軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第307話 二号店

レスリーから教えてもらった通りの場所に向かうと、一際人で溢れ返っている場所があった。

間違いなくあの店が【シャ・ノワール】だろう。

裏口から入ることも一瞬考えたが、シンプルに客として行ってみたい。

そんな理由から、行列に並んで一人の客として【シャ・ノワール】に行ってみることに決めた。

客層はバラバラであり、冒険者のような人から若い女性。

おじいちゃんおばあちゃんもおり、老若男女問わず並んでいる。

俺一人で並んでいても浮くことはなく、気楽な心持ちで並ぶこと約三十分。

ようやく店の入り口まで辿り着き、そんな俺を案内してくれたのはブレントだった。

「いらっしゃいませ。ようこそ【シャ・ノワール】へ。こちらの案内に沿って進んで――」

そこまで説明したところで俺の顔を見て、すぐに気づいてくれた様子のブレント。

素のヴェラが見たかったため、俺は人差し指を口の前に当てて静かにするようにジェスチャーした。

「ふふ、なるほど。そういうことですか。それでは、こちらの案内に沿って進んでください」

「ありがとな」

俺は色々と察してくれたブレントにお礼を伝えてから、【シャ・ノワール】二号店の店内に入った。

中はかなり広いのだが、客で埋め尽くされており、真横からではないと商品が見えないほど。

一度通り過ぎた商品はまた並び直さないと買えないということもあり、飛ぶように売れているのが分かる。

まず最初の商品棚は、どこにでもありそうな雑貨類。

薬草やら回復ポーションのような冒険者御用達のアイテムから、洗剤や食器といったような日用品まで幅が広い。

値段に関していえば……一号店と比べると高いが、メインストリートに店を構えていることを考えたらかなり安いと思う。

薄利多売というレスリーらしさがのこっていることにニヤケつつ、特に手を伸ばすことなく奥に進む。

次に売られていたのが、俺も開発を手伝った激安戦闘アイテム類。

未だに火炎瓶やら煙玉も売られており、更に別の種類の戦闘アイテムもいくつか増えている。

多分だが……ヴェラが開発したものだろう。

元冒険者の視点で考えられたアイテムであり、手軽さも突き詰められていて、俺が開発したアイテムに引けを取らないアイテム。

値段が値段ということもあり、日用品類と比べると明らかに品薄だ。

それから軽いアンティークものや、アクセサリーなんかの棚があり、最後はやはり魔道具。

ここまでに大量の商品をカゴに入れたであろうが、【シャ・ノワール】に来たら魔道具は外せない。

逆に魔道具を手前に置いてしまうと、他の商品が売れないって構図になるため、店の配置は売るために考えられた完璧な配置と言える。

俺は一人で感心しつつ、魔道具に目を向けた。

髪を乾かす魔道具に、掃除用の魔道具。

それから衣類を乾かす魔道具、あとは冷蔵ではなく冷凍専用の魔道具。

あとは自由に水を出すことのできる魔道具なんかもある。

飲み水を出す魔道具か。

これはシンプル故に盲点だったな。

水の魔石と火の魔石を用いた魔道具のようで、冷水と温水が自由に出せるようになっている。

コンパクトに仕上げられているし、出先なんかでも非常に重宝しそうな魔道具。

俺といたときはこんな魔道具の案を出していなかったし、完全なヴェラのアイデア。

素直に感心しつつも、どこか悔しい気持ちになっていると――聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

「こちらはスイッチ一つで温風と冷風を出すことができる魔道具。魔石の取り替えも簡単で、【シャ・ノワール】で買ってくれれば安くなる」

「へー! そうなんですね! 操作も簡単で、付け替えも楽なら……買っちゃおうかしら」

「ご購入ありがとう。サービスで魔石を――」

ヴェラとは思えないほど、流暢な喋りで購入を決断させていた。

俺は感心して、ニヤニヤしながら見ていたところ、ヴェラとバッチリ目が合った。

「…………あとはレジに持っていってください」

「はい! ご丁寧にありがとうございました!」

接客していた客をレジに向かわせた後、凄い勢いで俺の下に近寄ってきた。

そして目の前で立ち止まると……ジロジロと観察するように見てくる。

「…………本当にジェイド?」

「ああ、本当にジェイドだ。ついさっき帰ってき――」

俺が全てを言い終える前に、思い切り俺の腹をどついてきたヴェラ。

そして手を痛めたのか、殴った拳を押さえながら蹲った。

「……いったい。ジェイドのお腹、鎧より硬い。一体何が入っている?」

「普通に筋肉だけだが。それよりいきなり殴るな。行動が全て意味不明だぞ」

「急に帰ってきたから急に殴っただけ。……心配してたんだから、手紙の一つでも寄越せ」

「そんな長く滞在する予定もなかったからな。実際に早く帰ってきただろ?」

「だとしても、手紙の一つは寄越すのが普通」

「それはすまなかったな。しっかり手紙は書く」

「もう遅い」

ヴェラは呆れたようにそう言うと、今度は軽くお腹を殴ってきた。

心配してくれていたことがよく分かるし、さっきからずっとニヤニヤしているほど嬉しい。

とりあえず……裏に移動してから、ヴェラと話をするとしようか。