軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その65

早めにエルダーワイバーンを狩ることができたため、すぐにヨークウィッチへと戻ってきた。

エンペラは何もしていないように思えるものの、荷物運びの能力は非常に高いことを再確認できた。

エルダーワイバーンを内臓抜きにした個体をまるごと収納できたし、道中で入手した植物や魔物の素材も運んでくれたからな。

商品となり得るものの入手よりも、運ぶ労力の方が圧倒的に大きかったため、エンペラの能力は世界が変わるほどの力。

欲を言えば、時空間魔法なら腐る心配もいらなかったんだが……それは本当に欲を言いすぎだろう。

ということで、エンペラには今回の分の給料を多めに渡しつつ、長めの休暇をプレゼントした。

従魔というよりは、従業員みたいな感じになっているが、その方がお互いに良いはず。

ちなみに俺はというと、余った期間は近場で調達を行っていた。

薬草などの安価なものばかりではあるが、低ランク冒険者も多く来店するため、意外にも需要が高い。

いつか高ランク冒険者になることを祈っての、投資的な意味合いでの調達ではあるが、常連を増やすことは大事だし今後も積極的に調達していきたいと思っている。

そして、営業日が明日へと迫る中――

俺はエルダーワイバーンのタンを持って、『モイスアワー』へとやってきた。

エルダーワイバーンの部位の中でも、タンが頭二つ抜けて高値で売れる部位ではあるものの、俺は『モイスアワー』の店主と友好関係を築いた方がいいと判断。

エルダーワイバーンの情報をすぐに出せたのは、それだけ情報通である証。

俺は魔物を狩る能力があるため、必要なのは情報だからな。

ということで、タンの中でも希少で美味しいとされるタン元を持って、『モイスアワー』の店内へと入った。

「すまないな。まだ営業時間前……ってお前さんか。一体何しに来たんだ?」

「何をしに来たって、エルダーワイバーンのタンを持ってこいと言ってきたのはあんただろ」

「確かに言ったが、エルダーワイバーンのタンはそう簡単に手に入るものでは――。まさか、もう手に入れたと言うのか?」

半信半疑ではありつつも、俺の反応が嘘ではなさそうだと察している様子の店主。

「そのまさか、だな。持ってきたから確認してみてくれ」

俺は持ってきたタン元を店主に渡す。

しっかりと捌いた上で氷漬けにしてあるため、鮮度は保ったまま。

店主に目利きの能力があるのであれば、喉から手が出るほど欲しい一品のはず。

「見せてくれ。…………ほ、本当にエルダーワイバーンのタンじゃねぇか! それも希少部位のタン元! 一体どこで手に入れた!?」

「もちろん自分で狩ってきた。ご丁寧に居場所を教えてくれたからな」

「狩ってきたって、こんな短時間で――。いや、でも、こんな新鮮なタン元が都合よく市場に出回るわけもない。……本当なのか?」

「疑うなら、他の部位も見せてやってもいい。牙や爪も剥いできたからな」

ここまで言ったことで、ようやく信じてくれた様子。

これで、『モイスアワー』がどこから商品を仕入れているのかを教えてもらえるはず。

「……嘘をついているやつの顔じゃねぇな。分かった、お前さんを認めてやる。名前は何て言うんだ?」

「俺はジェイドだ。あんたは?」

「俺はこの店の店主をしているフーディーだ。よろしくな」

差し出された手を握り返し、固い握手を交わす。

「それで早速だが、商品をどこから仕入れているのか教えてくれるか?」

「ああ、約束だからな。……この店の商品は、美食ギルドから仕入れている」

美食ギルド? 聞いたことのない名前だ。

配達でこの街を回りまくっていたから分かるが、この街にはそんなギルドは存在しない。

かと言って、フーディーは嘘をついている表情をしていない。

表には出ていない組織か?

……いや、裏だったとしても、俺の耳には絶対に届いているはず。

「聞いたことのないギルドだな。一体どこにあるんだ?」

「ヨークウィッチにはないぜ。美食ギルドがあるのは、王国のド真ん中に位置するメルデルクの街だ」

「ということは、そのメルデルクの街から仕入れているということか?」

「ああ、そうだ。美食ギルドは美味しい食べ物を追い求めるためだけに設立されたギルドで、維持費を賄い、かつ美味しい食材の情報を集めるため、限られた店のみと取引をしている。営利目的ではないことから、今は一切の新規取引は行われていない」

「ということは……俺が行ったところで無駄ということか。そんな秘密裏に動いている組織の情報を話して良かったのか?」

詳細に教えてくれたのはありがたいが、フーディーのことが少し心配。

話を聞く限りでは、半分裏の組織みたいなところがあるからな。

公にはしていないことから、実際に食材を追い求めるため、違法になり得ることもやっていそうな感じがある。

ペラペラと喋ったやつが消される――ことは流石にないだろうが、今後の取引の打ち切りは全然あり得る範囲。

「もちろん話しちゃ駄目だ。情報を話せば、取引をしてもらえなくなるからな」

「俺が聞いといて何だが、絶対に話しちゃ駄目だったろ」

「商人にとって約束は重大だからな。それに、エルダーワイバーンを軽く狩ることができる人間は、美食ギルドが唯一常に求めている人材でもある。そのエルダーワイバーンのタン元を持って、メルデルクの『ウォルエール』という店に行けば話を聞いてもらえると思うぞ」

「ん? このタン元はフーディーが欲しかったものだろ?」

「欲しくはあるが、美食ギルドへの土産になり得るものだから伝えただけだ」

無愛想だと思っていたが、良い人だな。

流石に申し訳ないし、半分はフーディーに渡そう。

「分かった。忠告通りタン元は持って行かせてもらうが、半分はフーディーが貰ってくれ。この半分あれば十分だろ?」

「いや、十分かどうか分からないぞ? 少ないと判断されたら、門前払いを食らう可能性だってある」

「まぁその時は縁がなかったと割り切る。世話になったし、貰ってくれ」

俺はエルダーワイバーンのタン元を半分に切り、フーディーに渡した。

最初は拒否していたが、俺が折れなかったため、最終的に受け取ってもらうことができた。

とりあえず……週末の営業日を終えたら、メルデルクに行ってみるとするか。