軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

101:アガッシ開始

「では時間もありませんので簡単に自己紹介をさせて頂きます。まずはあの方、わたくしの主であるリリィン様でございます」

「え……あの幼……」

またもリリィンが喧嘩中なのにギロッと睨んできたので即座に言葉を改める。

「あ、あの絶妙に可愛らしいお姫様がそうなんだ!」

「ええ、ちなみにお嬢様は、年齢や身長、主に見た目についていろいろコンプレックスをお持ちでございますので発言には慎重にお願いします」

「わ、分かった……」

ミュアも気を付けようと思い、アノールド同様に何度も頷く。

「そして彼女はわたくしと同じようにお嬢様にお仕えしているシャモエでございます」

「シャ、シャモエなのでしゅぅぅぅっ!」

シャモエは頬を染めながら言葉を発するが、見事に噛む。そんな彼女を見てミュアが親近感を持ったのは必然と言えよう。

「そしてこちらはニッキ殿でございます。こう見えてもヒイロ様の愛弟子でございます」

「よろしくですぞ!」

ニカッと笑みを浮かべたニッキを見て、

「は、はぁ……あのヒイロが弟子をねぇ……」

「じ、時間は流れてるってことだよおじさん!」

物珍しいものを見たといった感じで感嘆している二人。

「そして……」

「おひさしぶりだよふたりとも!」

ミカヅキが二人に対して手を上げて言うが、二人はポカンとしている。

「え……誰? なにこの子?」

アノールドがそう呟くと、

「ぶ~わすれるなんてひどいよぉ~! ミカヅキだってうっすらおぼえてたのにぃ~!」

頬を限界まで膨らませて拗ねるミカヅキ。

「存在感が薄いですぞミカヅキ~」

「うるさいよニッキ!」

ニッキに嫌味を言われミカヅキは顔を真っ赤にして怒鳴る。だが幼女の名前を聞いてもピンときていないアノールドたち。そこでシウバは説明することにした。

「実は彼女はヒイロ様の手によって擬人化した存在でございます」

「ぎ、擬人化だってぇっ!?」

「はいでございます。元はライドピークと言うモンスターでして、以前にもアノールド様たちとはお会いした経験があるとのことですが?」

そこでアノールドたちは思い出す。確かにライドピークを借りて【獣王国・パシオン】の近くまで乗せてもらった。

「あ、あの時のライドピークってことか?」

「そうだよ! ひどいよ、わすれるなんて! おじちゃんもミュアも!」

「ご、ごめんね!」

「お……おじちゃん……」

ミュアは正直に謝り、アノールドはおじちゃんと言われたことにショックを受けて肩を落としている。

「最後にわたくしめの名前はシウバ・プルーティスと申します。以後お見知りおきを」

丁寧に頭を下げる。

「しかしよ……擬人化とか転移とか、アイツどんどん何でもアリになってきてるよな……」

アノールドは頬を引き攣らせながら日色を見つめている。

「ノフォフォフォフォ! ところでアノールド殿は何かこう、わたくしと近いものを感じます」

「おお、そうなんだよ! 何か俺もアンタにはこう通じるものがあるっつうか」

「そうでございましょう! 何故なのでしょうね! ノフォフォフォフォ!」

「何なんだろうな! アハハハハ!」

どうやら変態とロリコンには、誰にも分からない絆が生まれていたようだった。会ったばかりなのに、まるで親友……いや、心友とも呼べるような感覚が二人の間に漂っていた。

そんな不思議で理解不能な化学反応にミュアはどうやって反応したらいいか戸惑っていると、ようやく口喧嘩が終わったのか、日色がやって来た。

「ん? まだいたのか? ならとっとと自分の陣営に戻れ」

「ぬぐ……お、お前なぁ……せっかく会ったってのにホントまったく……悲しいほどに変わらん奴だなオイ……それに最近国へ来たとか師匠から聞いたが、挨拶ぐらいしろよな……ったくよぉ」

