戻ってきて、泣きじゃくるニッキに近づき、見下ろす形で口を開く。

「泣くだけ泣けばいい」

「おい、ヒイロ」

「落ち着いてから決めさせればいいだろ? それよりオレは腹が減った。食糧を調達してくる」

そう言って日色はその場から去って行った。

こんな状況でも食欲優先な日色にリリィンは頬を引き攣らせているだけだった。

日色が【バンブーヒル】を探し回り調達した食材は、ここにしか生えていない筍である《 千変筍(せんぺんたけのこ) 》である。

見た目は普通の筍なのだが、この食材、実は調理の仕方で味や食感、香りなのが様々に変化するのだ。

時には普通の筍のようにシャキシャキとした歯ごたえのある山の幸を感じさせ、時にはモチのように柔らかく伸びる形態に変化し、時にはお菓子や果実のような甘さを含んだものになる。

それこそ本当に千変万化であり、どの食材にも適応するのでとても好まれている筍だ。ただあまり数が多く取れなくて、地面に埋まっているため、探し出すのに苦労したりするのが難点である。

しかし日色には『探索』という文字を使えば見つけるのは簡単だった。地面を掘り起こして、ちょうど日色の腕ほどの長さがある筍を三本ほど入手できた。

食材を手に入れた日色は、途中で見つけた黒い竹を『浄化』という文字で、竹に含まれた毒素を取り除き正常に戻していた。放置しておけば、またいずれモンスター化して厄介なことになる。

またここに来て筍を食べたいと思っても、奴らのせいで駄目になってしまう可能性がある以上、放置しておくことはできず、日色は一本残らず黒い竹を元に戻しておいた。

再度クレーターがある場所に戻ると、シウバが用意の良いことにテーブルや調理器具などを出し、準備万端に構えていた。彼の魔法による収納術は本当に便利なものだ。

リリィンはすでにニッキに語るのを止めて椅子に腰を下ろしていた。

少し離れたところで座り込んでいるニッキを、シャモエがかいがいしく声をかけているようだが、反応を返してもらえていないのか涙目である。

日色はそんな光景を一瞥すると手に入れた《千変筍》を持ってシウバのもとに向かう。

彼に食材を渡すと、意気揚々と調理を開始した。シウバに手伝いに呼ばれたシャモエも、後ろ髪を引かれるような思いでニッキの傍から離れて行く。

ニッキの貝に閉じこもるような姿を見て、日色は過去の自分を重ねる。何故なら、児童養護施設に送られて当分の間は、今のニッキと同じように世界と自分を切り離していたのだから。

慰めてくる大人の言葉ほど、鬱陶しいものはなかった。どうせ自分が感じている痛みの欠片も想像できない癖に、表面だけ取り繕った笑顔を向けられても、こちらにとってはそれは能面のようにしか見えなかったからだ。

周りにいる子供は絶望を忘れたかのようにはしゃぎ回り、大人たちはその子供たちの手を引いて楽しんでいる。

全部が全部激しく気持ちが悪かった。特に自分と同じ境遇のはずの子供が、どうしてそんなに笑えているのか不思議でならなかった。

まるで自分が見ている光景は映画やテレビの中の出来事のように感じられ、現実感が湧かなかったのである。

だが、日色のそんな心の氷塊も、一瞬で溶ける出来事が起きた。それは特別なことではなかった。

ある日、施設長の部屋に呼ばれて行ってみると、そこには一杯の親子丼があったのだ。

それまでほとんど何も食べていなかった日色にとって、親子丼のニオイは空腹感を大いに刺激した。

見ると施設長の手にも同じ丼がある。

そして笑いながら「さあ、食うか!」と言った。

しかし日色はここで食べたら何か負けてしまうと思い、手をつけなかった。

すると部屋に次々と子供たちが丼を持って入って来た。美味そうに食べる子供たち。次第に口の中に溢れる涎。気が付くとスプーンを手に取っていた。そして施設長はニッコリと笑って言った。

