軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第247話 恩

地下通路の東側も調べたかったが、今日のところはこの辺りで退くのが正解。

俺は音を立てないように気をつけながら、寂れた家具屋から外へと出た。

潜入した時間も良かったようで、結局誰一人としてすれ違うことなく抜け出ることができた。

成果も十分だし、ここからどう動くかが非常に重要。

まずアルフィとセルジのところに戻るか、それともヴィクトルのところに向かうか。

ここまで関係値を作ってはきたが、入手した違法ドラッグでヴィクトルを誘き寄せ、拉致して情報を吐き出させてもいいのではとも思い始めてもいる。

兵士の身ながら裏の組織に手を貸すだけでなく、人を殺めているのも間違いないからな。

拷問をして情報を吐き出させてから口封じをしたとしても、今の俺の“悪人以外は殺さない”という流儀には反さない。

……が、それをやってしまうと、アルフィとセルジの手柄がなくなってしまう。

任務としてヴィクトルを追っていたのは二人だし、俺がヴィクトルを消して姿を晦ましたら確実に処分を受けることになる。

あの二人なら上手く隠蔽できそうでもあるが、色々な情報を貰っておいて仇で返すようなことはできない。

まずはアルフィとセルジに報告。

それからヴィクトルに接触してもいいかの確認を取るのが筋というものだろう。

やるべきことが決まったし、今すぐにでも詰所に向かいたいところだが……ずっと張り込みを行っていたし一度休息を取ろう。

シャワーを浴びて軽く睡眠を取ってから、『クレイス』で二人に報告を行うとするか。

数時間ではあるが仮眠を取ったことで、体力は完全に回復した。

二人がいるかどうか分からないが、『クレイス』に行ってみるとしよう。

泥酔して兵士長に怒られたようだし、反省していない可能性も十分にある。

いなかったらマスターから二人について聞こうと決め、俺は『クレイス』に向けて歩を進めた。

相変わらず人気がなく、一目ではバーとすら認識できない店の扉を開けると、いつものようにアルフィとセルジが楽しそうに酒を呑んでいる姿が目に飛び込んできた。

色々とやらかしたはずなのだが……何も変わっていないところを見る限り、俺の二人への認識はまだまだ甘かったようだ。

「あっ、ジェイドさん! 今日も来たんですね!」

「最近、結構来るな。この店が気に入ったのか?」

「店は気に入っているが、ここに来る目的は二人に会うためだ。今日はいないかと思っていたが、いつものように酒を呑んでいてくれて良かったよ」

「そりゃいますよ! ここでお酒を呑まないと兵士の仕事なんてやってられませんもん!」

「そうそう。流石にもう吞みすぎることはしないけどな。それよりジェイドも何か頼めよ」

セルジに促されて席に着き、いつものようにウイスキーのロックを注文する。

アルフィだけでなく、いつの間にかにセルジも受け入れてくれるようになっているし、まだ出会って短い期間ながらも信頼は掴めてきているのかもしれない。

「ジェイドさん、かんぱーい! ……ふぅー、本当に美味しいです! ほら、ジェイドさんもググっといっちゃってください!」

「ちょっと待て。俺達に用があって来たんだろ? 完全に酔っちまう前に用件を済ませようぜ」

セルジがアルフィを止め、俺に本題に入るように促してきた。

俺としても二人が酔って頭が回らなくなってしまう前に、本題について話したかったからありがたい。

「ヴィクトルについて調べたが、かなり面白いものを見つけた。その報告がしたいんだが……ここで話しても大丈夫か?」

「マスターがいることを気にしているのか? ここのマスターは元兵士で信用できる人物だし、口の軽い人間じゃないから大丈夫だ」

「もうヴィクトルについて分かったことがあるんですね! ぜひ早く教えてください!」

「そういうことなら遠慮なく話させてもらう。ヴィクトルを追っていて見つけたんだが、地下通路に繋がる家具屋が中央通りにあった」

俺が寂れた家具屋について話すと、二人は酒の入ったグラスを置いて、食い入るように俺の方に顔を向けてきた。

もしかしたら地下通路については知っているかもと思ったが、この反応を見る限りでは初耳だったみたいだな。

「地下通路ってなんですか? ヴィクトルがその地下通路を利用していたってことなんでしょうか!?」

「ああ。中央通りにある寂れた家具屋に入ったのを見て、その家具屋から地下通路に繋がる道を見つけた」

「そんな話聞いたことすらない。てことは、やっぱヴィクトルは黒ってことか」

「黒どころか真っ黒だな。地下通路の先も見てきたが、その先は北側エリアのとある倉庫に繋がっていた。これがその倉庫で見つけたものだ」

俺は更なる情報を告げてから、懐から盗み出してきた違法ドラッグを取り出し、二人に手渡した。

セルジは見た瞬間に違法ドラッグだと気づいたようで、セルジは初めて見せる満面の笑みを俺に向けて肩を数回叩いてきた。

「これは本気で凄いものじゃねぇか! 俺達のために危険を冒してまで持ってきてくれたのかよ!」

「セルジさん、ジェイドさん! 僕にも分かるように説明してくださいよ!」

とにかく喜んでくれたみたいで良かった。

これでセルジからの信頼も完全に得られたと見ていいだろう。