軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その58

無事にエンペラの従魔登録もできたし、今週のやるべきことはこれで終了。

週末まであと二日もある上に、今週は店を開かないからな。

久しぶりにゆっくりできるわけだし、スタナと王都をのんびり巡りたいところだが……平日はスタナも仕事があるし、王都巡りは週末の二日間に当てよう。

そうなると、週末までの二日間は完全に暇なわけで、マイケルに貸しも作ったし、エイルを探しに行くか?

近場で手に入りそうなものを調達しに行ってもいいんだが、調達したらしたで営業したくなりそうだしな。

色々と考えた結果、俺はエイルを探しに行くことに決めた。

逃げ出すとしたら、まぁ北の山が第一候補だろう。

昔フィンブルドラゴンを倒した山で、エイルとはそこで初めて出会った。

以前も籠もっていたことを考えると、現実逃避をするならあの場所だろうし、まずは北の山に向かってみよう。

エイルを捜索するついでに、エンペラの能力についても試したいところ。

「エンペラ、これから北にある山に行くんだが、ついてくるよな?」

「ん? ……ここに残っていいなら残りたい。環境の変化で疲れているからな」

エンペラはそう言いながら、スタナのマフラーをハンモック代わりにして寝ている。

ついていくか尋ねた手前、無理やり連れて行くのはナンセンスかもしれないが、ここは連れて行く。

「一応聞きはしたが、強制だ。鞄の中に入っていていいから準備してくれ」

「なら、最初から聞くでない。このモフモフは持っていっていいのか?」

「俺のじゃないから許可は出しづらいが……まあ大丈夫だろう」

スタナなら許してくれるだろう。

エンペラはハンモック代わりにしていたマフラーを鞄の中に入れると、マフラーに包まって眠り始めた。

早くも鞄の中での移動に慣れ始めた様子。

エンペラ自体が大した重さじゃないから構わないが、今のところは荷物持ちどころか荷物が増えた印象しかない。

早いところ荷物持ちとしての力を見たいところだが、今は急かさずに北の山へ向かおうか。

店に残っていたエレーネに一言声を掛けてから、ヨークウィッチを出発して約五時間。

ようやく北の山の麓に到着した。

今のところエイルの気配は感じられず、北の山に誰かがいる痕跡も見当たらない。

逃げ出したのが結構前だし、もし頂上付近にいるのなら、ある程度登らないと確認できないな。

「グレアム、目的地に着いたのか?」

「いや、これから山に登る。揺れるだろうから、酔うなら早めに鞄から出ておいてくれ」

「酔わんから大丈夫だ。着いたら呼んでくれ」

ひょっこり顔を出したと思ったら、またすぐに引っ込めたエンペラ。

俺は気を取り直して、北の山の登頂を目指して歩を進める。

以前登ったときと違い、雪が積もっていないから登りやすさは段違いなんだが、魔物の動きは活発なようで、ここまでかなりの数の魔物に襲われている。

エンペラは気配を消しておらず、普通なら襲われないほどの力量差があることが戦う前から分かっているはずなのに、八割方襲われているのが厄介極まりない。

それなりの魔物なら向こうから避けてくれるんだが、会敵する魔物が弱すぎて逆に面倒なことになっている。

蚊柱にまとわりつかれているような感覚になりながらも、山の中腹まで登ったところで……上に強い人の気配を感じ取った。

この荒々しい感じの気配は間違いなくエイル。

特に情報収集もせず、“いるとしたら北の山だろう”という適当な考えでやってきたが、まさか本当にいるとは思わなかった。

まずはエイルのところに向かい、下山するように説得。

説得が終わったら、ついでに魔物の素材なんかをエンペラに運ばせよう。

そんなことを考えながら北の山を登っていくと、前回も籠もっていた洞穴に辿り着いた。

エイルは今回もこの洞穴を拠点にしているようで、中からエイルの気配を感じる。

俺は何気なく、その洞穴に足を踏み入れたのだが……。

「おらああああ!! ぶっ倒す!!」

俺の足音を聞いたエイルが、いきなり斬りかかってきた。

流石に襲いかかられるとは想定していなかったため、かなり不格好な避け方になってしまい、鞄の中にいたエンペラが軽く押し潰された。

「――うがっ。グレアム、急になんなんだ」

「おらああああ! 避けるなー! ――ん? グレアム?」

エンペラが不満げに漏らしたその言葉に反応し、ようやくエイルの動きが止まった。

連れ戻されたくなくて襲いかかってきたのかと思っていたが、この反応からして、俺と気づかずに襲いかかってきていたようだ。

「エイル、俺だ。急に襲いかかってくるな」

「えっ? 本当にグレアムじゃねぇか! 変な気配だったから、ヤバい魔物かと思っちまった!」

そう言いながら、嬉しそうに俺の背中をバンバン叩いてきた。

……なるほど。エンペラが気配を垂れ流していたから、エイルはいきなり斬りかかってきたわけか。

俺ほどの索敵能力はないものの、エイルは獣のように勘が鋭い。

変な気配に敏感だからこそ、攻撃してきたんだな。

「エイルが感じた気配は俺の従魔だ。エンペラ、出てこい」

「扱い雑すぎる。まずは押し潰したことを謝れ!」

「ごめん。ほら、出てこい」

適当に謝ってから、エンペラを鞄の中から出す。

エイルは目をまん丸くさせながら、鞄の中から出てきたエンペラを興味深そうに見つめている。