軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第285話 面子

派手な情報収集をした翌日。

昨日のことが早速問題になっていないか少し心配しつつ、俺はゼノビアの部屋に向かった。

アランが『モノトーン』の仲間に報告していた場合、結構な騒ぎになっているはずだが……。

部屋に入った瞬間、少し気まずそうにしているのはゼノビア。

これは昨日の情報収集のことなのか、それとも訓練でムキになってしまったことへの気まずさなのか。

恐らくだが、後者だろうな。

「ゼノビア、おはよう。今日も訓練から入るのか?」

「ジェイド、おはよう。……昨日は改めてすまなかった。最後の台詞も酷いものだったろう?」

顔は見えないが、思っていたよりも落ち込んでいるのは声音で分かった。

俺が今気になっているのは『モノトーン』の方なため、特に気にしていないことを伝えてあげよう。

「別に気にしていないぞ。帝国騎士なんて鼻っ柱が高いやつが多いだろうし、女騎士……いや、ゼノビア的には美人女騎士と言った方がいいか? とりあえず舐められないようにするための厳しい訓練だったことは承知している。俺の方こそ鬼の指導に耐えてしまって悪かったな」

「くっ……! 大人な対応をされるとそれはそれでムカムカしてしまう!」

「どう返答したら良かったんだ。これでも年齢だけは重ねているし、多少のことで怒ったりはしない。それよりも今日は剣の指導をしてくれるんだよな?」

昨日の訓練は単調なものだったし、ずっとゼノビアと剣を交えるのを楽しみにしていた。

しごき的な意味合いが強いだろうが、昨日の体力勝負はもちろんのこと剣でも負ける気は更々ない。

「昨日の件は流石にみっともなかったと思っているが、剣の指導を受けたいというなら手加減はできないぞ? 捉えようによっては昨日よりもキツいことになる可能性がある。それでも大丈夫なのか?」

「もちろん大丈夫だ。手加減されたら何も面白くないし、俺は体力だけじゃなくて剣にも自信はある。本気でかかってきてくれ」

「……ふふふ。これは“指導”するということを忘れて、一人の騎士として模擬戦を楽しませてもらえそうだな」

「期待してくれていいぞ。場所は昨日と同じ外の訓練場か?」

「ああ、木剣はこちらで用意する。それと公正に試合を行いたいから、アラスターを呼んできてくれないか? あいつに審判をさせる」

「分かった。一度部屋に戻ってアラスターを呼んでくる」

「私は先に行って準備をさせてもらう」

ゼノビアとの会話を終え、俺は一度部屋に戻ってアラスターを呼んでから訓練場へと向かった。

ちなみにアラスターは指導されると思ってか、中々外に出ようとしなかったところを無理やり引っ張り出してきた。

「――ちょっと待ってくれ。俺が一日持たないって言ったのを恨んでいるんだよな? 一日耐えたことは褒めてやるから、俺を部屋に戻してくれ! あの訓練は二度と受けたくない!」

「そうじゃないって言ってるだろ。いいから訓練場までついてきてくれ」

外まで出たのにまだ部屋に戻ろうとしているアラスターを無理やり引っ張り、訓練場まで何とか連れて出した。

ただ審判をさせるだけだと説明したのだが、一切信用してくれずにこの態度。

ただ訓練場まで出て、ゼノビアの前に出た瞬間――直立不動の気をつけに変わった。

この変わり身の早さは尊敬に値するが、結局こうなるのなら最初からついてきてほしかったな。

「アラスター。仕事前にわざわざ呼んですまなかったな」

「いえ! いつでもすぐに駆けつけます!」

「そうか。そう言ってくれるのは嬉しいな。それで早速なんだが、模擬戦の審判をやってほしい」

「――えっ!? 審判……ですか? 訓練ではなく?」

「ん? ジェイドから聞いていなかったのか?」

「いえ、すぐに駆けつけてきたものですから詳しい話を聞いてませんでした! 審判なら喜んでやらせてもらいます!」

口角が上がりきっており、本当に審判だけなことに対して喜びが抑えきれない様子。

俺は最初からそう伝えていたのに、都合の良いやつだが……まぁアラスターには世話になっているしな。

「それは良かった。アラスターに頼んで正解だった。それじゃよろしく頼む。――ジェイドも準備はいいか?」

「はい。俺の方はいつでも大丈夫ですよ」

早速だが、もう始めるようだ。

ゼノビアから木剣を受け取り、間合いを図りつつ構える。

オーソドックスながら隙のない良い構え。

才能もあっただろうが、才能にかまけずに鍛錬を積んだ者が出せるオーラを感じる。

出会った時の頃から強いとは思っていたが、こうして対面するとその練度の高さがよく分かるな。

アラスターの前だし、ゼノビアの顔を立ててもいいが……少しだけ本気で戦わせてもらおう。

昨日、例の地下室で昔を思い出したせいで血が滾ってしまっている。

どこまで俺の攻撃に対応できるか楽しみだ。