軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その16

翌日の早朝。

寝坊をしないように注意していたこともあり、しっかりと起きることができた。

日課のトレーニングを行い、シャワーで汗を流してから、俺はフリーマーケットに向かうため部屋を出た。

トレーニングを行っている間に日が昇ったようだが、まだ人はまばらでほとんどいない。

出店の準備をしている人はちらほらといるため、俺は一応どんな商品を売りに出そうとしているのかを確認しながら、昨日決めた通り『白峰堂』を目指して歩みを進める。

素人が大半のフリーマーケットなだけあり、商品は陳腐なものばかりでお眼鏡にかなうものは中々ない。

その中でも数点は気になったものがあったものの、出店を待って買うほどのものではなかったため、俺は一直線で『白峰堂』までやってきた。

着くまでにもう少し時間がかかる想定だっただけに、まだ客の姿は一人もいないどころか、出店の準備すらしていない『白峰堂』。

こうなると、もう少し他の店の様子を窺いたくなるが……せっかく一番最初に来たのだから、並び続けるとしよう。

そんな考えから『白峰堂』で並ぶこと約二時間。

ようやく店の中から店主が出てきて、物を並べ始めた。

ちなみにこの二時間の間に、二十人ほどの長蛇の列になっている。

列の後方には、昨日喫茶店で話をしていた二人組のおっさんの姿もあり、例年以上に人が多いことを嘆いている話し声も聞こえてきた。

「お待たせいたしました。それでは先頭の方からご購入をお願いします。お一人様三点までとなっておりますので、ご了承のほどよろしくお願い致します」

物腰の柔らかそうな店主からの説明を受け、一番前に並んでいた俺から商品の購入を始める。

『白峰堂』は武器屋のようで、並んでいる品は武器や防具に加えて、砥石や手入れ用の油なんかの小物類も多数置かれている。

商品は一律で三割引きといった感じの値段となっており、おっさん二人組が喫茶店で話していた通り、大当たりはないけど無難に質がそこそこ良いものが安く売られているといった印象。

ちなみに商品を並べている間にある程度の目星をつけていたため、そう悩まずに決めることはできるはず。

私は年季の入った小手と、真っ黒な盾、そして真ん中に置かれていた小太刀を手に取った。

小手と盾には何の反応もなかったが、最後に手に取った小太刀を手にした際に、後ろに並んでいた人たちから落胆の声が聞こえてきた。

真ん中に置かれてあったし、明らかに他の商品と比べても段違いで質が高い。

恐らくだけど、『白峰堂』の今回の目玉はこの小太刀だったのだろう。

材質は……恐らくゲルバシャークの牙とミスリルが混ぜられたもの。

この小太刀を打った人の腕も相当いいようで、刀身には覗き込んだ俺の顔がはっきりと映るくらいピッカピカ。

先頭じゃなかったら確実に購入できていなかっただろうし、うろちょろせずに待ち続けた判断は正しかった。

年季の入った小手と漆黒の盾も中々の逸品だし、一発目から良い買い物ができたと思う。

「合計で白金貨十枚となります」

「ああ。確認してくれ」

「……確かに白金貨十枚頂きました。ご購入ありがとうございました。フリーマーケット以外でもどうぞ御贔屓にしてください」

代金を支払った後、そんな風に声を掛けられた俺。

多分だけど通常営業の時には尋ねないため、少し申し訳ない気持ちになりながら『白峰堂』を後にした。

ちなみに、この後はそのまま冒険者ギルド前に向かい、掘り出し物を探す予定だったのだが……。

予想以上に『白峰堂』での買い物が早く終わった上、良い買い物ができたため、予定を変更してフリーランの爺さんのところに向かう。

喫茶店にいたおっさん二人の情報が正しかった訳だし、フリーランの爺さんのところもきっと間違いない。

俺がそのフリーランの爺さんを知らないことが懸念点ではあるものの、喫茶店にいた二人のおっさんは先ほど『白峰堂』で見かけた。

すぐに宿屋に戻って購入したものを置き、二人を尾行すればきっとフリーランの爺さんの店に辿り着くはず。

尾行すると決めた俺は、すぐに宿屋へと戻ったのだった。

『白峰堂』に戻ってきた俺は、バレないように遠くから喫茶店のおっさん二人組の後をつけた。

『白峰堂』での成果に不満があったようで、そのままの足でどこかへ向かったおっさんたちの後を追っていくと、王都の外れの方にあるとある民家の前で立ち止まった。

フリーマーケットといった感じではないが、あそこがフリーランの爺さんとやらの店なのだろうか。

家の中に入って行ったのを確認してから、俺も家に近づいて中の様子を確認することにした。

どこからどう見ても普通の民家なのだが、家の中には様々なものが置かれており、どうやら自分の私物を商品を売りに出している様子。

出店という形ではなく、自分の家の中でフリーマーケットの形式を取っているようだ。

尾行をしなければ絶対に見つけることはできなかったし、見つけた今でも入っていいのか迷うほど。

ただ、ここで立ち往生していても仕方がないため、俺は一つ深呼吸をしてから、フリーレンの爺さんの家の扉を叩いた。