軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 兎狩り

俺を囲むように動きだした三人。

やっぱり動き方はジェイドそっくりだな。

西の森でジェイドに負けてから、イメージトレーニングの相手は常にジェイドだった。

三人同時にってのは流石にイメージしたこともなかったが、一人ずつぶん殴っていけば減らせるし大した差じゃねぇ。

ただし確実に仕留めていかなくちゃ流石の俺でもやられちまう。

初っ端から全力で三人を仕留めにかかるとするか!

「動きは素人そのもの。暗殺者っぽくないな」

「もうなんでもいいですよ。殺してしまいましょう」

そんな女の言葉を皮切りに、三人は息を合わせたように攻撃を仕掛けてきた。

前二人の攻撃は捨てて、俺は背後から攻撃を仕掛けてきている男だけに狙いを絞る。

あーだこーだと一番うるさかったし、なんか一番偉そうな態度を取っていたから気に食わねぇし、まずはコイツから仕留めてやる。

俺を舐めているようだし、背中側から攻撃すれば大丈夫と高を括ってそうだしな。

心の中でその一点だけを決め、ほぼ同時に迫ってくる三人を迎え撃つ準備を整える。

右前の女と左前のちょんまげ男の動きは頭の中に入れる程度に留め、振ってきた剣での攻撃をガードせずに体で受けた。

致命傷は最低限避けて動いたが傷はかなり深い――が、そんなことお構いなしに反転しながら思い切り踏み込み、腰の回転も拳に乗せながら背後の男の顔面目掛けて拳を全力で振り下ろす。

無表情を決め込んでいた男は飛んできた拳に面食らった顔をしていて、慌てて短剣を伸ばしてきたが――俺の拳の方が先に顔面を捉えた。

二度と立ち上がらせねぇ!

そんな強い意思を持って振り下ろすと、生意気な男は勢いよく壁まで転がりながら吹っ飛び、倒れたままピクリとも動かなくなった。

予想だにしていなかった攻撃だったのか、無視した二人の攻撃も止まり地下室に静寂が流れる。

けっけっけ。数で有利を取っていたからと舐めてかかっていただけに、最高に気持ちがいい!

「いったん仕切り直しやしょう」

ちょんまげ男のそんな声に女は頷くと、俺から一度距離を取った。

再び攻撃してきたら、次は女の脇腹に拳を叩き込むつもりだったが、距離を取るとはつまらねぇ奴らだ。

俺は肩から胸の辺りまで深く裂かれ、更に女の短剣が腹を深くまで突き刺さっている。

一人やられたとは言え、圧倒的有利なはずなのに確実に勝つことしか頭にねぇ。

動きもジェイドをイメージしていたからか大したことなく感じたし、何なら俺から攻撃を仕掛けちまうか?

早くケリをつけねぇとジェイドが駆けつけてきちまうから、俺としては一人でも多く倒したい。

色々と考えるのも面倒くさくなったし……ポーションを乱雑に傷口にぶっかけてから、大きく口を開けて笑いかける。

「こっからは俺の方からガンガン行くからよろしくな!!」

「……どうしやすか。簡単にやられちまったザビの補填をしてもらいやすか?」

「いいえ、駄目です。二人は何かあった時のために温存しておかないといけません。ですので、ボスが到着するまでは予定通り私達だけで仕留めます。元気なように見えるだけで傷は深いですし、絶対にやられないようにヒットアンドアウェイで交互に攻撃を仕掛けましょう」

「ヒットアウェイ? だから俺から行くっつってんだろ!!」

うだうだ話している二人に突っ込んでいき、拳をとにかく振っていく。

地下室からの扉を守っている二人は動く気配を見せないため、完全に二対一で進めていくつもりか。

これが組織としてのルールなんだろうが、正直俺には理解できねぇ。

全員で俺をタコ殴りにした方が勝率は高くなるはずなのにな。

なんでもいいが、二人相手なら考えることも少なくなるしありがてぇ。

今頃ジェイドに情報が渡ったとして、ここに駆けつけてくるまで制限時間は五分程度。

俺の目標はちょんまげ男と女を仕留めることだな。

俺から逃げるように地下室を移動し始めた二人を追っては、次から次へと拳を振るっていく。

宣言通り本当に打ち合うことはしてこず、俺が弱るのを待つような情けない戦法を行っている二人。

こちとらアドレナリンがビンビンに出ていて痛みも感じていないってのに、本当にイラつく戦い方を仕掛けてきやがる。

避けるのは上手いが、こちとら上位互換のジェイドと戦ってんだ。

せっかく実力者なんだからバッチバチに斬り合いたかったが、向こうが望むなら仕方がねぇ。

女に狙いを定め、逃げ道を狭めるように誘導しながら追いまわす。

脳裏に過ったのは幼少期の頃に行っていた兎狩り。

あんときは広い野山で俺より素早い兎を狩らなくてはいけなかったが、今回は狭い一室だからな。

知識と経験を頼りに逃げ場の限られている場所に追い詰め、動きを予測して移動してくるところに拳を置くイメージ。

まるで俺の拳に吸い込まれるように女がその方向に逃げ、強烈な一撃が腕に直撃した。

手ごたえは抜群で確実に折れたはず。

ただ未だに気絶している男ほどのクリーンヒットではなかったため、女は腕を押さえながらも必死に逃げだした。

思っていた戦いとは全然違うが、兎狩りならぬ人間狩りを楽しむとするか。

今みてぇにダメージを与えていけば、こいつらも捨て身で攻撃に転じなきゃいけなくなるしな。

俺は二本目のポーションを再び傷口にぶっかけてから、逃げる気満々の二人との追いかけっこを始めた。