軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 冒険者ギルド

今の時間帯は丁度依頼を受ける人が多い時間なのか、複数の受付があるのに捌き切れていない様子。

依頼報告をするであろう夕方から夜にかけては、もっと多くの冒険者で混雑しているんだろうな。

俺はそんなことを考えながら列に並んで待っていると、無駄な筋肉だけを鍛えた男がニヤニヤとしながら俺の前に割り込んできた。

睨まれるぐらいならば無視したが、流石に割り込まれると話が変わってくる。

反射的に注意をしようかと思ったが……今はビラを貼らせてもらうための交渉をする前だということを思い出す。

大揉めになったら『シャ・ノワール』に迷惑がかかるだろうし、まぁ一人ぐらいなら割り込まれても目を瞑ろうか。

俺は穏やかな気持ちでニヤけ面で割り込んできた男を無視したのだが、そこから更にもう一人が割り込んできて、その光景を見ていたであろう別の男も更に割り込みを図ろうとしてきた。

……はぁー。ガラが悪いだけでなく、本当にクズしかいないな。

流石にこれ以上の割り込みを許すと、後ろに並んでいる人からも絡まれそうなため、三人目で割り込んできた男に注意することを決めた。

「おい、並んでいるのが見えないのか? 後ろに並べ」

「――ああん!? なんだよ、俺だけに注意するってのか? おっさんが前の奴らを割り込ませたんだろうが! 俺を注意するなら前の奴らも注意しやがれ!」

無茶苦茶な理論だが、まぁ若干の筋は通っているのか?

この際だから面倒くさいし、三人まとめて捌けてもらうしかないな。

「なら、三人まとめて後ろへ並び直せ。……おい、前に並んでいる奴も聞こえているだろ?」

「はぁ? もう俺は列に並んでんだよッ! 並び直す訳ねぇだろうが、ばぁーか!」

「俺もお断りだわ! そんなにどかしたいんならよ……力づくでどかしてみろや! けっけっけ! まぁプレートなしの素人でおっさんじゃ無理だろうけどなァ!」

俺を囲むように割り込みを図ろうとしてきた三人の男が詰め寄ってきた。

冒険者ランクは……シルバー、ブロンズ、ブロンズ。

頭の悪さがそのままランクに現れているため、思わず鼻で笑ってしまう。

よくこんな低ランクで俺に喧嘩を吹っ掛けてきたと思わざるを得ないが、気配は絶っているし俺の強さに気づいていないだけか。

このまま大衆の面前で三人をぶちのめしてやりたいところだが、先ほどから懸念した通り騒ぎになるのは避けたいため、周囲の注意を逸らしてから一瞬で片をつけるとしよう。

「おいっ、ブルッちまって何も言い返せなくなっちまったかぁ!?」

「さっきまでの威勢はどうしちまったんだよ! おっさんだからって許してもらえると思ったのか?」

顔を近づけて発した男たちの言葉を無視し、俺はポケットに入れてあった小石を一つ握る。

そこから、天井にぶら下がっている大きな照明目掛けて小石を親指で弾き飛ばした。

物凄い速度で飛んで行った小石は綺麗に照明にぶつかり、大きな音を立てながら粉々に割れる。

天井で大きな物音、それも照明の一つが割れたことでギルド内が若干暗くなったこともあり、ほぼ全員の人間の視線は反射的に天井へと向けられた。

もちろんのこと俺に絡んできた三人も天井に目を向けており、俺はその隙に三人の顎先を拳でかすめ取って気絶させていく。

時間にして一秒もかかっていない瞬殺劇。

別に視線を上に向けなくとも、誰にも気づかれることなく倒せたかもしれないが、三人を気絶させるとなると絶対に見られないようにするのは難しい。

目眩ましのためだけに照明を壊してしまったのは申し訳ないが、見ず知らずの人間に絡んできた馬鹿三人のような奴を雇っているのが悪いと思って諦めてほしい。

割れた照明に加え、急に倒れた三人の冒険者。

そんな意味の分からない現象にギルド内が混乱し出した中、その混乱に乗じて俺は冒険者ギルドを一度後にした。

何食わぬ顔で列に並びっぱなしのままでも良かったのだが、一度し切り直した方が良いと判断。

絡まれていたのは見られていたし、俺がやったと思われる可能性が非常に高いからな。

とりあえずもう絡まれることがないように、だらしない冒険者が少ないであろう明日の出勤前にでも訪れて、ビラについては再度交渉しに来るとしよう。

俺は別の目星をつけていた店へ向かうため、軽い騒ぎとなっている冒険者ギルドから足早に離れたのだった。