「半年でそう変わるか。それに国へ行った時に挨拶しなかったのはお前らがいなかったせいだ。オレに非は無い」

「…………ホント偉そうだなお前は……」

「あはは……何かほんとに懐かしいよね」

二人は呆れながら溜め息を漏らす。

「そういやオッサン、獣王の前で、嬉しそうにオレのことを暴露したそうじゃないか」

「え、あ、そ、それは……」

日色の口元は緩んでいるが、目は決して笑っていない。背中から黒いオーラが流れ出ている。

「どうやら久しぶりにオレの魔法の実験体になりたいようだな?」

「ちょ、ちょっと待てってヒイロ! た、確かに言ったけど、お、お前だって連絡一つよこさなかったじゃねえか!」

「…………だから何だ?」

日色は眉をひそめて首を傾ける。

「あ、あのなぁ! 仮にも旅仲間だったんだし、少しは連絡ぐらいしろよ! お前の魔法なら簡単だったろうが!」

「知るか。めんどくさい」

「め、めんどくさい……」

あまりの言い分にさすがのアノールドも顎を落としたままだ。

「ヒイロさんっ!」

突然ミュアが叫んだので、皆の視線が彼女に向く。

「何だチビ?」

「わ、わ、わたしだって心配したんです! ミ、ミミルちゃんもです! そ、それに……」

ミュアはリリィンたちをチラリと見て、

「な、何かすごく楽しそうだし……何でか小さな子も一杯だし……」

「何だって?」

ブツブツ小声で言うので聞き取れなかった。するとミュアは顔を真っ赤にして言う。

「と、とにかく、何か悔しかったんです! お、おじさんは完全に仕返しでヒイロさんのことを暴露しましたけど、おじさんだってヒイロさんのことを大切だったからこその仕返しです!」

「お、おいちょっとミュアさん……?」

「ほほう……仕返し……ねぇ」

日色の顔をアノールドは恐る恐る見ると、

「覚悟、できてるな?」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

日色はある文字を書いて、アノールドに向けて放ち発動させた。

すると――。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ! やめてぇっ! 俺にそっちの趣味はねえからぁぁぁっ! あ、ダメだって! そ、そこはだって大事な……あ、あ、あ、らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

