軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第215話 様々な反応

ギルド長室の中にはエイルが椅子に座っていて、マイケルが手前で立っている。

一応身構えていたのだが、エイルは俺を見るなり笑顔で手を上げた。

「おー! ジェイドじゃねぇか! こんな時間に来るとは珍しいな!」

態度はごく普通。

やはり地下室で俺にやられたことは頭から抜けているようだ。

「二人に用があってきたんだ。帰る前でよかった」

「私にも用があったのかね? ……また『都影』絡みのことか?」

「いや、違う。『都影』絡みは、地下室での一件で完全に落ち着いたと思ってくれていい」

「ん……? 地下室……?」

エイルが地下室という単語に何か引っかかった様子を見せたため、俺は急いで本題に移ることにした。

「今回は俺に関してのことで報告に来た」

「ジェイドのこと? もしかして冒険者になるとかの話か!?」

「いや、しばらくの間この街を離れることになった」

俺がそう報告をすると、先ほどまで賑やかな雰囲気が一転、外の冒険者達の話声がやけに大きく聞こえるほどの静寂が流れる。

エイルがすぐに反応してくると思ったが、石像になったかのように固まっているのが見て取れた。

「……この街を離れるということは、引越しをするということかね?」

「ああ。マイケルから教えてもらった、映像記憶水晶のせいで俺の顔が割れてしまったからな。それに帝国に送られたというのもきな臭いし、しばらくの間身を隠すがてら徹底的に調べるつもりでいる」

「それは仕方がないことだね。顔が割れたということは狙われるリスクが出るということ。ましてや裏の組織の連中ともなれば、君といえど身を隠すしかないだろうね」

「――で、でもよ! ジェイドなら追っ払えるだろ!! それに俺達のとこに逃げ込んでくればいいだけだし、別に街を去ることのほどじゃねぇだろ!」

ようやく動いたエイルがそう叫んだが、俺だけに迷惑がかかる訳じゃないからな。

最悪、冒険者ギルドなら巻き込んでも大丈夫だろうが、『シャ・ノワール』を巻き込むのは絶対に避けたい。

それにクロが刺客を送り込んでくるとしたら、また街の治安が悪くなるのは確実。

それならば俺が街を離れ、こっちから元凶を潰してしまうのが何よりも手っ取り早いのだ。

「そういう訳にもいかない。俺以外にも迷惑がかかるからな。一度街を離れて、落ち着くまで待つのが得策だ」

「それじゃ逃げるみたいじゃねぇか! 向こうが悪いのになんでジェイドが逃げなくちゃいけねぇんだよ!」

「実際に逃げるんだよ。それとただ逃げる訳じゃない。俺の方から攻め込むつもりでいる。片が付けば戻ってくるつもりだし、早めに片が付けばそれだけ早く戻ってくる」

この説得でもあまり納得がいっていないようで、両手を握り絞めて憤慨した様子のエイル。

心配ではなく怒るという反応は初めてだったし、反応を見るのはやはり色々面が見れて面白い。

「私はその通りだと思うよ。待つよりも攻め込んだ方が君なら早いとすら思うしね」

「……なら、俺も一緒に行くぜ!! 俺だって攻撃した人間だし、悪い奴を倒すのはギルド長の務めだ!」

「それは駄目だろ。俺が向かうのは帝国だし、街というか国の管轄からも出る。それに……」

エイルと一緒だと成功する確率がググッと下がる。

そう言いかけたが、ギリギリで言葉を呑みこんで別の言葉をかけた。

「それにギルド長が抜けたら冒険者ギルドが困るだろ。エイルは冒険者ギルドにとっての要だからな」

俺のそんな言葉にマイケルが何か言いたそうだったが、言葉を呑みこんだのが分かった。

別にエイルがいなくとも冒険者ギルドを回せるが、ギルド長が長期不在は流石にまずいと一瞬にして察したのだろう。

「確かにそれもそうか……! 俺がいねぇとギルドは何もできなくなるもんな!」

「え、ええ。そうですね。流石にギルド長がいなくなるのは私としても困ります」

「そういうことだから、ジェイドには申し訳ねぇけど俺はついて行けねぇ! 本当に悪いな!」

「いや……まぁしょうがないな。エイルもこっちで頑張ってくれ。戻ってくるつもりはあるから、その時にまた冒険でもしよう」

「それいいな! なんかおもしれぇところ探しておくわ!」

能天気に笑っているエイルを見て、無茶苦茶な性格ながらもこういうところが好かれる理由だと理解できた。

とりあえずこれで報告は済んだな。

「俺からの報告はこれだけだ。マイケルも戻った時は色々と報告させてもらう」

「その報告を楽しみに待っているよ。余計な心配だとは思うが、くれぐれも気をつけてほしい」

「心配ありがとう。それじゃ帰らせてもらう」

「おう! またいつでも来いよ! …………何か忘れているような」

エイルが不穏なことを呟いたのを聞き、急いでギルド長室を後にした俺。

冒険者ギルドとも色々あったが、二人は良い奴だったし面白いことの方が多かった。

街を去る報告はこれで知り合い全員に報告できたし、後は出立の準備を整えるだけ。

悲しくはなるが……恐らく短い別れだ。

スタナとのお出かけを楽しみに、準備を進めていくとしよう。