軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第172話 誘い

冒険者ギルドへと直行し、いつもとは違ってギルド長室に向かう。

ここに来る目的のほとんどがマイケルに会うためだったが、今回はエイルに会うのが目的。

今回の件もマイケルに話した方が絶対に良いのだが、何にせよまずはエイルをそそのかす方が先決。

ということで、ギルド長室をノックしてから部屋の中に入った。

「おーいッ! 仕事中なんだから勝手に入るな――って、ジェイド!? なんでジェイドが来たんだ?」

エイルは上質な黒い革のソファに寝そべっており、確実に仕事中ではないことは明らか。

暇を持て余していたのか、部屋の中は筋力トレーニングを行っていたであろう器具が散乱している。

「絶対に仕事なんてしてなかっただろ。……マイケルがうるさいから朝から来たはいいものの、仕事はめんどうくさいから筋トレ。今は疲れたから休憩してるってところ――か?」

「はえっ!? なんで分かるんだよ!? さては、ジェイド! マイケルに頼まれて、俺を観察していたのか!」

「そんなこと頼まれていないし、観察なんてしていない。この部屋を見ればすぐに分かることだ。……って、この話はどうでもいい。今日はエイルに用があって来た」

ソファから飛び起き、詰め寄ってきたエイルを落ち着かせる。

あまりにもな状態だったためツッコミを入れてしまったが、用事の内容を考えれば雑談をしている時間もない。

「俺に用事って何だよ! 例の組織についてはまだ何も見つけられてねぇぞ?」

「その話じゃない。メタルトータスについてだ。明後日まで時間があるから、今日中にベニカル鉱山に行きたいんだが、エイルは行けたりするのか?」

俺がそう尋ねると、先ほどまでのしかめっ面は一瞬して消え去り、満面の笑みで再び詰め寄ってきた。

両肩を押さえて物理的に近寄れないようにしつつ、返事の言葉を待つ。

「マッジかよ! ――行ける! 余裕で行けるぜ! 今すぐに行こう!」

「本当に行けるのか? マイケルとかに説明とかは?」

「いらん! マイケルはうっさいし、帰ってから説明すれば問題ねぇ!!」

「仕事も何かあったんだろ? 今日はサボってたようだしな」

「ない! あったとしても、メタルトータス狩りの方が大事な仕事だ!」

想像以上の食いつきで、俺に詰め寄るのを止めたエイルはもう準備を始めている。

この食いつきようと行動の早さは俺としては助かるが、マイケルには若干申し訳ないな。

「それじゃベニカル鉱山に行けるってことか?」

「当たり前だろ! もうすぐ準備できるからすぐに行こうぜ!」

「俺としてはありがたい限りだが、マイケルに書置きくらいは残しておいた方がいい。俺も準備をしてくるから、三十分後に門の前に集合で大丈夫か?」

「分かった分かった! 三十分後に門の前な! 遅れるなよ!」

もう俺の方は一切見ておらず、物で散乱しているギルド長室の中を漁って荷物をまとめながらそう返事をしてきたエイル。

理性より本能で動いている感じが凄く、色々と心配になるが……まぁマイケルがなんとかしてくれるだろう。

エイルについては深く考えることを止め、俺もすぐに宿屋に戻って準備を行おう。

先ほど訪ねてきたばかりだが一心不乱に準備をしているエイルと一時別れ、俺は冒険者ギルドを後にした。

宿屋へと戻ってきた俺は、すぐに荷物をまとめて準備を終わらせる。

俺自身も急に決めたことだったため、用意は不十分と言わざるを得ないがなんとかなるだろう。

しっかりと施錠をしてから、すぐに待ち合わせ場所であるヨークウィッチの門に向かった。

十五分程度で準備を終わらせたため、三十分という予定時間よりも大分早めについたのだが、門の前にはすでにエイルの姿があった。

レスリー作のバカデカいリュックと同じくらいのリュックを背負い、ソワソワとしながら待っている。

行動全てが怪しいからか、門付近は人で溢れているのにエイルの周りだけは綺麗に避けられているな。

避けられているエイルと合流するのは少し恥ずかしいが、俺が誘った訳だし気にせず声を掛けるとしよう。

「随分と早かったな。俺もかなり早く準備したつもりだったんだが」

「ジェイドがおせーんだよ! 結構待ったんだぞ!」

「結構待ったって意味が分からん。エイル、さては書置きしてきてないだろ」

「し、したよ? したした! ほら、もう出発するぞ!」

俺の背後に回り込み、エイルに背中を押されながらヨークウィッチの外へ出る。

行動や言動から絶対に何も伝えずに出てきているが、もう面倒くさいから考えるのを止めよう。

ぶん投げてもマイケルならなんとかできるし、帰ってきてからエイルがネチネチと言われるだけ。

思考を全てメタルトータスに割くことを決め、俺はエイルと共にベニカル鉱山へ向けて出発したのだった。