『まずは食え! 悩むのはそれからだ!』

どうしてだろうか、性別、顔、声、性格、何もかも違うはずなのに、その時の施設長に母親が重なった。

そう言えば、親子丼はよく家族と一緒に食べたものだった。母親の、得意料理の一つだった。

日色は涙が出そうになるのを堪えながら、その表情を隠すように丼を傾けた。

あの時の親子丼の味は生涯忘れないだろう。それほどの美味さが心に注がれたのだ。

『美味いものはたっくさんあるぞ! せっかく生きてるんだ! それを知らずに過ごすなんてもったいねえよな!』

後々調べてみれば、日色の母親が親子丼が得意だったことを施設長は、身元調査して知っていたようだ。

まんまと施設長の掌の上で踊らされた感を抜群に感じた日色は、その悔しさをバネにいつか、施設長がまだ食べたことがない食べ物を食べて、盛大に自慢してやろうと決意していた。

それに博識だった施設長に負けじと本を読んで知識も増やし、言い負かせるようにも努めた。

まあ、それがきっかけで本の素晴らしい魅力に取りつかれたのだが。

今思えば、食と本への欲求心は、全て施設長が原因だということを思い出した。

『俺はこう見えても世界中を回ったし、いろんな本も読んだ。まだまだお前みてえなチビッ子に遅れをとるわけがねえ!』

もう八十過ぎのジジイだったが、剛毅豪胆、大胆不敵、天真爛漫、どの言葉も似合う人物だった。

だがいずれ必ず見返してやると思い過ごしていたが、残念なことに、その機会はあっけなく失われた。享年八十八歳。最後まで笑いながら黄泉へと旅立って行った。

(勝ち逃げされたことで、ふざけんなって思って奴の遺影に本をぶつけてやったな、そういや……)

施設の皆は驚いていたが、施設長と仲が良かった日色のことを誰もが知っていたので、少しの罰で済んだ。

(なあジジイ、今ならアンタに絶対勝てる自信あるぞ)

さすがに異世界の食べ物や本など読む機会などなかったはずだ。

(いつかオレがそっちに行った時、盛大に悔しがらせてやるからな)

その時浮かべる施設長の顔を思い浮かべて思わず頬が緩む。

(だからってわけじゃないが……)

日色はシウバが作ってくれた料理の乗った皿を手に取ると、そのままニッキのもとへ歩いて行く。

(……ガキはガキらしい方が良い。それがアンタの口癖だったよな)

