軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その8

体が大きいため、今のところ見失わずに追うことができているが……一体どこに向かっているのか分からないのが怖い。

それに加えて、空は障害物がないのに対し、陸を移動している俺は障害物だらけで追いかけるのがやっと。

こうなることは目に見えていたため、本当はフライレイクファルコンが獲物を狙っているところを逆に仕留めたかったのだが、姿を見せてから獲物を狩るまでの速度もそうだし、グラッグ海のど真ん中に着水されてしまったら何も手出しすることができなかった。

今更ながら、どうすれば良かったのかを色々と考えるが、来ると分かっていても今の手元にあるアイテムだけじゃ厳しかっただろう。

何かしらのトラップや遠距離武器を持ってきていれば、色々と対策を講じられただろうが……それでも来るタイミングが完璧に分かっていないと無意味。

結局、こうして見失わないように追いかけるのが最善手という結論に辿り着き、俺は気持ちを新たに追いかけ続けた。

大空を飛行するフライレイクファルコンを追いかけて約二時間が経過。

あれだけ大きな獲物を持っているため、そう長くは飛行しないと高を括っていたのだが、予想以上に長い時間飛び続けている。

未だに一度も陸地には降りておらず、大きな翼を羽ばたかせて速度も変わらずに飛行している状態。

俺も何とかついていけてはいるが、大きな川や山なんかが立ち塞がった時点で追うことは不可能となるため、早いところどこかに降り立ってほしい。

そんな思いで走り続けていると、一定の速度で飛行していたフライレイクファルコンの動きに変化があった。

急に失速し始めており、旋回しながら一定の場所をぐるぐると回り始めたのだ。

その動きを見て、近くに降りられる場所がないかを探していると気づいた俺は、広い場所を探し先回りすることに決めた。

あれだけの巨体でありながら、両足でガッチリと掴んでいるアルデンギウスも大きいため、着陸できる場所は限られている。

素早く木の上に登り、そこから広い原っぱを発見。

フライレイクファルコンよりも、先に原っぱに辿り着くべく――全速力で向かった。

久しぶりに足の毛細血管が切れる感覚を味わったが、そのお陰もあってフライレイクファルコンよりも先に原っぱに到着。

そして、俺の狙い通り……少し遅れてフライレイクファルコンが俺の真上から降りてきた。

「……近くで見ると圧巻の光景だな。そりゃ下手な冒険者は簡単にやられてしまうわけだ」

翼が大きいことからも、想像の倍は大きい。

つつかれただけで体が弾け飛ぶだろうし、仮に伝説の剣を持っていようが、生半可な力じゃ羽毛に阻まれて体まで剣が到達しない。

人間と比べると、生物としての圧倒的な力の差を感じるが……だからこそ燃えてくる。

それに、ここでフライレイクファルコンを仕留めることができれば、フライレイクファルコンだけでなくアルデンギウスまで手にいれることができるからな。

俺はやる気に満ち溢れ、今すぐにでも殺しにかかる気満々だったのだが――。

対するフライレイクファルコンはというと、剣を構えている俺の存在に気づいていながら、片足立ちで体を丸めるようにしてくちばしを羽毛に埋めた。

つまるところフライレイクファルコンは……俺を前にして睡眠を始めたのだ。

あまりにも舐めた行動にスイッチがキレそうになりかけたが、フライレイクファルコンはこれまでの経験から人間は敵ではないという結論に至っているだけ。

獲物は既に捕らえているし、今回は見逃してやる。

この行動はそういう意味なのだろう。

これまでの経験を考えたらごく普通の思考ではあるが……ムカつくものはムカつく。

敵意を向けている俺の目の前で寝始めたことを後悔させてやろう。

まずは殺気や気配を漏らさないようにしつつ、呼吸を整えて集中力を高めていく。

そして――短く一つ息を吐き、暗殺者としてのスイッチを入れた。

体全体が頑丈な羽毛に覆われ、体全体が守られているように見えるが、体の揺れ、それから呼吸から、弱点に急所までも手に取るように分かる。

徹底的に教え込まれた技術は、人間以外にも応用が効く。

全ての片が付いた今となっては、クロにも感謝を伝えよう。

戦闘のスイッチを入れながらも気持ちが落ち着いたところで、俺は両足に力を込めて――全速力でフライレイクファルコンに斬りかかった。

先ほど以上に筋肉が損傷したのが分かったが、決して速度を緩めることなく、振り上げた剣を弱点目掛けて振り下ろす。

無防備な姿勢で眠っていたフライレイクファルコンだったが、流石は空の王者と言われるだけのことはある。

俺が近づく気配を察知して、反応を見せてきた――が、睡眠の姿勢を取ったのは舐めすぎていたな。

反応はしてきたが対応はできず、俺の振り下ろした剣は翼の付け根の部分を深々と斬り裂き、宙に大量の鮮血が舞い散った。

それからワンテンポ遅れて、甲高い鳴き声を発し、バサバサと大量の羽毛が鮮血に混じって舞う。

仕留められはしなかったが、かなりの大ダメージを負わせることに成功。

俺を睨むその目は、先ほどまでと違って敵意に満ち溢れており、ようやく俺を敵として認識した様子。

一発分のハンデを貰った形ではあるが、ここからようやく本気の真っ向勝負が始めることができそうだ。