突然一人で顔を青ざめながら悶え始めたアノールドを見てミュアがキョトンとして、何をしたのか日色に聞いてきた。

「なに、ただの悪夢を見せてるだけだ」

日色は『幻』の文字を使って、アノールドだけにある幻に苛まれるようにした。

その内容は、筋肉ムッチムッチの油テッカテッカのむさ苦しい男たちが裸でワッショイワッショイしてくれるというものである。

「なるほど~、簡単に言えば、今アノールド殿は、そっち系の男性の方々に囲まれ体を好きにされているということですな? これはこれは……地獄でございますね」

シウバが噛み砕いて説明してくれたことで、ミュアも頬を引き攣らせて保護者を見つめている。

そして一分が経ち、ぐったりした様子で地面に転がっているオッサンがいた。

「反省したか?」

「……ぐす……ぐす……ひぐっ……もうお婿にいけない……」

きっと想像以上のことをされたのだろう。彼の目からはとめどなく涙が溢れていた。

「おいチビ、そう言えば青リボンは来ていないのか?」

「え? あ、青リボン? もしかしてミミルちゃんのことですか?」

「ああ」

「それなら皆さんの所にいます」

「やはりついてきたか」

「本当はここにも連れて来たかったんですけど、ミミルちゃんがせっかくの再会だからって向こうに残ってくれました」

「まあ、アイツとは先日会ったしな」

その言葉にミュアは少し耳をピクリと動かす。

「……ほんとにズルいです」

「あ?」

「やっぱりズルいですミミルちゃんだけ! この前来た時に、会ってほしかった……です」

「……はぁ、別にこうして会えたからいいだろうが」

「そ、それはそうです……けど……」

「それに、ここで会った方が良いと判断した」

「え?」

「楽しみはとっておきたかったからな」

「ヒイロさん……」

その時、ようやく意識が回復したのか、酷い顔をしたままアノールドが睨み付けるように見てくる。

「お……お前な……い……いつかぶち殺しちゃる……」

「やれるものならやってみろ」

「もう、おじさんが悪いんだよ」

「ミュア~」

縋るようにアノールドはミュアの名を呼ぶが、ミュアも呆れて肩を竦めている。

実際にはミュアの失言でこうなったのだが、それを責めることができない親バカの精神だった。

「そんなことよりいつまでここに居るつもりだ? 今お前らは敵側だぞ? その意味分かってるよな?」

その言葉に二人はハッと息を飲む。そしてアノールドはキリッとした表情を作ると、

「…………だな。行くぞミュア」

「え、あ……わたし……」

ミュアはどうしたらいいか分からず戸惑っている。久しぶりに会えた日色ともっと一緒にいたいと思っているのかもしれない。

だが日色が言うように今は敵同士で、ここにいることは本来許されない。

するとそんな彼女に日色は近づいていく。

――トン。

ミュアの額を指先で軽く突いた。

「この半年の成果、オレに見せてみろチビ」

突然のことでしばらく呆然としていたが、ゆっくりと額に手を持って行くミュア。

そしてコクリと息を飲み、「はいっ!」と力強く返事をしてアノールドの隣に位置取った。だがすぐにまた日色に近づくと、

「あ、あのヒイロさん」

「あ?」

「……いろいろお話したいことがあるので、この戦いが終わったら時間をくださいね」

「は?」

「主にわたしのような小さな身体の人たちがどうしてこんなにもいるのかについてですけど」

「…………な、何でそんなこと気にする?」

何か背中にうすら寒いものを感じた。ミュアの背中にひっそりと佇む般若が見えるのはきっと気のせいだろうが。

「ミミルちゃんもその件についてはきっとお話したいと思いますので、一緒にお話しましょうね?」

「あ、ああ……」

するとミュアはニッコリと笑うと再びアノールドのもとへと向かった。何だかミュアからとてつもない威圧感を感じたが、あんな威圧感を出せるまでになっていたとは…………成長したなと思った。

