軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第303話 晴れやか

帝都を後にして約二時間。

今回は馬に乗っていなかったのだが、走ったため同じぐらいの時間でエアトックの街までやってくることができた。

ちなみに想定以上に早く事が済んでしまったため、大出を振って見送ってもらったのにもう会いに行くことへの恥ずかしさがある。

一瞬、会いに行くのは次の機会で――という考えも過ったのだが、流石にあれだけ世話になってお礼を言わないのはあり得ないと思い直し、ヨークウィッチに帰る途中にあるということもあって寄ることに決めた。

ゼノビアから返さなくていいと言われた帝国騎士の証明書を利用し、驚くほどあっさりと入門検査を突破。

まずは……詰所にでも顔を出してみるとしよう。

アルフィとセルジのことだし、きっと詰所でサボっているはずだからな。

一直線で街の東側の詰所へ向かい、中を覗いてみると……二人はだらしなく座っていた。

「暇ですねー。何か面白いことないですかね?」

「ないだろ。トランプでもやるか?」

「やりません。もう飽きました」

「じゃあ、昼飯賭けてはどうだ? 負けた方が昼飯を奢る。銀貨一枚までのものな」

「…………いいですね! 賭けとなったら面白そうです!」

勤務中の兵士から出る言葉ではないのだが、二人らしいといえば二人らしい。

俺は一つ息を吐いてから、詰所の中に入った。

「よし。なら賭けは成――」

「随分と面白そうな話をしているな」

「うぇっ! ……って、ジェイドさんじゃないですか!? もう遊びに来てくれたんですか!?」

「正直、スパンが短すぎて来るか迷ったんだが、帝国から王国に戻るから挨拶をしておこうと思って寄らせてもらった」

俺が声を掛けた瞬間、アルフィは満面の笑みになり、セルジは目と口を大きく開けて驚いた表情を見せた。

二人のこの表情を見れただけでも、エアトックに寄った価値があったな。

「ということは、もう帝都での用事は済んだのか?」

「ああ。二人の協力のお陰もあって、無事に解決することができた。本当にありがとう」

「こっちも色々と手伝ってもらったし、礼なんかいらねぇよ。それより、その疲れ切った顔を見る限り、相当大変だったみたいだな」

「そうですか……? 僕にはあまり変わっていないように見えますけど」

「大変だったが、表情には出ていないと思うけどな。アルフィとセルジの顔が見れて素直に嬉しかったし、結構気分は晴れやかだぞ」

かなり気分が落ちていた中ゼノビアに励まされ、こうして二人の顔を見れたことで気持ちは切り替えられている。

「それならいいんだが……何かあったら何でも言えよ。俺とアルフィにできることならやるから」

「お手伝いできることなら何でもします! ってことで、今日は早速飲みに行っちゃいますか!? 帝都でのお話も聞きたいですし、僕達もあの後のことを話したいので!」

「いや、流石に早すぎるだろ。二人は仕事中だろうし、飲むのは夜からにした方が兵士長にも怒られずに済むぞ」

「えー……。兵士長も許してくれると思うんですけど!」

「なら、これから兵士長にも挨拶に行くつもりだから一緒に来るか? ちゃんと許可をくれたなら昼から飲みに行こう」

「……………………」

少し意地悪な俺の提案にアルフィは黙りこくり、俺の目をジッと見つめてきた。

許してくれる――と言っていたが、絶対に許しを貰えないことを分かっているのだろう。

「アルフィは行ってきたらいいぜ? 俺は無駄に怒られたくないから待っているがな」

「ズルいですよ! 僕達三人で兵士長を説得しましょう!」

「セルジはまだしも、何で俺まで含まれているんだ。俺は夜からって提案したんだし、許しをもらえるって言ったのはアルフィだろ」

「二人共ズルいです! なら、僕も今日は我慢して夜からにします!」

「相変わらず意味が分かんねぇな。……それじゃ、夜からってことでいいか? 兵士長への挨拶が終わったら、『クレイス』に来てくれ。俺らも仕事が終わり次第向かうからよ」

「分かった。それじゃ夜に『クレイス』で落ち合おう」

まだ仕事中のセルジとアルフィとはここで別れ、話の続きは夜の飲みの場で行うこととなった。

前回会ってからまだ期間が短いがなんとなく懐かしさを覚えたし、この後酒を飲みながら話すのも非常に楽しみ。

恥ずかしがらずに寄って良かったと心から感じつつ、俺は兵士長のいる兵舎へと向かった。

帝国騎士団の兵舎を見てしまっているため、より質素な造りに思えてしまう兵舎に入り、上の階層の兵士長を目指す。

「んあ? 入っていいぞ」

ノックをすると、気の抜けた兵士長の声が返ってきた。

部屋の中に入ると、すぐに俺だと気づいたようで立ち上がって早足で近づいてきた。

「ジェイドじゃねぇか! もう戻ってきたのか! もしかしてエアトックで兵士になる気になったのか?」

「期待してくれているところ悪いが、王国に戻る前に報告で寄らせてもらっただけだ。ゼノビアを紹介してもらった礼を兵士長にしようと思ってな」

「てことは……もう用を済ませたってことかよ! 仕事ができると思っていたが、本当に色々と手際がいいな! んで、どうだった? 帝国騎士生活は?」

「そんな感想を言えるほど騎士生活を送っていない。ゼノビアと一緒に稽古を行って終わったし、後はほとんど何もやっていないな」

目をキラキラとさせながら、俺に色々な質問をぶつけてくる兵士長。

二人の前では上に立つ者としての振る舞いを見せているが、本質的にはあの二人とそっくりなんだよな。