軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第263話 やる気なし

協力の要請を受けた翌々日の早朝。

どうやら朝から取り締まりに動くらしく、俺はアルフィとセルジと共にヴィクトルを押さえに行く役目を与えられた。

兵士の大半は北側地区に押し入るようで、兵士長が率いる少数部隊が地下から挟み撃ちに行くらしい。

俺達はそんな派手な制圧作戦とは無縁の場所におり、ヴィクトルが常駐している中央通りの詰所前にやってきていた。

「ふぁーあ。なんでこんな朝からなんだろうな。眠くて仕方がない」

「本当ですよ! 僕達が情報を手に入れたっていうのに、敵のアジトの制圧する部隊から除外されましたし!」

「俺達っていうより、ジェイドが見つけてくれた情報だけどな。……で、なんでジェイドもこっちにいるんだ?」

セルジは大きなあくびを何度もしており、アルフィは完全に萎えている様子。

ヴィクトルを捕まえるのも大事な任務であることは間違いないが、二人ともにやる気をなくしている。

そんな二人が暴走しないための監視役が俺って訳だろう。

「兵士長に頼まれたから引き受けたんだ。多分だが、二人が地下通路や北側エリアに行かないように見張ってくれってことだと思う」

「まぁ兵士長が考えそうなことだ。特に難しい役割じゃないし、サクッとヴィクトルを捕まえようぜ。帰って二度寝したいしな」

「僕は全然やる気でないですよぉ。初めてのド派手な任務だと思ってたのに!」

「報酬はキッチリ貰えると思うぞ。危険が少ないのに報酬はちゃんと貰えるんだから、二人のいつもの考えからしたら得でしかない」

「……それはそうですけど」

愚痴をこぼしているアルフィを宥めつつ、詰所を囲むように俺達は配置についた。

中にヴィクトルがいることは確認済みで、この布陣ならまず逃がすようなことはない。

「暴れはしないと思うが、万が一のことがあるからアルフィも気合い入れろよ。それじゃ――中に入るぞ」

セルジはアルフィにそう告げてから、詰所の中に入って行った。

中には前回訪れた時にいた三人と兵士と、その中心にヴィクトルが座っていた。

ここは出しゃばるところではないため、俺は手出しせずに万が一逃げ出した時のために待機していたのだが……。

ヴィクトルはセルジが入ってきたと同時に全てを察したのか、三人いる兵士の一人をヘッドロックで捕まえると、首元にナイフを押し当てて人質として使ってきた。

仲良くはないだろうが、セルジとアルフィは同じ仲間である兵士。

それなのに会話も交わさずこの対応を取ってきたということは、裏切り者とバレていることを既に勘付いていたようだ。

二人のサポートに回ろうと遠慮していたが、こうなった以上は俺も積極的に参加しないと逃げられてしまう可能性が出てきた。

「お前ら全員、そこから一歩も動くなよ。動いた瞬間にこいつの首を掻っ切る」

「え、えー! きゅ、急にどうしたんですか!? 僕達は用事を伝えに来ただけなんですけど!」

「下手な演技はやめろ。兵士長の命令でお前ら二人が俺を探っていたのは知っているんだよ」

「アルフィが大根芝居なんかするからすぐにバレちまったじゃねぇか。それにしても人質とは情けねぇな。俺とアルフィの落ちこぼれコンビにも、真っ向から戦うことすらできないとはな」

部下であろう兵士を人質に取ったヴィクトルを挑発したセルジ。

短剣を投げることができる位置に移動できれば、ヴィクトルを即時無力化できるため、あまり煽らないでほしいのだが……。

俺の能力を知らないセルジからすれば、煽って人質を解放させる方が安全と思ったのだろう。

「誰であろうと関係ない。いいから退かないと本気で殺すぞ」

「あ、ああッ! や、止めてください! まだ死にたくない!」

兵士の首に押し当てていた短剣が徐々に抉られ、少量ながらも血が首を伝い始めた。

流れ出る血液を感じ取った兵士は、ヴィクトルに必死で命乞いをしているが目を見る限りでは聞く耳を持っていない。

「……分かった。動かないから人質を解放しろ」

「武器を全て地面に置け」

「剣を置けばいいんですね! そうしたら解放してくれるんですよね?」

「ああ。後ろの男も両手を上にあげろ」

アルフィとセルジだけでなく、俺にもしっかりと指示をしてきた。

目の前にいる兵士がいるのに俺にも気にかけてくるところを見るに、相当用心深い人間であることは間違いないが……それでも俺への注意は薄い。

先にアルフィが剣を地面に置き、その後セルジが剣をゆっくりと地面に置いた。

静かに武器を置こうという意識からか、腰を曲げて武器を置いたことで前があき――ヴィクトルへの射線が通った。

ヴィクトルの目線も下に向けられているため、俺はその隙を逃すことなく懐から抜いた短剣をそのままヴィクトルの腕目掛けてぶん投げる。

反応できない速度で向かっていった短剣は、防がれることなくヴィクトルの腕に直撃した。

深々と突き刺さったことで力が入らなくなったのか、首元に当てていたナイフを握る手が緩んだところを見逃さず、俺は二人の間を抜けてヴィクトルの懐に飛び込んだ。

短剣を握っている手を掴んで関節を外してから、流れで人質を解放させ、そのままヴィクトルは地面に伏せさせる。

少しも動けないように肘と肩の関節を極めつつ頭を踏みつけたことで、僅か数秒で完全に拘束してみせた。

まさか部下を人質に取るとは思わず被害を出しかけたが、何とか無事にヴィクトルを拘束することができたな。