軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第212話 あっという間

日にちは更に流れ、あっという間に俺の代わりとなる四人の従業員が正式採用された。

全員若くやる気もあるため、俺の穴はすぐに埋まると思う。

新店舗の方も順調であり、以前道具屋だった場所を居抜きで借りるようで、手間もそこまでかからずに二号店を出すことができるようだ。

魔道具を制作してくれる職人たちも新たに契約でき、最大二ヵ月待ちまでになった髪を乾かす魔道具だが、今では一ヶ月待ちまで減らすことができている。

楽しい日々に没頭している間に時間が過ぎていき、時間が過ぎていくと共に俺の穴が埋まっていく。

楽しくもあり悲しくもある日々を過ごしながら、ようやく俺の『シャ・ノワール』で働く日々が終わろうとしている。

今日が実質最終日であり、明日は整理を行うためだけに出勤する。

黙っていようと思っていたが、結局レスリーにも出発する日がバレてしまい、明日は俺の送別会を開いてくれることになった。

俺の送別会という名のレスリーの酒呑み日であるのだが、バレてしまった以上は最後ぐらいは付き合おう。

そして明後日は、約束していたスタナとの最後のお出かけ。

俺がまだ知らぬヨークウィッチをとことん案内してくれるようで、今から待ち遠しく感じるほど楽しみ。

そして最後の挨拶は明々後日に行い、そのまま出発という流れになる。

今日はこれからトレバーとテイトに会いに行き、明々後日に発つことを伝えに行く。

後は冒険者ギルドにも寄って、マイケルとエイルにも報告がしたい。

ダンには既に報告済みであり、メタルトータスの甲羅から採取したオリハルコンの剣については、俺がこの街に戻ってくるまでに必ず仕上げてみせると約束してくれた。

この街に戻ってくる楽しみが一つ増えたし、本気でヨークウィッチを去りたくない――。

そんな思いが日に日に増していく思いを感じながら、俺は二人と約束している門の前に辿り着いた。

早めに店を後にしたこともあり、予定の時間よりも大分早く着いたのだが、例の如く二人は並んで待っている。

常に俺の方が後に到着しているし、思い返せば一度も俺が先に着いたことはない。

時間に遅れたこともないから気にすることでもないと思うが、二人が俺に対して異常なほど気を使ってくれていることだけは分かる。

「毎度のことながら来るのが早いな」

「貴重な時間を使って頂けるのに待たせる訳にはいきませんので! それよりもこんな時間からというのは珍しいですね。何かあったのですか?」

「とりあえず時間も時間だし、平原に向かいながら話そう」

「なんか嫌な予感しかしないんですよ! テイトと話していたんですけど、もう指導してくれないんじゃないかって!」

流石に何かを感じ取っていたようで、鋭いことを言ってきたトレバー。

概ね正しいのだが、別に二人が嫌になってとかではないため、誤解がないように説明しよう。

「もう二度と指導をしないということはない。ただ、街を離れるからしばらく指導ができなくことを伝えにきた」

「嫌な予感はしていましたが、やはりそうだったんですね。街を離れるというのは悪い意味ではないですよね?」

「その質問の返答は難しいが、この街が嫌になったとかではない。もちろん二人への指導を続けたいという気持ちがある中、俺の都合で街を離れざるを得なくなったって感じだ」

「よかったー! 僕達が何かしちゃったのかなって話していたんで! 前回の指導も用事ができたから延期と言われましたので、嫌われてしまったのではないかと思ってたんです!」

本当に安心したように胸を手で押さえながら、大きく息を吐いたトレバー。

二人を嫌う理由がないし、指導をするのは本当に楽しいからな。

色々と立て込みすぎていて、休み返上で働くことになったから指導ができなくなっただけ。

ただ、二人に余計な心配をかけさせたのは悪かったな。

「街を離れるということもあって、色々と忙しくしてただけだ。ちゃんと説明するのが遅くなって悪かった」

「謝らないでください! 完全にご厚意だけで指導してもらっているので、急にやりたくないと言われても感謝しかないんですから」

「そうそう! 嫌われるようなことをしてしまってたら、ジェイドさんに申し訳ないって思ってただけです!」

よく分からないが、必死に弁明している二人を見て笑ってしまう。

レスリー、ヴェラの反応や、スタナとも違うこの反応。

一時的なものとは言え、別れは寂しいが……違った形での思いがこうしてダイレクトで伝わってくるのは嬉しいものがある。

「余程のことがない限り二人を嫌うことはないから安心してくれ。話を戻すが、今日を最後にしばらく指導ができなくなる訳だから、二人の今日までの成果を俺に見せてほしい」

「もちろんですよ! 僕達も遊んでいた訳じゃありませんので! ちゃんと成長した姿を見せます!」

「会えなかったので報告できなかったのですが、先週にシルバーランクに昇格してます。ランクだけでなく、ジェイドさんのお陰でちゃんと強くなったことを証明するために――今回こそは一撃を必ず入れさせて頂きます」

トレバー、それからテイトの力強い宣言。

ヴェラやレスリーと同ランク帯にまで昇格した訳だし、俺の期待も非常に高まる。

俺自身もワクワクしながら、逸る気持ちをそのままにいつもの平原に早足で向かった。