コトンとニッキの目の前に皿を置くと一言。

「まずは食え。悩むのはそれからだ」

ニッキが顔を上げて目の前にある《千変筍》の料理を見て、ゴクリと喉を鳴らすが、再び我慢するように顔を俯かせる。

日色は彼女のそんな姿を見て、

「生きたいなら食え。家族の命を無駄にしたいんなら食うな」

少し意地の悪い言い方をする。

するとニッキはピクッと肩を動かし反応した。

『……生きても……いいの?』

「……知るか。それは誰かに聞くようなものじゃないだろうが。お前が生きたいか生きたくないか、それだけだ」

『ぼくは……でも……もう誰もいなくなっちゃった……』

今ニッキの心の中には絶望が広がっているだろう。

家族が自分を守るために命を失い、そうしてまで守ってくれた命を、簡単に失うこともできず、だが突然周囲に誰もいなくなり、これから孤独が支配する。

恐らく先程のリリィンの話をほとんど聞いていなかったのだろう。

「お前は仇を討ちたくないのか?」

『……え? もう……モンスターは倒して……』

「違う。ホントの仇はモンスター化させた奴だろ?」

『……あ』

ニッキはハッとなって目を見開く。

イッキたちを直接殺したのは変貌したハイコンドルだが、そのハイコンドルを生み出したのは黒衣の人物だ。

「オレなら、家族を殺されて黙って生きるなんてできない」

『…………』

「必ずこの手でけじめをつける」

『……でも、ぼくができるのかな……お母さんでも叶わなかったのに……』

「弱いなら強くなればいいだろ?」

『……強く?』

「言っただろ? 決めるのはお前だ。これからどうするか決めたら、あそこの赤い髪のチビにでも言え」

その時、日色はそっとニッキの目の前に白い骨のような物体を置く。

大きさは大体ニッキの握り拳程度である。

『……え?』

「それはあのデカグマの爪だ」

実は筍を探す前に、地面で見つけたのはこれだった。もしかしたら他にもあるかと思い、筍探しのついでに探してはみたが、見つかったのはその一つだけだった。

「その爪に恥じない生き方をするんだな」

そう言いながらそこから離れようとしたら、ニッキは皿を手に持ちガツガツと物凄い勢いで食べ始めた。

『おいしい……おいしいよぉ……』

涙を流しながら食べるニッキを見て、どことなくホッとしたものを感じた日色。そのままテーブルに戻り、自分も料理を口にする。

《千変筍》の名に相応しく、テーブルの上には見た目からして様々な料理が並んでいる。餡かけのようにトロトロした液体が上にかけられてある千切りされた筍。それをアツアツのご飯にかけると、《筍の餡かけご飯》というそのまんまの名前。

だが絡みつく餡の中に、シャキシャキとした筍の食感が、ご飯にとてもよく合う。特にこの熱々ご飯に絡んでいる甘辛い餡はまるで山芋をすり潰したような粘り気を持ち、餡とご飯だけでもツルツルッといけてしまう。これは口にかっこむ手が止まらない。

他には串に刺した筍を焼き鳥のように焼いた《焼きバンブー》とシウバが名付けたものがあった。

この食感はまさに肉そのものだ。しかも中から出てくる肉汁のような液体が濃厚で美味い。

加えて軟骨のようにコリコリした部分もあれば、ミノのような弾力が強い食感も楽しめる。これは飽きずに食べられる。

またいろいろ味や食感などが違うものがあったが、最後にデザートである《チョコのこ》を食べた。

チョコでコーティングされた筍だが、サクサクとしたスナックのような食感とチョコが融合しお菓子感覚で楽しめた。これは本を読みながら片手間で口にしたいティータイムにちょうど良いお菓子だ。

食べ続けていると、日色の隣にニッキがゆっくりと近づいてきた。

日色もそれに気づき、彼女を見ると、そこには何かを決意したような顔があった。両手には祈るように握りしめている爪があった。

「……何かあるならそっちに行けと言ったが?」

リリィンの方を指差すが、そこで彼女はニッキの言葉が分からなかったことに気づき、だからニッキはこちらに来たのかと日色は考えた。

次の瞬間、驚くことにニッキが突然頭を下げた。

そして――。

『ぼくを強くしてくださいっ!』

その宣言に思わずポカンと口を開けてしまう日色。

「おいヒイロ、そのガキは何と言っている?」

リリィンが聞いてくるが、興味があるのは彼女だけでなくシウバやシャモエも同様でジッと視線を固めている。

どうやらニッキは日色に弟子にしてほしいと頼んでいることを彼女たちに言うと、

「ほほう、別にいいではないか。面白そうだ」

「ノフォフォフォフォ! ヒイロ様に弟子ができるとは……長生きはするものでございます」

「お、おおおおめでとうございますですぅ!」

いろいろ突っ込みを入れたいが、変態執事よ、お前たちと会ったのはつい最近だぞ。

「はぁ、オレは弟子なんて……」

取らんと言おうとニッキの顔を見ると、まるで捨てられた子犬のような目で見上げてくる。

ハッキリ言ってめんどくさい。弟子とは言っても何を教えればいいかサッパリなのだ。だが何故か断りにくい。

(コイツのこの顔……やっぱりどこかで……)

見たことがあるような気がするが、それはやはり既視感だろう。施設の時にも、よく子供たちに泣きつかれていた。その時のことを思い出す。いつも断れなかった自分のことを……。

