軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第203話 犠牲

攻撃の届かない後方にいたボスと黒装束の男が入れ替わったことにより、ようやく剣を交える距離まで近づいてきたボス。

一見無表情にしか見えないが黒目部分が揺らめいていることから、スーツの女を目の前で殺されたことへの怒りに燃えているのが分かる。

「ボス。二人で殺してしまいましょう!」

「お前は一度冷静になれ。その間、俺がこいつを抑えておく」

二人で来られた方が嫌だったのだが、ボスは黒装束の男の提案を拒否。

腰から剣を引き抜き、俺に対してゆっくりと構えた。

短剣と片手剣の中間のような長さで、刃の部分がノコギリのようにギザギザに尖っている――ソードブレイカーと呼ばれる剣。

鎌の形状も好きだが、相手を確実に傷つけたいという意思が感じられるソードブレイカーも好きだな。

「良い剣を持っている。ソードブレイカーを実戦で使う奴とは初めて戦うかもしれない」

「ごちゃごちゃと余計な話をしてくるな。そっちからこないなら俺からいくぞ?」

褒めたつもりだったがお気に示さなかったのか、冷たくあしらわれてしまった。

それと向こうから攻撃を仕掛けてくれるなら俺としてはありがたいし、このままぐだぐだと話しかけるのも頭を過ったが……恐らくそれはボスの策略の一つ。

未だに数的不利の状況なのに向こうから一対一の場面を作ってくれたのだから、わざわざ相手のペースに合わせる必要はない。

短剣を構え、俺はボスに攻撃を仕掛けにいった。

スーツの女の時とは違い、迂闊に飛び込むようなことはしない。

構えに一切の隙がなく、飛び込めばこっちが大怪我を負わせられる可能性があるからな。

まずはシンプルに剣を振って攻撃してみたのだが、あっさりとガードされる。

反撃を行ってくる気配がないため、俺のペースで多種多様な斬り方で攻撃を行ってみたが、どの攻撃も難なく受け止めてきた。

体幹も一切ブレていないし、隙らしい隙も見当たらない。

速度で緩急をつけても慌てる様子なく、最適の手段でガードを行ってくるボス。

流石に実力者だけを集めた裏組織のボスなだけあり、その実力は頭一つ抜けているな。

最初に感じた通り、全てにおいて俺と非常に似ているのが軽く打ち合ってみて分かる。

突くとしたらその部分であり、そうなってくると一対一よりも黒装束の男を戦闘に引きずりこんで、二対一の状況の方を作った方がやりやすい。

やり方としては褒められたものではないが、完全勝利を狙うのであれば手段を厭うつもりはない。

フェイントを加えた右での振りを行うと同時に、俺は煙玉を地面に投げつけた。

ここまで俺と似ているということは、この煙が充満している状況の中でも音だけで完璧に把握できているはず。

念のため忍び足で近づき、短剣を振ってみたがあっさりと受け止められた。

まぁここまでは想定通りであり、この煙玉の狙いはボスではなく黒装束の男。

体に突き刺さっているくないを無理やり引き抜き、俺は黒装束の男目掛けてぶん投げる。

直後に弾かれる音がしたため、動きが見えているであろうボスが間に入って受け止めたのだろう。

「一体何が起こっているんだ? 風魔法を使いますよ」

「声を出すな。魔法も――」

そんな会話のお陰で位置は完璧につかめた。

俺に刺さっているくないの数は残り三本。

上手いこと移動を繰り返しながら、黒装束の男をくないで攻撃することによりボスの動きを止め――二対一の状況を作り出したタイミングで俺が風魔法を発動。

【ウインドボール】で地下室に充満した煙を吹き飛ばした。

煙が晴れて視界が確保されたことで、目の前まで俺が迫ってきていることに気づき驚いた表情を見せた黒装束の男。

そんな黒装束の男を守るような形を取っていたボスは、非常に鬱陶しそうな顔をしている。

やはり二対一の状況の方が嫌だと思っているようだな。

狙いが間違っていなかったことを確信した俺は、ここから更にギアを上げて攻撃を開始した。

狙いは黒装束の男ただ一人。

短剣を高速で持ち替えながら、左右からダイナミックに攻撃を行っていく。

ボスがタンクのような役割となって間に入り守っているが、守ろうとする意志が強すぎるあまり連携が一切取れていない。

黒装束の男も決して弱くはなく、俺の連撃も完璧に防ぐとまでは言えないまでも、致命傷避けるように防ぐことが可能なのはさっきの攻防で分かっている。

だから、ある程度は信用して放置し、ボスが攻撃に専念された方が俺としても動き難くなるのだが……もう仲間が殺されるのが嫌なのだろう。

常に奪う側の人間だったからこそ、スーツの女を目の前で殺されたことでより顕著にその意思が出てしまう。

全勢力で俺を殺しに来たのにも関わらず、犠牲を払うことができないその甘さは命取りだ。

短剣の持ち替えによって、短剣でしか攻撃が出来ないことを植え付けさせてから、短剣での攻撃をフェイクにダンに制作してもらったフィンブルドラゴンの角のアクセに魔力を溜め――ぶっ放した。

超近距離で魔力弾を食らったボスはふっ飛び、黒装束の男との一騎打ちとなる。

ただ一騎打ちというただのテイであり、黒装束の男の意識は完全に吹っ飛んだボスに向けられていた。

そんな隙を俺が見逃すはずもなく、カーフキックで体勢を崩させてから短剣で喉を掻っ斬る。

仰向けで倒れたところにトドメとして、心臓に短剣を突き立てた。

これで黒装束の男の処理も完了。

数的不利を覆しただけでなく、ボスはまだ生きてはいるだろうが魔力弾を食らって満身創痍の状態。

もう決着はついたと言っていいほど形成は逆転したな。