軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第180話 接近戦

本当はじっくりと戦闘を楽しみたかったが、五分で仕留めないとエイルが出しゃばってくる。

後ろで指を折りながら時間を数えているエイルを見て、俺は力で押し切ることを決めた。

マグマデルヘッジとの距離を詰め、至近距離で攻撃を仕掛けていく。

溶岩の鎧の間を的確に狙って短剣を突き刺していくことで、着実にダメージを与えられている。

溶岩の鎧の中にも鱗で守られている訳だが、溶岩が固まったものよりかは確実に柔らかく、短剣で突き刺す度に血が流れ出始めた。

マグマデルヘッジも巨体を動かし、タックルや尻尾でも攻撃を仕掛けてきているものの小回りが利かない分、接近戦では圧倒的に俺が有利。

「って、うおおおおい!! 本当にジェイドだけで倒しちまうじゃねぇか!!」

指を折りながら時間を数えていたエイルだが、絶対に五分以内に片がついてしまうと分かったようで、後ろから馬鹿デカい声を張り上げだした。

倒す目途が立ったし変わってあげてもいいところだが……約束は約束だ。

五分間はしっかりと戦わせてもらう。

エイルの怒鳴り声を無視しながら、俺はマグマデルヘッジの背後を取り続けて短剣で斬りまくっていった。

途中で火炎放射や変なガスを噴き出してきたものの、ピッタリと背後を取っている俺には効かず、とうとう力尽きたように巨体が横に倒れた。

ただ、まだ息はしており倒れながらもじたばたしているが、こうなってしまったら倒すのも時間の問題。

トドメくらいは刺させてあげようと思い立ち、エイルを呼んで攻撃をさせてあげることにした。

「エイル、トドメを刺して良いぞ」

「この馬鹿やろー!! こんな状態の魔物を倒しても楽しくねぇよ!!」

「そうか。じゃあ俺がトドメを刺す」

「……ちょっと待った! 楽しくはないが俺がやる! 俺の剣がマグマデルヘッジに俺の攻撃が通ったのかも気になるしな!」

あーだこーだと文句を言いながらも、結局エイルがトドメを刺すこととなった。

ここまで一回も抜かなかった大剣を構え、倒れた状態でじたばたしているマグマデルヘッジに向けて振り下ろす。

ここまで相当鬱憤が溜まっていたのか、その一撃は相当な力が入っており――。

溶岩でできた鎧ごと斬り裂いて、倒れていたマグマデルヘッジを一太刀で両断してしまった。

大剣という武器の力もあるが、やはり人間離れした力だな。

ここまで力を持った人間は今まで見たことがなかったし、もしかしたらエイルは亜人の可能性が高い。

強烈な一撃を見てそんなことを考えながら、絶命したマグマデルヘッジの剥ぎ取りを行う。

中の身の部分を削ぐことで、溶岩の鎧の部分は簡単に剥ぐことができた。

素材として使えそうな部分がどこなのかよく分からないが、とりあえず身は食べてみたい。

鱗の下は魚のような感じをした身のため、恐らく食べることができるはず。

一番油の乗っている部分を切り、後は火炎袋も頂いておこう。

たくさん取ってもこの暑さじゃすぐに腐ってしまうため、その強さやデカい図体の割りに持ち帰れる部分が極端に少ない。

全てを利用することができたフィンブルドラゴンと違い、マグマデルヘッジはコスパの悪い魔物だな。

解体しながらそんなことを考えつつ、切り出した身をその場で食べることに決めた。

「エイルも食べるか? この場で食わないと腐るから食べれる分は食べてしまおう」

「暑くて食欲がねぇんだが……マグマデルヘッジは食ってみてぇな!! 少しだけ貰っていいか?」

食欲がないと言いながらも、俺以上の量を奪うように持っていった。

エイル比で食欲がないということなのだろうが、言動と行動が一致しておらず苦笑いしてしまう。

「狩ったばかりだし生で食えるだろ。駄目そうだったらそこらへんの石を使って焼こう」

「塩でもつけて食うか! 見た目は気持ち悪いけど、こうして切っちまえば案外うまそうだな!」

綺麗な赤身で本当に美味そう。

生で食うのは若干抵抗あるが、赤身を一番美味しく食べられるのは生。

エイルが所持していた塩を軽くふりかけてから、口の中へと放り込む。

脂が一番乗っている部分のみを取ったということもあるが……めちゃくちゃ美味い。

昨日食べたライドンコンドルの肉も相当美味かったが、俺的にはマグマデルヘッジの方が美味しいと感じた。

「うんめぇ!! 溶岩の中を泳いでるからこんなに美味いのか!?」

「分からないが本当に美味しいな。持ち帰ることができないし、正にここだけでしか味わえない食べ物だ」

「そう言われると更に美味く感じる! 食欲なんて一切なかったが、これならいっぱい食べられるぜ!」

「なら早いところ食べてしまおう。こうしている内にどんどん鮮度が落ちているからな」

そこからは二人共無言でマグマデルヘッジの刺身を食べた。

エイルに至っては、汗だくで倒そうになりながらも刺身を口いっぱいに入れていたくらいだ。

別に戦う必要のない魔物だったかもしれないが、この刺身の味も含めて俺の中で良い思い出となった。