「いいではございませんかヒイロ様。この子はまだ子供。教えることはたくさんありますが、わたくしもできるだけの支えをさせて頂きます」

「シャモエだって頑張りますぅ!」

「ワタシはそんな面倒なことやらんぞ」

最後のリリィンはともかく、他の二人は頼もしい言葉を伝えてくれる。

『お願いします! 強く、強くなりたいんです!』

必死に嘆願するニッキ。確かにめんどくさいが、自分の修練の相手にもなると考え、

「……オレは戦うことだけしか教えんぞ?」

『は、はい!』

「あと、オレの言うことを必ず聞くことだ。いいな?」

『はいっ!』

嬉しそうに花が咲いたように笑顔を浮かべるニッキ。シウバやシャモエも手を叩いて喜んでいる。

「しかしそうだな……」

日色は顎に手をやりながら思案顔を作りながらミカヅキに近づく。

「どうしたのだヒイロ?」

「……いや、ジイサン、コイツに言葉も教えられるよな?」

「ええ、構いませんが」

「なら一人増えても問題無いな」

「は?」

シウバは虚を突かれたような雰囲気だったが、構わず日色はミカヅキの身体に『擬人化』という言葉を書く。

すると凄まじい魔力が日色から溢れ出し、その魔力がミカヅキを包んでいく。

ミカヅキは驚いているように叫んで慌てふためいているが、光は容赦なくミカヅキを覆い尽くす。

皆も日色が何をしだしたのか理由が分からず唖然としている。

だが光が収まると、さらに驚くべき光景が広がっていた。

何故なら先程ミカヅキがいた場所にいるのは、小さな女の子だったのだから。

「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

リリィンとシャモエが割れんばかりの悲鳴に似た声を上げる。

「ふむ、上手くいったな」

『擬人化』の文字で、ミカヅキを人型にすることができるか試してみたのだ。

以前から一度試してみたいと思っていたのだが、どうやらこの文字は、ある程度の信頼関係が互いになければ使えないらしい。

ミカヅキならと思い、試してみたが思った通り成功した。しかし彼女もまたモンスターであり、言葉を話すことができないようで、

「クイ?」

と可愛らしく首を傾げていた。

「ジイサン、コイツにも言葉を教えてやってくれ」

「ノフォフォフォフォ! さすがはヒイロ様! もうわたくしの驚きのキャパシティは溢れ返っておりますぞ! ノフォフォフォフォ!」

「か、か、可愛いですぅ!」

シャモエはミカヅキに抱きつくと、ミカヅキも嬉しそうに「クイクイ!」と声を発している。

「さて、おいガキ……いや、今日から弟子だ。コイツより先に言葉を話せるかな? 先にできたら褒めてやる」

ニッキを見ながらミカヅキを指差す。

すると、ニッキは「むむむ!」といった感じでミカヅキを睨むと、指を突きつける。

『ぼくが先に言葉を覚えるんだ! そして褒められるんだ!』

するとミカヅキは、

『ちがうも~ん。よくわからないけど、ごしゅじんにほめられるのはミカヅキだもん!』

こうして、チビッ子コンビが出来上がった瞬間だった。

二人は馬が合わないのか、いつまでも口喧嘩をしており、とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、リリィンが怒り爆発で、二人を正座させて説教し始める。

それをあわあわとした様子のシャモエに、温かい目で微笑みながら見守るシウバがいた。

(それにしてもオレに弟子……か。この世界に来て、いろんな新しいことに出会ってばかりだな)

だがそれがまた自然と心地好かったりする。

こうして自分のしたいことを突き進む中で、新たな発見をしていくのもまた面白い。

(けど、新たな仲間が増えたのはいいが……)

リリィンたちの顔を、順々に見回していく。

(改めて思うが、ホントに濃いな……この面子。ただまあ、退屈はしなさそうだ)

これからこのメンバーで旅をするのだ。

魔界は広い。しかも何が起こるか分からない。

(できれば平和に旅をし続けられたらいいが、果たしてどうなることやら)

だがこのメンバーなら、楽しく、そして面白い旅になりそうだ。

――やがて日色のこの懸念は、遠からず当たることになる。

半年後、まさか世界を揺るがす事件に身を投じることになろうとは、この時の日色は欠片ほども思っていなかったのだ。

そう、気づいていなかった。

今も世界では、確実に時計の針が時を刻んでいる。

その先に待つ何かを目指すかのように。

待っているのは栄華か、それとも破滅か……。

様々な者たちの思惑が渦巻く世界の中で、その答えはもうそこまで近づいていた。

そして、舞台は半年後へ――。