軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その60

エンペラの能力を試した翌日。

いつもならお店の営業時間なのだが、今週は久しぶりの休業。

一週間に二日しか営業しないため、休業するのがかなり怖くもあったんだが……流石に常連さんもついてきたからな。

休んでも大丈夫と判断し、今週末はゆっくりと過ごさせてもらう。

目を覚ましたのも昼前であり、体を伸ばしながらまずは筋トレから。

一通り汗を流し、シャワーを浴びて目を覚ましたところで、スタナとの待ち合わせ場所に向かう。

楽しみだったこともあり、予定の時間である正午よりもだいぶ早く着いたのだが、時計台の前にはすでにスタナの姿があった。

早すぎる到着に驚きつつ、俺は早足でスタナのもとへと向かう。

「スタナ、待たせてしまったか?」

「ジェイドさん、こんにちは! 随分と早かったですね!」

「楽しみだったから早く来たんだが、まさか先に着いているとは思っていなかった」

「私も楽しみだったんですよ! ジェイドさんも早く来てくれたので、早めに着いて良かったです!」

「スタナも楽しみにしてくれていたなら嬉しい」

花が咲くような笑顔を見せてくれたスタナに、俺も自然と口角が上がってしまう。

あまり感情を表に出すのが得意じゃないため、表情がコロコロと変わるスタナと一緒にいるのは本当に楽しい。

「私も嬉しいです! 早く集まったことですし、早速出発しましょうか!」

「行きたい場所は決まっているのか?」

「はい! まずは最近ヨークウィッチにお店を出した有名店に行きませんか? 混むとの話でしたので、早い時間に行きたいと思っていたんです」

「有名店? 知らなかったが、興味はあるな」

「なら、決まりですね。案内しますのでついてきてください!」

スキップしそうな勢いで移動し始めたスタナの後についていき、最近オープンした有名店とやらを目指す。

自分の店に手一杯だったこともあり、ヨークウィッチの街事情には疎くなってしまっているな。

配達をやっていた頃は、否が応でも街のことを知ることになっていたため、ヨークウィッチには誰よりも詳しい自負があった。

今もまだ詳しい自信はあったんだが、街の移り変わりというのは早い。

しみじみとそんなことを考えていると、どうやらもう着いたようだ。

十数人が並んでおり、比較的渋いおっさんばかり。

「ここが例のお店です! 『モイスアワー』というお店で、主に魔物の食材を取り扱っているらしいですよ」

「へぇ。そんな尖っているお店なのか。混んでいるということは需要もあるんだな」

渋いおっさんばかりなのも頷けるし、渋いおっさんだけで行列が形成されているのも期待大。

店内での飲食は行っていないこともあり、行列のわりに意外と早く中に入ることができた。

お店はエキゾチックな内装で、野性味あふれる匂いが充満しており、お世辞にも居心地が良いとは言えない。

ただ、売られている食材の質がいいことはすぐに分かった。

「人気店なだけあって、商品のクオリティが高いな」

「へぇ! ジェイドさんは質も分かるんですね!」

「一応調達を行っているからな。美味しそうなのを適当に買っていくか?」

「買っていきましょう! 今日の夜は魔物食パーティーです!」

片腕を突き上げ、ノリノリなスタナ。

周りの注目を集めているため、少しだけ恥ずかしい。

スタナに落ち着くように小声で注意をしつつ、食材選びを行っていく。

とはいえ、食べたことのない魔物ばかり。

名前は聞いたことがある魔物もいるが、食べられること自体を今初めて知った。

何が美味しいのかも分からないため、各々二種類ずつ食べてみたい食材を選ぶことにした。

俺が重視するのは、どれだけ処理を完璧に行えているかの一点のみ。

何がなんだか分からないため、こんな理由で決めるのがいいと思う。

基本的に処理が上手な食材が並ぶ中、特に処理のうまくいっている食材を手に取っていく。

仕入れ先の技量が高いのか、とにかく食材の鮮度が高いな。

「ジェイドさん、もう選び終わったんですか!?」

「どれも質が高いからな。すぐに選び終わった」

「私も早く選ばないとですね! えーっと、この食材は美味しそう! ですが、ちょっと色味が気になります……」

すぐに選ぶと言ってから約十分。

しっかりと吟味して選び終え、購入したい食材が決まった。

「お待たせしてすみません。ジェイドさんは何の食材を選んだんですか?」

「いや、名前は分からないものばっかだ。直感で選んだような感じだからな。スタナは何の魔物なんだ?」

「私はウマウマスネークとハチミツベアー、それからチギレチキンの三種類のお肉ですね!」

じっくり悩んだだけあって、確かにスタナの選んだ食材は美味しそう。

実際に美味しいかは夜の楽しみにしつつ、俺たちはお金を払って『モイスアワー』を後にした。

人気店だけあって、なかなかに面白いお店だったな。

マイナーどころを攻めているだけでなく、品質も良かったのも高評価。

個人的にはかなり学ぶところがあった。

「予想以上に面白いお店だった。紹介してくれてありがとう」

「いえいえ! 私が行ってみたかったお店だったので! それでは買った食材は夜ご飯のお楽しみにしつつ……お昼ご飯を食べに行きましょう!」

「賛成だ。さすがにお腹が空いた」

「私もです! 食材を選んだからですかね?」

そんな雑談に花を咲かせつつ、スタナおすすめのお店で昼食を食べた。

その後は劇場へと赴き、舞台劇を鑑賞。

夜はお店へと戻って、エレーネとエンペラも交えて魔物食パーティーを行った。

魔物食はどれも絶品であり、店主が気になった俺は、また近いうちに『モイスアワー』に行くことを決めたのだった。