軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その62

エルダーワイバーンを探すため、グラニール山へとやってきた。

久しぶりに来たわけだが……特に懐かしいという感情は沸いていない。

「ここがグラニール山なのか?」

「ああ。エルダーワイバーンはこの付近を飛んでくることがあるらしい。空を飛んでいることを考えたら、標高が高い場所に来る可能性の方が高いだろうから、山頂付近にキャンプを張る」

「ここからさらに登るのか。……面倒くさいな」

「文句を言うな。エンペラは鞄で寝ているだけだろ」

鞄の中から顔だけ出し、文句を言ってきたエンペラを鞄の中に押し込む。

ここまでは速度重視で移動してきたが、ここからは調達も行いながらグラニール山を登っていく。

朔月花を見つけられたらいいんだが……期待はできない。

現実的に質の高い薬草に焦点を当て、山頂を目指して進んでいこう。

グラニール山を登り始めて約4時間。

採取しながらということもあって時間はかかったが、無事に山頂までやってくることができた。

ただ、エルダーワイバーンらしき魔物の姿はおろか、痕跡すら見つけられていない状況。

タイムリミットは四日間のため、ここからは自分の運を信じて待ち続けることしかできない。

「キャンプも完成したのか?」

「ああ。ここからはひたすらに待ち続ける。エンペラは採取した薬草を綺麗に収納していってくれ」

「……草臭くなりそうだな」

「文句を言うな。俺は近くの散策に行ってくる」

建てたテントにエンペラを残し、俺は山頂付近の調査に向かった。

最優先はエルダーワイバーンの痕跡探し。

そして朔月花を探しながら、見かけた質の高い薬草の採取をしていく。

目玉となる商品を入手したいところだが、今のところ見つかるのは薬草ばかり。

既に大きな鞄2つ分くらいは採取しているため、これ以上はいらないぐらいなんだが……。

今のところ、痕跡すら見つけられていない。

「本当にいるのか?」

そう呟いてしまうほど、生物の影がない中、現れたのは一本の大きな角がついているウサギの魔物。

ホーンラビットだ。

脚力が凄まじく、高い殺傷能力を持つ魔物ではあるが、草食ゆえにこうして高地に生息している。

角での攻撃は威力が高すぎるあまり、突き刺した角が引っこ抜けず、そのまま息絶えるホーンラビットがいるほど。

くれぐれも気をつけないといけないと言われているが、まぁ俺の場合は完全に不意を突かれても避ける自信がある。

それに、肉質が柔らかくて美味いからな。

今日のご飯には困っていたし、ここで遭遇できたのはありがたい。

ということで気配を消し、呑気に歩いているホーンラビットを後ろから短剣で仕留めた。

一撃で絶命させ、そのまますぐに血抜き処理を行う。

まだ時間的には散策する余裕はあるが、ホーンラビットを持ちながら歩きたくないため、キャンプに戻るとしよう。

ホーンラビットと一緒に食べる山菜を採りながら帰ってきたのだが、テントの中ではエンペラが爆睡していた。

マフラーをハンモックのようにして、心地よさそうに寝ている。

無理やり連れてきた形だし、別にどれだけゆっくりしていてくれてもいいんだがな。

移動中の鞄の中でも寝ていたわけだし、単純に長時間眠れることが羨ましいと思ってしまう。

最近は年齢のせいか、さらに眠りが浅く短くなったからな。

職業柄、元々長時間眠れなかったんだが、休みの日は一日眠ることはあった。

今ではできない芸当を懐かしく思いながら、俺はホーンラビットの調理を行っていく。

肉の中までちゃんと火が通り、別で作っていた山菜のスープと揚げ物も完成。

山頂で、それも即興で作った割には豪華な夕食ができた。

完成した料理を眺めながら満足していると、背後から視線を感じて振り向く。

「随分と美味しそうな食事だな」

「起きたのか。完成と同時に目が覚めるとは、本当にタイミングがいい」

「美味しそうな匂いがしたから目が覚めた。私も食べていいのか?」

「片付けの手伝いをするなら食べてもいいぞ」

「…………迷うが、さすがに腹も減っているし仕方がない」

最低限の譲歩のつもりだったが、悩みに悩んでから、エンペラは仕方ない様子で了承した。

後片付けだけで食事にありつけるのだから、普通は即答だと思うんだけどな。

「こっちがホーンラビットの焼肉で、そっちが山菜のスープと揚げ物。スープはホーンラビットの肉も入っているから、出汁が出ていて美味いと思うぞ」

「葉っぱはいらない。肉だけ食べたい」

生意気すぎる言葉を放ったあと、本当に肉だけを食い始めた。

偏食なのは健康的にどうなのかと思うが、まぁ魔物だし大丈夫なんだろう。

「――美味い! ジェイドはこんなに美味い料理が作れるのか」

「味付けて焼いただけだけどな。肉よりもスープのほうが美味――」

「葉っぱはいらない」

食い気味で拒否してきたエンペラにイラッとしつつも、俺も食べ尽くされる前に焼肉を食べることにした。

美味いとされるだけあり、処理も完璧に行ったから確かに美味い。

味付けは最低限だが、それも良い方向に転がっている気がする。

自分で作ったキャンプ飯に大満足しながら、エンペラと競い合うように食べていると……南西の方角から近づいてくる何かの気配を察知した。

食べる手を止め、高速で近づいてくる強い気配に集中する。

まだ遠すぎて視認はできないが、エルダーワイバーンの可能性が高い。

できれば食事中はやめてほしかったが、初日にいきなり遭遇できそうなのは非常にツイている。