軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第254話 扉の先

初老の紳士に頭を下げながらも、俺を睨んでいるゴードン。

何度やっても負ける気がしないし、別に襲わせてくれても良かったのだが、まぁ戦闘はなるべく避けた方がいいだろう。

「さて、それではついてきてもらえますかな?」

ここからは初老の紳士が先頭を歩き、俺は黒服の男に挟まれる形でその後を追う。

向かっていく先は賭場の奥にある扉であり、ここが恐らくこの地下通路の最終着点。

俺の予想では、南側エリアの倉庫のような場所があると踏んでいる。

門番の横を通って頑丈そうな扉を押し開け、賭場の先に入ると――道は二つに分かれていた。

暗くジメッとしたまっすぐに伸びていく道と、明かりが備えつけられていて綺麗に舗装された左側へと続く道。

恐らくだがまっすぐの道の先が倉庫のような場所になっていて、左の道の先はこの賭場のVIPルームのような場所だろう。

まっすぐ進んだ先も調べてみたいが、初老の紳士は迷うことなく左に曲がったため、俺もついていくようにして左側へと進む。

いくつもの部屋が存在し、その中からは楽しそうにはしゃいでる声が聞こえてくる。

ギャンブルに興じながら、違法ドラッグでも吸っているのだろう。

明らかに異常なほどのハイテンションなのが、部屋の外から聞こえてくる音だけでも分かった。

「この部屋ですよ。武器などは持っていませんよね?」

「護身用の短剣は持っているがまずいか?」

「それぐらいなら大丈夫ですよ。それでは中に入ってください」

数多ある部屋の一番奥の部屋。

他の部屋も地下に作られたとは思えないちゃんとしたものだったが、この部屋だけ格が違うのが分かる。

初老の紳士に通されて中に入ってみたが、部屋の作りとしては冒険者ギルドのエイルの部屋と似た感じ。

真ん中に一人用の高価そうな椅子があり、横にはソファが並んでいる。

中に人はおらず、現在部屋の中にいるのは初老の紳士と黒服の男が四人と俺だけ。

初老の紳士がトップなのだとしたら護衛が甘すぎる気もするが……ただの偉い人間って訳ではなく、ゴードンよりも戦える気配がある。

「適当に腰をかけて頂いて構わないですよ」

「いや、立ったままで大丈夫だ」

「そうなのかね? まぁ私は遠慮なく座らせてもらいますよ」

初老の紳士は正面にある椅子に腰をおろし、太い煙草のようなものに火をつけた。

葉巻かとも思ったのだが、臭いが確実に違法ドラッグのもの。

好きではない臭いのため、顔を歪ませながらも話し始めるのを待つ。

「わざわざこんな部屋まで連れてきてすいませんでした。まずは自己紹介からさせてもらいますが、私はさっきのギャンブルを取り仕切っているホーウィーです。君の名前はなんというんでしょうか?」

「俺はジェイドという名前だ。行商人をやっている」

「ほう、行商人……。それにしては随分と腕が立つように思えますが?」

「護衛をつけていないからな。商品を守るために戦っている内に強くなった」

違法ドラッグを吸いながら、俺の目だけを見つめてくるホーウィー。

嘘を見抜こうとしているようにも見えるが、俺の仕草から言葉の真偽を見抜くことは絶対にできない。

「なるほど。ただの行商人がなんで私の賭場で騒ぎを起こしていたのですか?」

「この賭場の上にあるバーで酒を飲んでいたら、さっきのゴードンと呼ばれていた男に誘われて来ただけだ。賭博をやっていたところまでは良かったが、ゴードンがディーラーとグルになってイカサマを働いてきたからそれを指摘をして――騒ぎになってしまった」

「それは本当の話なのですか? 私の管理下にある場所でイカサマが行われたとはにわかに信じがたいのですよ」

「商人という役職だからこそ人の嘘には敏感なんだ。目も常人よりも良いと自負しているからこそ、イカサマを働いていたと自信を持って言える」

ここまで瞬き一つせず俺のことを見つめていたホーウィーだったが、何も読み取れないと悟ったのか、違法ドラッグを吸い込んだ煙を大量に吐き出すと、おもむろにポケットから一枚の白金貨を取り出した。

「なるほど。それでは一つだけ試してみてもいいですか? この白金貨を五つのカップのどれかに入れるので当ててほしいのです。外した場合は掛け金である白金貨二十枚は返してもらい、イカサマはなかったと認めてもらう。どうですかな?」

「当てた場合はどうなるんだ?」

「イカサマがあったことを認めます。白金貨二十枚は持っていってもらって結構ですし……そうですね。君の質問に一つだけ絶対に答えてあげますよ」

「分かった。その条件で受けさせてもらう」

話し合いで解決するか……圧をかけて屈服させようとしてくると思っていただけに、まさかの提案で正直驚いている。

実力勝負に出てくれたのは俺としてはありがたいし、質問を一つだけ絶対に答えてくれるという報酬も非常に魅力的。

俺が何かを調べるために賭場に来たことは薄々ではあるだろうが勘づかれており、俺が手を抜くことをさせないための条件ではありそうだな。

何にせよ、わざと失敗するようなことはしないし、ホーウィーが隠すというカップの中のコインをしっかりと当てるとしよう。