「ヒイロ、俺らがどれだけ強くなったか見せてやらぁ!」

「そんな宣言はいいからさっさと行け」

「くっ……わーったよっ! ここは楽しみにしているぞとか言えねえのか!」

「もう、おじさん行くよ!」

「は~い、分かったよミュア~!」

「……ロリコンは健在か」

「誰がロリコンじゃボケェッ!」

「ノフォフォフォフォ! アノールド様とは良いお友達になれそうでございます!」

「おう! アンタとは酒でも飲みかわしながらいろいろと……」

「いいから行くよおじさん!」

「あ、待てってばミュア!」

ミュアに手を引かれその場を離れて行く二人。

「ふぅ、相変わらず暑苦しい奴だったな」

「その割には結構楽しんでいたみたいだが?」

リリィンがニヤニヤ顔を向けてくるので不愉快そうに顔を歪める。

「ふん、冗談だろ。……まあ、懐かしさは感じたがな」

そんな日色を皆が笑みを浮かべながら見つめていた。

「どうやら何事も無く終わったようだな」

先程まで日色とアノールドたちのやり取りを遠目で見ていたイヴェアムの言葉に皆が首を傾けている。

「陛下、あの者たちは……?」

マリオネの問いにイヴェアムは答える。

「ヒイロの元旅仲間だったらしい。恐らくここに転移してきたら殴りかかってくるだろうが、それは当然のことなので手を出すなと厳命されていた」

「小僧が……ですか?」

「ああ、それにそちらもそうだったのでしょう獣王殿?」

そうして同じように手を出さなかったレオウードに視線を送る。

「まあな。アノールドからは是非友に会いに行きたいと言われたからな、了承した。恐らくヒイロもそのつもりだと言ってな」

どうやら双方で話が通じていたようだ。

「まあ、これで心置きなく始めることができるな……魔王よ?」

「……分かっている」

お互いに睨み合うと、先に口を開いたのはイヴェアムだった。

「そちらの決闘方法は聞いているが、もう一度確認のために教えて頂こうか」

「分かった。決闘方法は古くから『獣人族』に伝わって来た《アガッシ》と呼ばれる決闘方法だ」

一、決闘は互いに同人数で行われる。

二、決闘は全部で五戦行われる。

三、その内、先に三勝を収めた側が勝利を得る。

四、勝敗を決定する判断は、チームの中の王が敗北するまでである。

五、全てが終わって引き分けの場合、互いに一人を選出して決闘し合う。

六、相手が戦闘不能に陥るか、敗北を認めたらそこで勝敗が決まる。

七、一人だけなら二回参加できる。ただその者は二回目の時にタイマン戦以外王の役を背負えない。

八、事前に参加する者を決定しておき、変更は認められない。

方法を確認して問題が無いと判断したので、次に勝敗が決まった時の話をする。

「《契約の紙》でも決めたが、負けた国は勝った国の指揮下に入る。しかし十分に相手を尊重し、無闇に殺すことを無しとする。これで良かったな?」

イヴェアムが厳しい顔つきで喋ると、レオウードも小さく頷きを返す。

「ああ、この戦いはこちらが圧倒的に有利だ。もし負けたら潔く、お前たちの懐に入るとしよう。同じようにこちらが勝った場合も、理不尽な扱いはしない。そちらが契約を守り続ける限り、こちらも約束は違えない。獣人の誇りにかけて誓おう」

後ろに控えている獣人たちも一様に頷きを返してくる。覚悟はあるということだ。

「うむ、こちらも望むところだ。勝って私たちが本当に平和を望んでいることを知って頂こう! その上で本当の意味で同盟を結びたい!」

しばらく互いの視線を交わしていると、レオウードはフッと笑みを浮かべた。

「なるほど、あのヒイロがそちらにいる理由が何となく分かった」

「……え?」

「お前さんは甘い」

「う……」

「だが、何故か支えてやりたいという思いにかられる」

「……」

「それはもって生まれた天賦だ。大事にするがよい」

「獣王殿……」

「だが、この勝負はこちらが勝たせてもらう!」

「いや、こちらも負けるわけにはいかん!」

またもしばらく睨み合って、

「では、さっそく始めようか」

レオウードがそう言うと、イヴェアムが手を上げる。

「少し待ってほしい。約定通り、ここで捕虜を一部解放する」

「む?」

「しかし、大人数を連れてくるのもヒイロの負担になると思ったので、こちらは彼を返しておこう」

そう言って、兵士の方に視線を向けると、その中から手錠をされたクロウチの姿があった。牢屋では体毛も白くなって少女のような体躯になっていたが、今はもう黒豹のように全身が漆黒に包まれている。

