軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第178話 マグマデルヘッジ

音が聞こえた方向に進んで行くと、かなり開けた場所に出てきた。

そこは足場の半分以上が溶岩となっていて、その溶岩の中を大きな何かが泳いでいるのが目に入る。

「うっわ! とんでもねぇのが泳いでるぞ! あれがマグマデルヘッジか!」

「本当に溶岩の中を泳いでいるな。超高温の溶岩を平気で泳げるって、どんな体の構造をしているのか気になる」

「んなこたぁ、倒して調べればすぐに分かることだ!! いっちょ倒してやろうぜ!」

肩をブンブンと回して気合いを入れているが、俺は正直どう戦えばいいのか分かっていない。

足場も不安定なことから、接近戦はほぼ不可能。

溶岩の中に引き込まれた時点で、下手すれば死んでしまう可能性すらある。

魔法で遠距離から攻撃を行うにしても、倒し切るまで魔力が持つ可能性は限りなく低い。

「倒すって言ってもどう戦う気だ? マグマデルヘッジの方から攻撃を仕掛けてこない限り、俺達に攻撃のしようがないだろ」

「武器ならそこら辺にある石を使えばいいだろ!! ちょっと出ている背びれを狙って石をぶん投げるんだよ!」

アホなことを言いだしたと思ったのだが、エイルは俺が止める前に近くにあったこぶし大の石を拾ってぶん投げた。

一直線に飛んで行った石は、泳いでいるマグマデルヘッジの背びれに直撃。

体の大半が溶岩の中に隠れているため詳しい反応は見えないが、大きくよろめいたようにも見える。

まさかこの距離から当てられるとは思っていなかったし、威力もしっかりとダメージが入るぐらいの強さだったのも驚きだ。

「小っちゃい頃は山で石を当てて鳥を捕まえてたからな! 投擲の命中力には自信があんだ!」

「絶対に当てることができないと思っていた。本気で投げて命中させられるなら、遠距離からの攻撃でいけるかもしれない」

「まずは背びれをボロボロにしてやる! 潜られた無理だが、そんな深くはねぇだろうしな!」

「よろしく頼む。飛び出てきたら俺が対応する。足とか生えてるのか?」

「知らねェ! まぁ出てきたら分かんだろ!!」

本当に行き当たりばったりだな。

相談も意味をなさないため、ここからは一人で考えて対応するとしよう。

そんなことを考えている内に、エイルは近くにあった石を拾ってはマグマデルヘッジにぶん投げていった。

投擲された石は五割くらいの高確率で泳いでいるマグマデルヘッジに直撃し、あっという間に上部が削れていく。

エイルが言っていたように深さはないようで、溶岩の中に潜って逃げるということはせず、マグマデルヘッジは俺達の下へと突っ込んできた。

スピードは速いとは言えないが、巨体なだけに溶岩を泳いでこちらに向かってくるのは迫力がある。

溶岩の中から飛び出てきたら斬りかかる準備をしていたのだが、マグマデルヘッジは近くまで来ると体を振って溶岩を飛ばしてきた。

飛んでくる溶岩はドロッとしていて一塊なため、避けるのはそう難しくはないが……近づけないというのは非常に厄介。

「エイル、煙玉を使う。投擲は控えてくれ」

「えっ!? せっかく楽しくなってきたところなのによ!!」

「煙が晴れた瞬間に投擲を開始してほしい」

「わーったよ! ジェイドに合わせてやる!」

エイルに指示を出してから、俺は『シャ・ノワール』製の煙玉をぶん投げた。

マグマデルヘッジの付近は一瞬にして煙で包まれ、俺達の位置を確認できないはず。

その隙に大きく迂回しながら反対側へと回り込み、エイルと挟み撃ちするような状況を作り上げた。

後は風魔法で煙を吹き飛ばし、晴れたタイミングを見計らって突っ込んでいったのだが――煙が晴れた場所にマグマデルヘッジの姿はなかった。

気配と音を頼りに位置を図っていたつもりだが、いつの間にかに消えている。

「ジェイド!! 裏だ、裏! しゃがめぇぇぇ!!!」

耳を劈くようなエイルの怒声が聞こえ、飛んできた指示に対して咄嗟に頭を下げる。

頭部スレスレをエイルの投げた石が通過し、俺の背後を取ったマグマデルヘッジにぶち当たった。

その隙に距離を取り、エイルの下まで一度戻る。

「へっへっへ。ジェイドの作戦、全然駄目だったな!」

「悪い。助けられた」

「気にすんな! 魔物との戦闘は俺の方が多くこなしてそうだし、ケツぐらい拭いてやるぜ!」

エイルの石で大ダメージを負いかけたが、正直咄嗟の行動で助けられた。

それにしても……背後を取られた理由が分からない。

煙が晴れる直前までは、確実に俺の正面にいたはず。

理解の及ばない行動を取ってくる魔物はやり辛いと思う反面、未知の強敵への興味も強い。

魚のような魔物だからと舐めていたが、ここからはフィンブルドラゴンと同格の相手として対処することにしよう。