軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第290話 グランプーラ

『グランプーラ』は人目につく場所にある大きな建物だが、どうやら『モノトーン』以外の人間は立ち入ることすら禁止されているようだ。

クラブという施設であることから、入ろうとしている一般人も何人か見かけたが、ことごとく追い返されていた。

ただ女性だけは誰でも無条件で入れるようで、ゼノビアなら簡単に情報を集められただろうなとか考えつつ、見張りの目を掻い潜ってあっさりと中に侵入した。

先に帝城の方から行ったから、警備が非常にゆるゆるに感じる。

建物内が暗いこともあり、中に入ってしまったら隠密行動を一切取らずともバレることがないと断言できるほど、たくさんの人で埋め尽くされていた。

もう建物の中に入った瞬間から爆音の音楽が聞こえ、フロアになっている部分では音に合わせて大量の人間が踊っている。

幹部がこのフロアにいるとは思えないため、他の場所に行きたいところだが……それにしても警備が緩いな。

人があまりにも多いため、隠れて動くということはせず堂々と歩いているのだが、誰にも気づかれることがない。

爆音が流れる暗いフロアに加えて、大抵の人間が異性に夢中になっている。

俺なんかに意識が向くはずもなく、こうして自由に歩き回れている状態。

慎重なクロの性格を考えると、ここが本当にアジトなのか心配になってくるぐらいだが、アランは嘘をついていなかったからな。

とりあえず無警戒過ぎるのは気にしないようにし、このクラブの全容を調べよう。

この様子なら労することなく調べられるはず。

俺は人混みを掻き分けながら進み、バックルームに繋がる通路の近くに待機。

そして周囲の隙を窺いながら、タイミングを見計らって通路に侵入した。

ギラギラしたド派手なフロアとは違い、扉一枚隔てただけの通路は別世界のように静かに感じる。

フロアからは爆音が流れているため、もちろん今も耳には届いているのだが、ギャップがあまりにも大きい故に静かに思えてくるのだ。

急にアジトっぽさが出てきたため、ここからは気を引き締め直して奥に向かって進む。

人の気配が固まっているのは、この通路を左に曲がった先。

遠くから見る限り、人が固まっている場所は厨房のようだな。

酒や食事の提供をするために厨房があるというのは分かっていたが、働いているのも『モノトーン』の構成員のようであり、裏の組織に入って厨房で仕事をさせられているのは少し気の毒に思えてくる。

フロアがド派手で華やかな分、こういう裏方業務を同じ組織の人間がやらされていることで格差が激しいことが分かる。

耳を澄ますと愚痴も聞こえてくるし、会話の内容から察するに組織に入ったばかりの新米なんだろうな。

愚痴の他に気になるワードがいくつか聞こえたものの、流石に捕まえて聞き出すということはできないため、厨房に近寄るのは止めて右に曲がって奥を目指した。

ここまではほぼ一本道。

先ほどのダンスフロアから他の入口があったようには見えないし、この先に幹部の部屋があるのは間違いないんだが……。

進んで右側にあったのは、いくつもの扉がある場所。

小部屋が片側十部屋ずつの計二十部屋あり、いかにも怪しい場所——と思ったのだが、壁の奥の音を聞いたことでこの小部屋が何の部屋なのかすぐに分かった。

恐らくフロアで良い感じになった女性を連れ込む部屋であり、中ではいかがわしい行為が行われている。

まぁありがちと言えばありがちだな。

今のところアジトらしき要素が一つもなく、本当にただのナイトクラブでしかない。

俺の想像では表ではクラブをやりつつ、裏で『モノトーン』が悪事を働いている的な想像をしていたのだが、今のところそんな気配が微塵もない。

特に何も考えず、女性を連れ込むだけの部屋をスルーしようとしたのだが、何か嗅いだことのある臭いが部屋の中から香ってきた。

この臭いは……『バリオアンスロ』のアジトや、地下通路から繋がっていた倉庫で嗅いだ違法ドラッグの臭いだ。

あの不快な臭いを忘れる訳がないので間違いない。

ということは、『バリオアンスロ』が作っていた違法ドラッグは『モノトーン』に流れているということ。

『バリオアンスロ』と『モノトーン』が繋がっているかは分からないが、帝都ではなく近くの街に製造工場を作らせるというのはクロがやりそうなことだし、可能性としてはなくはないと言った感じだろう。

まぁ今としては繋がりはどうでもいいのだが、違法ドラッグがある部屋や倉庫を見つけることができれば、帝国騎士がより動いてくれやすくなるはず。

ここからの俺の目的は違法ドラッグの隠し場所を突き詰めることと、このアジト内にある幹部の部屋を見つけること。

建物の構造が複雑じゃないためすぐに見つけることができそうだが、その分鉢合わせる可能性も高いので注意して進んで行くとしよう。