「おお、そう言えば忘れていたな」

「レオウード様……酷いニャ」

「ガハハ! 冗談だ冗談! というよりも、お前にも参加してもらうつもりだ。戦えるな?」

するとクロウチはニヤッと不敵そうに口角を上げる。

「当然ニャ」

「しかしこれも前から決めていたとはいえ、本当に良かったのか魔王よ」

「ああ、全力の貴公らを倒すことに意味がある」

「ほう……面白い。ならばこちらも全霊をかけて相手をしよう」

そう言いながら懐から紙を取り出す。そこにはこれから戦う者の名前が書かれてある。

「ノフォフォフォフォ! ではここからは、立場的には中立であるこのシウバが仕切らせて頂きましょう!」

いつの間にか両陣営の間にひょっこりと現れたシウバに誰もが驚愕した。

「シ、シウバ殿っ!?」

思わずイヴェアムも大声を張り上げる。

「……何者だお前は?」

レオウードは警戒心を受けながら問う。

「いやいや、しがない執事でございます」

レオウードがイヴェアムに説明を求むといった感じで視線を送ってきたので、彼がどういう立場の者か教えた。

「なるほど、ならコレを受け取れ」

紙をシウバに手渡す。

「こちらも預けておこうシウバ殿」

「畏まりました」

同じように懐から紙を出したイヴェアムに頭を下げてから受け取る。そして両者の紙に、一回戦に参加する者の名前を確認して、

「それでは《アガッシ》第一回戦の参加者を発表させて頂きます! まず『魔人族』陣営からはマリオネ殿」

第一回戦から大物を出してくるとはと、獣人たちがざわつく。しかも名前を一人しか言っていないということは、

「『獣人族』陣営からは……」

つい言いよどんだシウバに皆の怪訝な視線が集まる。

「ゴホン、失礼を致しました。『獣人族』陣営からは……獣王レオウード殿!」

『魔人族』側だけでなく、このオーダーを知らなかった『獣人族』側も思わず言葉を失っていた。

その中で嬉しそうに笑みを浮かべているのは他ならぬマリオネとレオウードだけだった。

第一回戦のカードは、まさしく目が離せないものだった。

『魔人族』が誇る《クルーエル》の《序列二位》であるマリオネと、【獣王国・パシオン】の国王であるレオウードの対決。

アクウィナスがこの場にいない以上、日色を抜けば『魔人族』最強と、『獣人族』を束ねる獣王が激突することになった。

事実上の最強決定戦になるのではと両陣営が緊張感に包まれるのも仕方が無いだろう。

今イヴェアムたちは、クレーターから出て日色の所へと戻って来ていた。

「マリオネ、ハッキリ言って予想外な相手だが勝機はあるか?」

イヴェアムに尋ねられ不敵そうに笑みを浮かべる。

「愚問ですぞ陛下。こちらこそ一番望んでおった相手です。我が恨み、奴を殺して晴らしてみせましょうぞ」

「いや、殺すのは……」

そう言うが、もう何も耳に入らない様子でマリオネはレオウードだけを見つめていた。

「でもでもぉ、まさか初っ端から王直々に出てくるなんて……完全に意表をつかれたわねぇ」

シュブラーズが困ったように眉を寄せながら喋る。

「確かに強敵過ぎる強敵だが、マリオネ殿ならば勝ってくれるはずだ」

オーノウスは微かに頷く。

「ヒイロ、マリオネは勝てると思うか?」

「知らん」

不安そうに尋ねてくるイヴェアムに対し、あっさりと言葉を吐く。その淡白さに彼女は微かに暗い表情を作る。

だが知らないものは知らないのだ。レオウードはともかくマリオネの戦うところなど見たことがないので判断はできない。

レベルで言うと、ハッキリ言ってマリオネの分が悪い。しかしレベルだけで勝敗が決まるわけではない。

魔法や相性の問題もあるし、戦い方にも違いが出てくる。恐らくレオウードは接近戦タイプで、マリオネは遠距離タイプに見えるので、そこらへんの兼ね合いで勝負がつくのではと思っている。

だが面白い戦いになりそうなのは本当だ。どっちが勝つにせよ、皆の目を惹きつけるほどの戦闘が繰り広げられることは間違いないだろう。

そうこうしている内に、マリオネは一人クレーターの中へと入って行く。そして相手側のレオウードも動いたようだ。

そして両者が中心で顔を突き合わせる。

マリオネが今、目前にいる男を見つめ、あることを尋ねる。

「獣王レオウードよ」

「何だ?」

「一つ尋ねる」

「…………」

「白と黒の斑模様の体毛に覆われている獣人を知っているか?」

ピクリと眉を動かして言葉に反応するレオウード。

「…………知ってどうする?」

「無論この手で殺す」

「…………」

「本来なら奴を庇った『獣人族』全員を殺すつもりだったのだが、それは魔王様の意思に反する。だがあのような化け物を生んだ国の王である貴公には、この怨恨の刃を受けてもらう!」

マリオネの目をジッと見つめて静かに口を開く。

「……復讐か」

「そうだ。奴はこの手で必ず殺してやる!」

ビリビリと大気を震わせるような殺気が迸っている。その場にいる中立役のシウバも、思わず身が引き締まる思いを抱く。

「……知りたいか?」

「当然よ!」

「ならば、ワシを倒してみよ! 力を示し、この口を開けさせてみるのだ!」

「では、そうしよう」

互いに準備ができたと判断したシウバは、

「それでは第一回戦……始めっ!」

開始の合図を放った。