軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第51話 光るモノ

一人から二人の面倒を見ることになったため、一時間ではなく二時間みっちりと戦闘の指導をつけた。

トレバーには変わらず基本動作を叩き込み、テイトには動きの隙をなくすために徹底的に俺との模擬戦。

指導を終えて、二人にここからの一ヶ月のトレーニング内容を伝えたところで、トレバーからは銀貨二枚を受け取って現地解散とした。

指導に俺自身がのめり込み始めているのが分かる。

二人共にゼロの状態だから、トレバーでさえ上達が早いのも指導するのが楽しい要因の大きな一つだ。

ただ単に面倒くさかった指導が楽しくなってきたこともあり、俺は少しテンションが高い状態で街へと戻っていると……。

俺の後をついて、一緒に街へと帰っているテイトが話しかけてきた。

「ジェイドさん、一つ質問してもいいですか?」

「ん? 別に構わないが、質問って一体なんだ?」

「なんでトレバーを指導しているんでしょうか? 私がまだ素人というのもありますが、トレバーには何か光るものがあるとは思えないんです」

あまりにも直球な質問だな。

確かにトレバーは、戦闘における全てにおいてモノ足らない。

才能がないのに調子乗りですぐにくじけるため、テイトは素直にそう感じたのだろう。

いつの間にか、敬語もさん付けもやめているしな。

「別に光るモノがあるから指導している訳じゃない。その点でいえばテイトも同じだ」

「……えっ、私も才能がないんでしょうか?」

「いや、テイトは戦闘の才能はあると思う。俺が言いたいのはそういうことではなく、仮にテイトに才能がなかったとしても指導していたって話だ」

「そうだったんですね。てっきり私に才能があるから、指導してくださっているのだと思っていました」

「まぁ強いて理由を挙げるのだとすれば、二人には知られたくない俺の素性を知られたからだな。一カ所にまとめることで、情報が漏洩するのを極力減らすことができる」

指導はついでで本来の目的はこっち。

まぁさっきも言った通り、指導も楽しくなってきてしまっているんだが。

「そういった理由でしたら納得です。ちなみにトレバーには何故バレたのですか?」

「俺が迂闊だったってのもあるが……トレバーが弱すぎたからだな」

「弱すぎたから? 速すぎる動きが止まって見える――とかそんな感じでしょうか?」

「現象でいうとそんな感じだ。実力差が十周くらい離れているせいで見られてしまった」

今思うと、トレバーに見つかったのは不覚すぎる。

……いや、俺なりの最善は尽くした訳だし、鈍すぎるトレバーが凄かったと称えるべきか。

「それでジェイドさんに直接指導してもらえるようになるなんて、運だけは図抜けているのかもしれませんね。……まぁ、それは私もですけれど」

「とにかく二人は仲良くやってくれ。俺の指導を受けている間は、二人でパーティを組むことになるんだからな」

「はい。一応、お互いの住んでいる所は教え合いましたのでこまめに連絡は取ろうと思っています」

「それがいい。冒険者についてはトレバーが色々と知っているだろうし、こなせる依頼があれば受注して金を稼ぐのもいいと思う」

二人で帰り道でそんな会話をしつつ、街に入ったところでテイトとも別れた。

さて、これからなのだが……実は夕方からスタナと会う約束をしている。

以前話していた食事を奢る約束を果たすため、強盗に入られた際に店番をしてくれたあの日。

俺はスタナに夜ご飯を奢る約束をしていた。

とりあえず夕方まではまだ時間があるため、一度ボロ宿に戻ってシャワーを浴びる予定。

本当は大通りで買い物も行う予定だったが、指導に熱が入って時間がなくなってしまった。

金はそこそこ溜まっているけど、使う時間を取れないという贅沢な悩み。

使う時間がないのであれば、いっそのこと少しいい宿屋に移ってもいいかもしれない。

次の休みの日は宿屋を探しに行……いや、次の休みは『都影』の情報集めだな。

テイトと朝に話したことを思い出し、次の休みの日の予定が一瞬で埋まってしまった。

毎日が充実しすぎているため、正直『都影』の件は俺にとって面倒でしかない。

面倒くさいことが待ち受けているのは目に見えているし、情報集めもしたくないのだが、今の平和な生活を守るためには仕方のないこと。

俺は深いため息を漏らしつつも、気持ちを切り替えてスタナとの食事のために準備を行ったのだった。