作品タイトル不明
番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その37
俺とスタナとイレーネ。
それから、どこからか嗅ぎつけてきたレスリーの四人で歓迎会を行った。
レスリーがいると主役が入れ替わってしまうため、最初は鬱陶しく思っていたんだが、やはり場を温める才能はピカイチ。
ノリの軽いレスリーがいたおかげで、イレーネの笑顔が多く見られる歓迎会になった。
そんな歓迎会のおかげで、二日間の営業は無事に終えることができた。
やはり一人増えただけで格段に楽になったし、イレーネを迎え入れることができて本当に良かった。
二日間しか営業しないことだけが申し訳ないが、イレーネにはスタナに代わって帳簿や在庫確認も任せているため、営業日以外にも働けるようにはしている。
忙しい分、他よりも給料は多めに払っているため、イレーネが“二日間だけでいい”と言うなら、無理にやらせるつもりはない。
そんなこんなで、イレーネを交えた新体制の【シャ・ノワール】が動き出した。
従業員を路頭に迷わせないためにも、俺は新たに商品調達へ向かうことにした。
行き先は既に決まっており、前回と同じく帝国を目指す。
スミーが教えてくれた大盗賊の秘宝を狙いつつ、エアトックの街に向かうのが今回の目的だ。
大盗賊が潜伏していたとされるブルーザーの街と、エアトックの街は近いため、まずはエアトックに行く。
秘宝については曖昧な部分が多いが、ブルーザーに近いエアトックなら、より有力な情報を得られる可能性が高い。
ということで、俺は準備を整えてから、再び帝国へと向かったのだった。
数日前に通ったばかりということもあり、何の感情も揺れ動くことなく帝国に入国。
情報が不確かなため、一分一秒が惜しい俺は、全速力でエアトックの街まで走った。
帝国に入国してから丸一日。
ようやく見えてきたのは、懐かしのエアトックの街。
今となっては、帝都よりも感情が揺れ動く気がする。
自然と足早になりつつ、俺はまっすぐ詰所に向かった。
いつもの詰所の中には、以前会ったときと全く変わらない二人の姿があった。
その二人とは、もちろんセルジとアルフィ。
詰所にはいるが、仕事をしているようには見えず、楽しそうにカードゲームで遊んでいる。
兵士長に見られたら、絶対にブチ切れられる光景だろう。
そこまで考えたところで、一ついい案が浮かんだ。
俺は二人に気づかれないように扉の前まで移動し、勢いよく扉を開けて声を張り上げる。
「お前たち! 仕事をせずに何をしているんだ!」
「ひゃー! す、すみません! 仕事してましたー! ……って、ジェイドさん!?」
「……ふざけんな、ジェイドかよ! 久しぶりに来たと思ったら趣味の悪い悪戯しやがって」
分かりやすく驚いたアルフィに対し、静かにカードを隠したセルジ。
二人らしい反応を見ることができて、俺は大満足だが、ちょっと悪戯が過ぎたかもしれない。
「驚かせて悪かったな。あまりにも仕事をしていなさそうだったから、つい」
「つい――じゃありませんよ! 本気で焦りましたからね!」
「本当だよ。またトイレ掃除と罰走を覚悟したわ。……まぁでも、よく帰ってきたな」
「ですね! ジェイドさん、お久しぶりです!」
「ああ。久しぶり」
アルフィとセルジは笑顔を見せると、手を差し出してくれた。
俺はその手を握り返し、久しぶりの再会を握手で噛み締める。
「ジェイドさんが元気そうで良かったです! 全然訪ねてこないので、セルジさんなんか特に心配してたんですよ!」
「別に心配なんかしてねぇよ。ジェイドが強いのは知っているしな」
「来るのが遅くなって悪かった。行こう行こうとは思っていたんだが、いろいろと忙しくて時間が取れなかった」
「忙しいというと、道具屋の仕事ですか? 道具屋で働いているって言ってましたもんね!」
「ああ。今は新しい店舗の店長を任されていて、そのこともあって一気に忙しくなった」
二人にはいろいろと協力もしてもらいたかったし、もっと早めに訪ねたかったんだけどな。
軌道に乗るまでは、エアトックまで遠征できなかった。
「店長ってすごいですね! さすがはジェイドさんです!」
「店長が遠出しても大丈夫なのか? ……いや、店長だからこそ、店を空けてもなんとかなるのか?」
「いや、俺の店は週末の二日間しか営業していない。だから、こうしてやって来られたってわけなんだ」
「週二日間だけ!? それじゃ、利益が全然出ないじゃないですか! 家賃とか光熱費とかの方が上回るんじゃないですか?」
「いや、意外にもお客さんが来てくれるから黒字でやっていけている。それに、俺がこの手で調達したものしか売っていないから、仕入れにかかる費用がほぼゼロなんだ」
「なるほどな。五日間は商品の調達をして、二日間で売るって感じなのか。ジェイドなら貴重なアイテムを入手できるだろうし、人気になるのも頷ける」
「冒険者の究極体みたいな感じですね! すごく面白そうです!」
アルフィは目を輝かせており、俺の営業スタイルに憧れを持ってくれている様子。
ただ、調達の期間が思っているよりも短いし、何も手に入れることができなければ収入はゼロ。
想像しているよりも大変なため、決してオススメはできない。
まぁアルフィも、自分でやりたいとは思っていないだろうけどな。