軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第275話 師弟関係

滞在期間が長かった訳ではないが、色々な思い出があるし良い街だったな。

目に焼き付けることだけに集中し、ゼノビアのエアトックにいた頃の変な思い出話を聞き流しながら歩く。

エアトックは落ち着いたらまた必ず訪れたい――そんなことを強く思いながら歩いていると、街の入口で俺を待っていたであろうアルフィが笑顔で手を振っているのが見えた。

別れで多少なりとも寂しいと思っていてくれているはずだが、さっきまでと一切変わらず元気な姿を見せてくれているのは、俺としてもありがたい限りだな。

「おーい、ジェイドさん! 待ってましたよ!」

「本当にここまで見送りに来てくれたのか」

「もちろんですよ! って、あれ? セルジさん、僕の後ろに隠れてどうしたんですか?」

セルジはアルフィの裏に隠れるようにしており、かなり変な動きを取っている。

出会った時から常に変ではあったが、ここまで変な行動を取っているのは初めてだ。

「セルジじゃないか。なんで隠れているんだ? 時間ができたら挨拶に来いと言ったはずだが、あれから一回も帝都に来ていないな」

「あっ、あれ? ゼノビア隊長もいたんすね! まさかジェイドと一緒にいるなんて思わなかったすよ!」

セルジはゼノビアに対し、白々しい対応を見せている。

兵士長室でゼノビアは懐かしい名前と言っていたし、この街で兵士をやっていた頃に付き合いがあるのだろう。

「誤魔化すな。まずなんで隠れたんだ? 散々世話してやったのだし、挨拶に来るのが筋ってものだと思うが」

「隠れてなんてないすよ。ちょっと落とし物を拾っていただけなんで。――それより、ジェイドはもう行っちまうんだよな! 寂しくなる!」

じりじりと後退していく中、急に方向転換し、誤魔化すように俺の肩を掴んで熱く語ってきたセルジ。

こんな姿を初めて見たため、セルジは余程ゼノビアのことが苦手だということが分かるな。

「セルジもわざわざ見送りに来てくれてありがとな。……セルジはゼノビアが苦手なのか?」

「苦手ってもんじゃねぇ。馬鹿みたいなトレーニング量を押し付けてくる。んで、ノルマを越えなかったら稽古と称して模擬戦を行い、ボッコボコにしてくる頭のおかしい女だぞ。ジェイドも本当に気をつけろ」

ひそひそと耳元で会話をしたのだが、セルジの目は本気であり俺を心の底から心配してくれているのが分かる。

ゼノビアもなんでセルジに嫌われているのか分かっていなさそうだし、セルジの言う通り少し抜けた人物ではありそうだ。

「何をコソコソと話しているんだ。微かに私の名前を言ったのが聞こえているぞ」

「良い人だって言ったんすよ! ゼノビア隊長を信用できる人物だと伝えたんす。な? ジェイド!」

「ああ。信用できるとセルジから教えてもらっていた」

「ふふふ、そうか。やはりセルジは私を慕ってくれていたんだな」

真に受けて嬉しそうに笑っている中、セルジの表情は苦笑いそのもの。

そんなセルジとゼノビアの会話をアルフィは首を傾げて聞いている。

「アルフィはゼノビアとは知り合いではないのか?」

「はい! 僕が兵士になった時にはいませんでした!」

「ということは、君はセルジの部下なのか? セルジの部下なら私の部下といっても過言ではないな。いつでも稽古をつけるから、好きな時に帝都に遊びにくるといい」

「はい! ありがとうございます!」

アルフィは屈託ないのない笑顔をゼノビアに向けており、一方のセルジは両手で肩を抱いて身震いしていた。

俺達が去った後にセルジからことの詳細を伝えられるだろうし、アルフィが帝都に来ることは恐らくないだろうな。

「それではそろそろ出発しようか。早く戻らないと色々と面倒になる」

「ああ、出発しよう。二人共、本当に俺なんかと仲良くしてくれてありがとう。色々と救われた」

「救われたのはこっちだ。何度も言ったがいつでも戻ってきていいからな。俺達は諸手を挙げて歓迎する」

「ですです! いつでもきてください! 帝都にも時間が空いたらセルジさんと一緒に遊びに行き——」

「時間が空いたらフラッと遊びに来てくれ。遠い距離じゃないからな」

余計なことを言いかけたアルフィの口を押さえ、帝都には行かないと暗に言ってきたセルジ。

事情は分かっているため、時間が取れたら俺の方から遊びにこよう。

仮にクロとの問題が解決がしたとしても、ヨークウィッチに戻る前に必ず寄ると心に決めた。

「ああ、必ず遊びに来る。それじゃ――また」

「ジェイド、またな」

「近い内にまた一緒に遊びましょう!」

セルジとアルフィに見送られながら、俺はゼノビアと共にヨークウィッチを後にした。

短い期間でここまでの関係値になるとは思ってなかったが、色々な意味で二人には救われた。

必ずまた会うと心に誓い、俺はクロのいる帝都へと向かったのだった。