軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その25

ダンジョン内で一泊してから、俺たちは無事にダンジョンから脱出することができた。

大荷物を持てないということで、ゴールドスライムのドロップアイテムとシュバルツミミックの宝しか持って帰ってきていないが、それでも十分すぎる量のアイテム。

エイルと分け合ったとしても、フライレイクバードの時に次ぐ収穫だったと思う。

残念なのがあまり苦戦をしなかったため、スタナへの土産話を持って帰れなかったこと。

そこだけが唯一の心残りだ。

「うわー! もうヨークウィッチについちまったよ!」

「ん? 何も問題なく帰って来られてよかっただろ」

「ギルドに戻ったらまた雑務をしなくちゃいけないからな! あーあ、ずっと冒険してたいぜ!」

「なら、冒険者ギルドを辞めて、冒険者に戻ればいいんじゃないのか? 元は冒険者だったんだろ?」

「それはそれで困る! ギルド長は給料もいいし、色々なところでの待遇もいいからな! 今回のダンジョン攻略だって、ギルド長特権ですぐに入ることができたんだぜ?」

「そうだったのか? それは知らなかった。というか、変なところでギルド長の特権を使って、またマイケルに怒られないか?」

「大丈夫だ! 気づかれないからな!」

そう言っていたエイルだったが、ギルド長室に戻るなり、マイケルに怒られていた。

どうやら本当にギルド長かどうかの確認がすぐにいったようで、ダンジョン攻略をしている間にはマイケルに話が伝わっていたようだ。

「くっそぉ……。あれほど確認はしなくていいってのに!」

「ギルド長のように勝手に特権を使うようなことがありますから、確認は絶対に取るようになっているんです。教えておきますが、ギルド長がこれまでギルド長の特権で利用した全てを私は把握していますからね」

「それ本当かよ! なんだよ、ギルド長特権って使えないじゃねぇか!」

「バレないように使うのが無理というだけであって、ギルド長の特権は使えるものです。というか、不用意にギルド長特権を使うのはやめてください」

そこからもキッチリ叱られているエイルを見ながら、俺は今回の成果を分けることにした。

単純な二等分はできないため、同等の価値になるように仕分けていく。

その上で、『シャ・ノワール』で売りたいものを固めつつ、きっちり二等分に仕分けた。

あとはエイルがもう一方を選んでくれれば話は早い。

「残していた仕事も私がやったんですからね。その上で他の街で好き勝手やっているギルド長の尻ぬぐいをさせられる私の身にもなってください」

「説教中のところ悪いが、報酬の仕分けが終わった。価値的にはキッチリ二等分にできたと思うが、どっちがいいとかあるか?」

「おー、ジェイド! ナイス助け舟だぜ! まぁ報酬は……いらねぇんだけどな! ジェイドの仕入れを手伝うって話だったし、全部持っていっていいぜ!」

まだ続いていたマイケルの説教をぶった切り、エイルに報酬のことを伝えたのだが、返ってきたのは思いもしなかった言葉。

絶対に分け前を求めてくると思っていただけに、普段はおてんばな悪魔にしか見えないエイルが天使に見えてくる。

「本当に分け前なしでいいのか?」

「絶対にダメです! わざわざ抜けてまでついていったのですから、働いた分ぐらいはしっかりと受け取ってください」

エイルの天使のような提案を止めてきたのはマイケル。

余計なことを言ってきたマイケルを睨みつつ、今ならエイルと気持ちがリンクしている気がする。

「エイルがいいというならいいんじゃないか? というか、マイケルには関係ないだろ」

「いや、関係大アリだよ。ギルド長の仕事を代わりにやっていたのは私だからね。しっかりと冒険者ギルドとして報酬をいただきますよ」

そう言われてしまったら返す言葉もなく、予定していた報酬よりも少なくはあったが、マイケルにしっかりと取られてしまった。

一瞬、全てもらえるかもしれないと思ってしまっただけあり、少しもったいなく思えてしまうが……まぁ店に置く分としては十分すぎる量。

「マイケルに取られてしまったから、エイルもそこから報酬を受け取ってくれ。とにかく今回は助かった」

「俺の方も助かったぜ! 冒険者ギルドの窮屈な仕事よりも楽しかったしな!」

「また今度誘うから、その時も協力してくれると助かる」

「もちろん! 近いうちに絶対に誘ってくれ! 必ず行くからよ!」

「構いませんが、今度は仕事はしっかりとやってもらいますからね」

俺はそんな二人を見て笑ってから別れを告げ、『シャ・ノワール』に戻ることにした。

今回はエイルがいたこともあって、戻ってくるのが早かった。

営業日まで時間はあるし、今回もスタナとゆっくり過ごすことにしよう。

俺はスタナのことを考えながら、『シャ・ノワール』に戻ってきたのだが……店の中にいたのはレスリーだった。

まぁ時間帯的にも、スタナはまだ治療院で働いているだろうし、店にはいないとは思っていたが、スタナとレスリーとではあまりにも違いすぎるため勝手にげんなりしてしまう。

店に入るなり、げんなりした俺を見て、レスリーはいきなり絡んできた。

「おい! なんで俺の顔を見てげんなりしてんだぁ!? ジェイドが戻ってくるのを待っていたんだぜ!」

「スタナがいると思っていたから、少しげんなりしちゃっただけだ。レスリーと会えて嬉しくはあるぞ」

「本当かよ! まぁいいや! それより……つい最近、いい酒が手に入ったんだよ! 一緒に飲もうと思って待っていたんだわ!」

「何か用があると思ったら酒か。相変わらず、他の人には断られたのか?」

「ヴェラを誘ったけど、本当に来やしねぇ! あいつはジェイドがいないと参加しないからな!」

「俺がレスリーの介護をすると思っているから、俺がいるときは参加するんだろうな」

「ん? なんだ介護って! そんなことを思っていたのか!」

何故か怒っているレスリーだが、あれは絶対に介護だからな。

俺も店まで送り届けるのは億劫な時が大半だし、ヴェラが避けるのもよくわかる。

とりあえず……酒を持ってきたとのことだし、せっかく来てくれたのだから久しぶりに付き合うとしよう。