軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その26

僕の名前はカルビン・フォックス。

村の中では一番強く、その慢心もあって、僕は十五歳の時にこのヨークウィッチにやってきた。

両親の後を継いで畑仕事をやるなんて人生は嫌だったし、僕の実力があれば一攫千金も掴むことができると本気で思っていた。

……ただ、人生はそんなに甘くはないということを、僕は冒険者になってすぐに痛感させられることになる。

村の中では一番強かったけど、冒険者の中では下の下。

お金も持っていなければ、この辺りの土地勘もない。

その上で実力も下の下となれば、もちろん僕とパーティを組んでくれる人なんてほとんどいない。

様々な人に断られ続け、時には断られるついでに殴られたりカツアゲをされたりしながら、ようやくパーティを組めたのは、僕と似たような境遇の子だった。

名前はトムとミック。

トムもミックも僕と同じく、田舎の村からやってきた冒険者であり、僕と同じように都会で洗礼を受けた冒険者。

意気投合してパーティを組んだというよりかは、心を折られた者同士で身を寄せ添ったという方が正しいと思う。

そんなパーティでは最低ランクの依頼をこなすのが精一杯であり、そしてその最低ランクの依頼の報酬額ではその日の食費と安宿代しか稼ぐことができない。

僕たちは弱いからこそ、お金を貯めて強い武器や防具を買わないといけないんだけど、その日暮らしをするしかないという悪循環に陥ってしまっているのだ。

そんな生活をし始めてから、既に約三年が経ってしまっている。

故郷に戻って、両親と一緒に畑仕事をしたいと思った回数は数百は確実に超えている。

それでもその決断に踏み切れないのは、無理を通して飛び出てきたという負い目から。

トムもミックも同じような境遇であり、その境遇もあって一生この生活から抜け出せない。

最近はそう思うようになっていたんだけど……トムが面白い噂話を持ってきた。

その面白い話というのは、ヨークウィッチに最近できた道具屋の話。

珍しい上に質が高いものが売られており、更に値段も格安で売られている道具屋。

そんなお店があるのかどうかすら、僕はにわかに信じられなかったんだけど、調べたらすぐにそのお店が見つかった。

『シャ・ノワール』という有名店が三号店としてオープンしたところらしく、特に面白いと思ったところは道具屋なのに週に二日しか営業していないところ。

道具屋が週二日営業は信じられないけど、信じられないことをやっているからこそ、珍しく質の高いものを格安で売っているという情報も信憑性があるのではと僕は思い始めた。

今の僕たちが一発逆転するには、死を覚悟して実力に見合わない強敵を倒しにいくか、この嘘としか思えない話を信じて格安で良い武器を購入するのかどちらか。

もし良い武器が売っていなかったとしても、『シャ・ノワール』で買ったものを別のところで買い取ってもらい、その差額で武器を新調することだってできるかもしれないからね。

そんな転売をしてもいいのかという思いはあるけど、とにかくこの地獄みたいな生活から抜け出すため、噂を信じて『シャ・ノワール』に向かうことに決めた。

僕が『シャ・ノワール』についたのは、朝の四時。

朝が早ければ早いほど良いという話だったから、半信半疑でこの時間帯にやってきたのだけど……本当にこの時間から人が並んでいるのが見えた。

あくびが出そうになっていたのも驚きで止まり、僕はその列の最後尾に並ぶことにした。

ちなみにトムとミックはおらず、二人はこれからゴブリン狩りに向かう。

その日暮らしである故に、こうして『シャ・ノワール』に行くと決めても冒険者業を休むことができないのだ。

冒険者は自由な職業と聞いていたんだけど、常に命の危険を感じながら怪我すらしてはいけないというプレッシャーの中、その日の生活費を稼ぐだけの――世界一不自由な職業だと思う。

僕の代わりに依頼をこなしているトムとミックに感謝をしながら、開店時間まで待っていると、朝の六時頃に店の中から綺麗な女性が出てきた。

整理券を渡され、開店時間にもう一度訪れるという流れらしい。

僕の番号は10番。

朝四時から並んでいたのに、前に九人もいたことが衝撃だけど、僕の後ろには更に百人以上も並んでいたため、きっと購入することはできるはず。

噂が事実であったこと、それから商品を買うことができそうなこと。

一つ問題点を挙げるとしたら、今の手持ちで足りるのかどうかの問題。

安いとは聞いてきたけど、それでも珍しいものならそれなりの値段がするかもしれない。

麻袋を覗き、必死に貯めた銀貨五枚分のお金を確認する。

ちゃんと銀貨五枚分はあったけど、銭貨や銅貨しかないお金を改めて見て、急に不安になってきた。

ただ、ここまできて引き下がるということはできないため、覚悟を決めて『シャ・ノワール』に行くしかないのだ。